建設業界では、さまざまな講習が義務づけられています。安全やスキル向上のために欠かせない一方で、「ただ受けさせるだけで終わっていないか」「実務に結びついているか」と悩む現場の声も少なくありません。
特に中小企業では、教育の負担や人材の定着に課題を感じているケースもあるでしょう。
そんな悩みに対して、DXの学び方を取り入れる企業も増えています。
今回は、建設業で必要とされる講習と修了証が交付される資格を一覧で整理しながら、講習の効果をより高めるためのポイントについても詳しく解説します。
建設業の講習とは

建設業の講習とは、現場での安全を守るためや、必要な技術をきちんと身につけてもらうために実施される教育や研修のことを指します。
法律で定められた内容も多く、重機の操作に関する「技能講習」や、現場をまとめる立場に必要な「安全衛生教育」など、仕事の内容に応じた講習の受講が求められます。
企業としては義務を果たす意味もありますが、それ以上に安心して働ける職場づくりに欠かせない取り組みの一つといえます。
建設業における講習の種類
建設業の講習には先述した以外にもいくつかの種類があり、どの講習を受けるべきかは、担当する作業内容やリスクの度合いによって異なります。
ここでは代表的な講習と、それぞれの修了後に修了証などわかりやすく整理します。
| 講習の種類 | 修了で得られる修了証など | 法的義務 | 対象の人 |
| 技能講習 |
|
必須 | 重機操作やクレーン作業に 携わる作業員 |
| 特別教育 |
|
必須 | 高所作業や軽微な危険を 伴う作業者 |
| 安全衛生教育 |
|
努力義務 | 現場のリーダー・指導者 |
| 専門性の高い講習 |
|
講習により 異なる |
管理職・特殊業務従事者 |
講習や資格には、再受講のルールがあるものもあります。一度受けたら終わりではなく、その後のフォローも考えておくと、現場での安全と信頼につながります。
技能講習
技能講習は、重機やクレーンなど、特に危険を伴う機械の操作や運搬作業に携わる作業員向けの講習です。作業の安全確保と適切な操作が目的で、法律により受講が義務づけられています。
講習は学科と実技の両方を含み、修了後には各種の「技能講習修了証」が交付されます。
フォークリフト運転技能講習
最大荷重1トン以上のフォークリフトを操作するには、フォークリフト運転技能講習の修了が必須です。講習は4日間ほどで、運転経験の有無により受講時間が異なります。
実技試験もあるため、未経験者にはややハードルが高いものの、需要が高く就職にも有利とされています。
玉掛け技能講習
玉掛け技能講習は、クレーン等の吊り荷にワイヤーなどをかける「玉掛け作業」を行うための講習です。3日間ほどの講習で修了可能で、現場では非常に重宝されるスキルの一つ。
講習では荷の重心やワイヤー選定などの実務で直結する知識が学べます。
小型移動式クレーン運転技能講習
小型移動式クレーン運転技能講習は、吊り上げ荷重5トン未満の小型移動式クレーンを操作するための講習です。講習は3〜4日間で、学科と実技の両方が求められます。
建設現場だけでなく、物流や工場系の業務でも修了者が重宝される資格です。
特別教育
特別教育は、比較的軽微なリスクのある作業に従事する労働者に対し、法律で事業者に実施が義務づけられている教育です。
社内での実施も可能で、作業ごとのリスクに応じた安全知識の習得を目的としています。
高所作業車運転特別教育(作業床10メートル未満)
作業床の高さが10メートル未満の高所作業車を使用する場合は、高所作業車運転特別教育の修了が必要です。講習内容は比較的平易で、学科6時間・実技3時間程度。安全対策や基本操作について学びます。
未経験者でも理解しやすい内容となっており、講習後には教育記録の保存が求められます。
高所作業車運転技能講習(作業床10メートル以上)
作業床が10メートル以上となる高所作業車を操作するには、高所作業車運転技能講習の修了が義務づけられています。講習は学科11時間、実技6時間ほどで、3日程度での修了が一般的です。
操作経験の有無によって難易度に差がありますが、建設現場やビル管理業務など、幅広い現場で求められる資格といえます。
フルハーネス型安全帯使用作業特別教育
フルハーネス型安全帯使用作業特別教育は、2019年から義務化された教育で、高所作業時に使用するフルハーネス型安全帯の正しい装着方法や使用条件などを学びます。
作業員の墜落事故防止のため、現場では必須の知識となり、講習時間は学科・実技を含めて6時間以上が標準です。
安全衛生教育
安全衛生教育は、職長や作業リーダー、安全責任者など、現場のマネジメント層に向けた教育です。現場の安全意識を高めるため、指導力・危険予知力・コミュニケーション力を育てる内容が中心です。
法律上は努力義務とされていますが、多くの企業が積極的に実施しています。
職長・安全衛生責任者教育
職長・安全衛生責任者教育は現場の責任者が対象で、チームをまとめる力や、安全衛生上のリスク判断を担えるスキルを学びます。
2日間の講習で修了証が交付され、他の講習に比べて座学中心ですが、ケーススタディも多く、実務との関連性は高めです。
職長・安全衛生責任者能力向上教育(再教育)
職長・安全衛生責任者能力向上教育は、職長経験5年以上の方向けに、安全意識の再確認や、新たな労働災害の傾向に対応するための教育です。講習は、学科とグループ演習を合わせた5時間ほどの構成で、既に講習を受けたことのある実務者にとっては比較的取り組みやすい内容です。
リスクが多様化する現場において、知識や対応力のアップデートとして活用されています。
専門性の高い講習
建設業の中でも、特定の業務や責任ある立場に求められる講習です。どれも業務内容に応じて受講が必要で、実施団体や頻度も異なるため、自社の業務内容に合わせて確認しておくことが重要です。
監理技術者講習
元請業者として複数の下請けを管理する立場にある技術者が対象。建設業法に基づいて5年に一度の受講が義務づけられており、現場マネジメントや発注者対応など、高度な管理力が求められます。
なお、以前は講習修了証が発行されていましたが、現在は制度が変更され、「監理技術者資格者証」の裏面に受講済みを示すシールを貼付する形式に統一されています。
受講には一定の実務経験と保有資格が前提となるため、事前の確認が必要です。
解体工事施工技士講習
解体工事施工技士講習は、建築物の解体工事を行うにあたり、専任技術者や主任技術者として必要となる講習です。アスベスト対策など、解体特有のリスクへの理解が重視されます。
国家資格ではありませんが、登録講習修了が実務要件になるケースが多く見られます。
雇用管理責任者講習
人手不足が深刻な建設業では、雇用や労務管理の専門知識を持つ人材の存在が欠かせません。雇用管理責任者講習では、採用から定着、教育、人事制度までを包括的に学びます。
厚生労働省や業界団体が主催し、主に人事・管理部門が対象です。
建設業講習のデメリット
建設業の講習は法令に基づいた大切な制度ですが、現場からは「本当に役立っているのか」と疑問の声も聞かれます。ここでは、そのデメリットをご紹介します。
- 講習だけでは現場が育ちにくい
- 教育コストや日程調整などの負担がある
- 義務だから受けるだけになっている
講習だけでは現場が育ちにくい
講習を修了しても、テキスト中心の座学や一方通行の説明では、危険予知や判断力のような現場力を身につけにくいというのが実情です。また、現場ごとに求められる対応が異なるため、画一的な内容では対応しきれないと感じる方も少なくありません。
建設業講習はベースとして重要ですが、それだけでは実務に活かしきれないという課題が浮き彫りになっています。
教育コストや日程調整などの負担がある
中小の建設業者にとって、講習を社員に受けさせること自体がひと苦労です。人手が足りない中での業務調整、移動や宿泊費を含む教育コスト、受講後すぐに辞められてしまうといった定着率の不安もあります。
制度上必要とわかっていても、経営的には重荷になりがちです。こうした現実が、本当はやりたいけれど、なかなか進まない教育の停滞を生んでいるのです。
義務だから受けるだけになっている
現場の教育が、講習が義務だからとりあえず受けさせるだけになってしまうと、受講者の学びに対する意欲は上がりません。実際に、「何のために受けるのかよく分からなかった」と話す受講者もいるでしょう。
内容の理解や現場での実践につなげるためには、どう役立つのかを具体的に伝えることが欠かせません。建設業講習の効果を引き出すには、受け身の姿勢から主体的な学びへと変えていく工夫が求められます。
建設業の講習を効果的なものにする3つのポイント

建設業の講習を受けさせるだけでは、これからの現場に対応できる人材は育ちません。ここでは、建設業の講習を効果的なものにする3つのポイントを見ていきましょう。
- 安全確保だけでなく生産性向上も目標にする
- 講習を受けっぱなしで終わらせない
- 教育に対する意識を変える
①安全確保だけでなく生産性向上も目標にする
これまで建設業では、安全確保が教育の中心でした。しかし近年は、納期短縮やコスト削減などの効率も強く求められるようになっています。その中で、ただルールを守るだけでなく、段取り力やチームでの動き方など、総合的な現場対応力が重視される傾向にあります。
講習の内容だけでは補いきれない、柔軟な発想や実践的な判断力が必要とされているのです。
②講習を受けっぱなしで終わらせない
「若手が定着しない」「仕事を覚えない」と悩む企業も多いですが、背景には教育方法のズレがあるかもしれません。ベテランの感覚で一方的に教えるだけでは、若手が納得して動くのは難しい時代です。
講習も受けっぱなしで終わるのではなく、日常業務で繰り返し実践できるような仕組みづくりが求められます。個人の理解度や性格に合わせた柔軟な指導が、定着と育成のカギとなります。
③教育に対する意識を変える
教育を時間を取られるものと考えるのではなく、「働き方そのものを変える機会」と捉える視点が重要です。効率的に学べる仕組みを取り入れたり、教育と現場を切り離さずに連動させたりすることで、生産性を高めつつ育成もできる環境が生まれます。
建設業の講習に+αの工夫を加えることで、企業全体の働き方改革にもつながっていくのです。
この3つの視点を取り入れることで、講習の効果は大きく変わってきます。「では実際に、何から始めればいいのか?」という方に向けて、
建設業の講習に加えて取り入れたいDX推進の教育
人手不足や世代交代が進む中で、現場の属人的なノウハウだけでは対応が難しくなっています。特に中小規模の建設会社では、限られた人数で業務を回す必要があり、効率化と安全性を両立させる仕組みが必要です。
そのため、従来の建設業における講習だけでは補いきれない課題を解決する手段として、図面のデジタル化や作業日報の自動記録というDX推進の教育が注目されています。
建設業・製造業向けDX無料オンラインセミナー
建設業・製造業向けDX無料オンラインセミナーは、現場で直面しやすい課題をベースに設計されているのが特徴です。「うちの現場でも使えるかも」と思える内容が多く含まれており、すぐに実践に活かせるのも魅力の一つです。
オンライン開催のため、時間や場所の制約がなく、自社の業務に合わせて受講スケジュールを柔軟に組めるので、忙しい現場でも取り入れやすいのが利点です。
「DXって難しそう」「ITに詳しくないから不安」と感じている方でも身近な業務を題材にした説明が中心のため、はじめの一歩を踏み出したい企業にとって、試しやすいスタート地点として適しています。以下のような課題や状況に心当たりがある方には、特におすすめです。
- 新人教育の方向性に迷っている
- 属人化した教え方を改善したい
- 部下とのコミュニケーションに課題がある
- 教え方に自信がない
- 建設業の講習後の定着に課題がある
- 教育コストや時間を見直したい
- まずは気軽にDXを学び始めたい
製造業DXで得られるメリットについては、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
建設業DXの補助金制度

「DXは大企業だけのもの」と感じている方も多いかもしれませんが、実際には中小企業でも取り組みやすいように、国や自治体が積極的な支援策を展開しています。
特に建設業界においては、生産性向上や安全性確保の観点からもDXが推奨されており、活用できる制度も整いつつあります。
例えば、IT導入補助金やものづくり補助金では、業務改善につながるツールや教育プログラムの導入にかかる費用の一部が補助対象となっています。これらの制度を活用すれば、コスト面の不安を和らげながら、無理なくDXの第一歩を踏み出すことが可能です。
IT導入補助金やものづくり補助金については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
建設業の講習だけで終わらせないことが重要
建設業における講習は、現場の安全と品質を守るために欠かせない制度です。しかし、講習だけで人材が育つ時代ではなくなりつつあります。属人的な教育に限界を感じていたり、人手不足で十分な指導ができていなかったりする現場も多いのではないでしょうか。
そんな課題に対し、今注目されているのが、場所や時間にとらわれずに学べるDX推進のための教育です。オンラインで受講できるセミナーは、現場の負担を減らしながら、実務に活かせる知識を効率的に学べる新しいスタイルとして、多くの企業に取り入れられ始めています。
まずは講習+αの選択肢として、こうしたセミナーをのぞいてみるところから始めてみませんか?きっと、これからの人材育成のヒントが見つかるはずです。