同一製品を生産、設計する現場において、毎回の反復作業やパラメーター調整に時間や労力を費やしているケースも多いのではないでしょうか。
そこでおすすめなのがAutodesk社が開発した高精度なCADソフトである、Autodesk Inventorに搭載されている自動設計ツールであるiLogicです。
このツールはカスタム製品の自動設計や設計ミスを防止できるチェック機能など、自動設計に関する便利な機能を多数搭載しています。
本記事では便利な設計自動ツールであるInventorのiLogicを詳しく解説し、使い方の手順やできること、導入による成功事例も紹介するので自社設計業務の自動化の参考にしてください。
InventorのiLogicとは

InventorのiLogicとは、Autodesk社が開発した高精度なCADソフトである、Autodesk Inventorに搭載されている自動設計ツールです。
Visual Basic (VB.NET)の構文に基づいた設定を行い、その設定に従ってモデルの寸法やフィーチャの表示や非表示、製品の部品構成などを自動的に設計します。
このような機能により、複雑な設計が必要な同一製品の自動設計やパラメーター調整の自動化が可能になり、設計業務における生産性向上やヒューマンエラー削減も可能にした画期的なツールです。
InventorのiLogicの使い方の手順
InventorのiLogicでは、以下のような手順で自動設計を進めます。
- プログラムコード作成
- パラメーター制御
- 変数と型の宣言
- イベントトリガー設定
- メッセージボックスの利用
- 外部ファイルとの連携
- カスタムフォーム作成
InventorのiLogicの正しい使い方の手順を把握し、生産性向上を目指しましょう。
①プログラムコード作成
設計業務でInventorのiLogicを利用する際には、最初にプログラムコードを作成します。
プログラムコードの作成は、Inventorのリボン内の管理タブのiLogicパネルの中から「ルールを追加」を選択し、iLogicを使用するためのルールを作成しなければいけません。
具体的な作成方法は、開いているエディタでVisual Basic (VB.NET)の構文を基準にして設計業務で実行したい処理を入力し、設計業務における自動設定に進みます。
参考文献:Inventor 2025 ヘルプ | iLogic の高度な技法のリファレンス
②パラメーター制御
引用:Autodesk公式
プログラムコード作成が完了すれば、次に設計モデルの寸法パラメーターや独自に作成したユーザーパラメーターを制御するための、パラメーター制御に着手します。
具体的には「D0 = 100」「幅 = 長さ * 0.5」のような細かな指標設定や、自動設計に必要な計算式などを入力する工程です。
このような細かなパラメーター制御により、設計業務における必要条件や自動での細かな寸法設定が可能になり、設計業務における労力を軽減できます。
③変数と型の宣言
パラメーター制御の完了後に、ルール内における一時的なデータ保存や計算データなどを保存するための変数と型の宣言をします。
具体的な操作として、iLogic内でパラメーター制御と同様の「Length = 50」のような変数を宣言し、設計におけるルール設定をするのが一般的です。
加えて「Dim Length As Double = 50」のようにDimキーワードを活用し、Double(数値)やString(文字列)といったデータ型を明示すれば、設計自動化における細かなルールを設定できます。
④イベントトリガー設定
変数と型を宣言した後に、iLogic内で作成したルールを指定したタイミングで自動的に発動させるための、イベントトリガーを設定します。
イベントトリガー設定では、iLogicブラウザのイベントトリガータブに移動して、ルールを反映させたいイベントとの関連付けの設定に進むのが一般的です。
このような設定により、ファイルを保存した場合やドキュメントを開いた時など、多岐にわたるイベントに適応してルールが適用され、設計者の主導によるルール設定の手間と労力を省けます。
⑤メッセージボックスの利用
イベントトリガーの設定が完了すれば、次にルールの実行時におけるユーザーへの情報提供や確認に不可欠なメッセージボックスを設定、利用します。
iLogicではVisual Basicの構文に沿って、MessageBox.Show(表示したいメッセージ, タイトル)というコードでダイアログボックスを表示することが可能です。
この設定により、設計におけるルール設定の制約条件から外れた場合や業務完了時の通知、ユーザーへの作業工程の選択を促す通知が可能になり、スムーズな設計業務を可能にするためのエラーチェックなども簡素化できます。
⑥外部ファイルとの連携
メッセージボックスの設定、利用の完了後に、データ運用を効率化するための外部ファイルとの連携を進めます。
iLogicのルールはExcelのスプレッドシートとの連携が可能で、この連携によりExcel内のセルやテーブルのデータ内に、ルール内の専用の関数を保管することも可能です。
反対にInventorのiLogicのパラメーター値をExcel内に記入するなど、バラエティーに富んだ操作ができます。
⑦カスタムフォーム作成
Excelスプレッドシートなどの外部ファイルとの連携が完了すれば、次にiLogicのルールで制御するパラメーターやオプションを使いやすいインターフェースにまとめるカスタムフォームを作成します。
カスタムフォーム作成は、iLogicブラウザから「iLogicフォームを作成」を選択してドラッグ&ドロップ操作でスライダーやテキストボックス、チェックボックスなどのコントロールを配置する工程です。
この工程で設定された制御機能を、iLogicの既存のルールで制御しているパラメーターやプロパティと連携させることにより、設計者は難解なルールコードを把握しなくても製品の細かな寸法や構成を簡単に変更できます。
InventorのiLogicでできること
InventorのiLogicは設計作業の自動化を実現できる便利なツールですが、具体的には下記のような事項に取り組めます。
- パラメーターの自動制御と連動
- フィーチャの抑制と非抑制
- 部品構成の自動変更
- カスタムユーザーインターフェースの作成
InventorのiLogicでできることを把握し、自社の設計業務の効率化に役立てましょう。
パラメーターの自動制御と連動
InventorのiLogicの導入により、設計業務におけるパラメーターの自動制御や連動も可能になります。
iLogicのルール内に設計における細かな条件や緻密な計算式を設定することにより、設計する製品の幅や長さなどの寸法パラメーターやユーザーが独自で設定するユーザーパラメーターの設定、自動制御が可能です。
例えばiLogicのルール内に、「製品の横幅は長さの半分に設定する」という設定を組み込むことにより、製品の長さを設定するだけで自動的に横幅も設定されます。
フィーチャの抑制と非抑制
フィーチャの抑制や非抑制も、InventorのiLogicの導入で利用できる機能の1つです。
ルール内で指定の条件文を設定し、その条件が満たされた場合に穴開けや面取り、製品の押し出しなどの作業(フィーチャ)を抑制したり、作動しないように非抑制にもできます。
例えば「加工品の厚みが15㎜以下であれば穴を開けない」などの細かな設定により、InventorのiLogicのファイル内の設計バリエーションを増やすことも可能です。
部品構成の自動変更
設計業務にInventorのiLogicを導入することにより、アセンブリ環境下におけるiLogicを活用した部品構成の自動変更や、部品の挿入や削除なども可能になります。
例えば生産中に製品の耐荷重の仕様変更が生じれば、iLogicのルールにより耐荷重力の低い小さめのボルトから、耐荷重に強い太いボルトへの自動変更なども可能です。
このような機能により、生産時の多様な条件変更に対しても自動的な対応が可能になり、設計ミスも生じないスムーズな自動設計を実現できます。
カスタムユーザーインターフェースの作成
InventorのiLogicの導入により、iLogicの機能を有効活用したiLogicフォームと呼ばれる独自のカスタムユーザーインターフェースを作成できます。
カスタムインターフェースは、iLogicブラウザからフォーム作成ツールを起動し、スライダーやテキストボックスなどのコントロールを配置して、それらの設定をルールで制御しているパラメーターやプロパティに連携します。
このような工程により、設計者は複雑なパラメーター表やルールコードの層が不要になり、操作性の高いカスタムフォームを利用した作業が可能です。
InventorのiLogic導入による成功事例
ここでは、InventorのiLogicを導入して成功した企業の事例を紹介していきます。
川崎重工業株式会社
引用:Autodesk社ユーザー事例集
川崎重工業株式会社はInventorのiLogicを導入し、パラメトリック設計により延伸圧縮機の3D設計の効率化に成功した事例です。
InventorのiLogicの導入により遠心圧縮機の自動設計が可能になり、製品本体の設計工数を従来の3~4割程度削減しました。
さらに製造部門と連携した設計ルールの設定、標準化によりヒューマンエラーや後戻り作業の削減にも成功した事例です。
このような設計工程の構築により、3Dデータの設計から製造までを有効活用する「一気通貫」の工程プロセスを実現しました。
参考文献:Autodesk社ユーザー事例集
株式会社エコム
株式会社エコムの事例では、InventorのiLogicやマクロを活用したモジュール単位での自動設計を可能にし、設計をかなり効率化できるようにしたとのことです。
大きなメリットとしては自社オリジナルのマクロを利用したことで、パラメーターの制御を可能にしたり社内の人間が設計を簡単に管理できるようになったと記述されています。
iLogicを利用することで、比較的簡単に設計や管理をDX化できた成功事例と言えるでしょう。
参考文献:Autodesk社ユーザー事例集
InventorのiLogicを導入して生産性を高めよう
製品の大量同時生産などに従事する製造現場においては、設計業務の簡素化や自動化により従業員の労力や経費削減を実現できます。
今後自社の設計業務の自動化を検討し、業務効率化を図りたいと考案中の方は、本記事を参考にしてInventorのiLogicの機能を把握し、導入による業務簡素化や省人化で生産性を高めてください。
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