AutoCADスクリプトを身につけると、繰り返し作業を自動化し作業時間を大幅に短縮できるようになります。
複雑な図形もあっという間に作成できるといった中級者・上級者はこのスクリプトを上手に使っているんです。
単調作業から解放され、集中力を維持する余裕がうまれるため創造力やアイデアにエネルギーを注げるようにもなります!
今回の記事では、AutoCADスクリプトで使うコマンドの基礎知識から、具体的なサンプルコマンドまでを網羅しています。
それでは、コマンドを理解しAutoCADスクリプトを使って、図面作成を劇的に効率化しましょう!
AutoCADスクリプトのコマンドとは
AutoCADスクリプトは、AutoCADのコマンドラインに入力する内容をあらかじめテキストファイルに記述し、それを実行することで、繰り返し作業を自動化したり、複雑な作図を効率化したりするものです。
例えると、マクロのような存在で定型処理を記述しておく指示書のようなイメージです。
一度設定しておけば、あとはボタン一つで実行でき、手間のかかる作業を一気に終わらせられます。
そして、この指示書であるスクリプト(テキストファイル)にAutoCADが理解できて実行可能な命令文、記述方式のことをコマンドと理解するとイメージしやすいでしょう。
このコマンドを使ったスクリプトで、具体的には以下のようなことができます。
- 同じ図形を繰り返し描く場合、元になる図形をコマンドで一度スクリプトに記述しておけばワンクリックで実行できます。
- 複雑な形状の図形を描く場合など、サンプルになるスクリプトをもとにコマンドを調整しつつ素早く完成に近づけられる。
- 寸法線や注釈を自動的に作成する場合もコマンドで一瞬で実行できます。
- 図面を特定のスケールに拡大縮小するときもコマンドで正確に実行できる。
- 図面をPDFファイルに書き出すコマンドや複数の図面を結合するといった業務でよく使う編集作業もコマンドで一度記述しておけば即実行できるので便利です。
このように、AutoCADスクリプトは、AutoCADの可能性を大きく広げてくれるツールであり、コマンドを理解するだけで自由に使いこなせるようになります。
AutoCADスクリプトのコマンドの書き方について
AutoCADスクリプトは、テキストエディタを使って記述します。
基本的には、AutoCADのコマンドラインに入力するのと同じように、コマンド名とオプションを記述するだけです。
※全部暗記しなくてもAutoCADのコマンドウィンドウからもチェックが可能です。
例えば円を描くスクリプトの場合、コマンドは次のようになります。
“CIRCLE” 10 10 5
このスクリプトは、中心座標が(10, 10)、半径が5の円を描きます。
このように、コマンドを指定したスクリプトをメモ帳で作成し、拡張子[scr]で保存しておくとAutoCAD上でいつでもこのスクリプトを実行するだけで円が描けます。
次の章ではサンプルコマンドを一覧で紹介していきましょう。
コマンドのスペルを覚えるよりも意味と使い方をイメージでとらえるように見ていくと必要なときに思い出しやすくなりますよ。
AutoCADスクリプトの種類
なお、AutoCADで使用できるスクリプト言語は2種類あります。
言語 | 特徴 |
AutoLISP |
|
VBA |
|
AutoLISP
1つ目は、AutoLISPです。
AutoCAD用に拡張されたLISPと呼ばれるプログラミング言語です。
AutoCADで最も古くから使用されているスクリプト言語であり、多くのユーザーに親しまれています。
ちなみに、AutoCAD LTでは使用できません。
VBA
もう一つはVisual Basic for Applications 、VBAと呼ばれるプログラミング言語です。
Microsoftが開発した汎用プログラミング言語ですが、AutoCAD以外にも、Microsoft Officeなどの様々なアプリケーションで使用できます。
AutoCAD LTでも使用できます。
よく使うAutoCADスクリプトのサンプルコマンド一覧!
いよいよ実践的な解説に入っていきましょう。
ここでは、最初に覚えておくと便利で汎用的なサンプルコマンドをいくつか一覧でご紹介します。
今回は汎用性が高いAutoLISPのスクリプトで使用するコマンドを一覧にしてみました。
図形描画
図形を描くコマンドです。
①CIRCLE
円を描くコマンドです。
(command “CIRCLE” <中心座標X> <中心座標Y> <半径>)
サンプル例
(command “CIRCLE” 10 10 5)
中心座標が(10, 10)、半径が5の円を描くコマンドになります。
②LINE
線を描くコマンドです。
(command “LINE” <始点座標X> <始点座標Y> <終点座標X> <終点座標Y>)
サンプル例
(command “LINE” 0 0 10 10)
原点から(10, 10)までの線を描けます。
③ARC
円弧を描くコマンド。
(command “ARC” <中心座標X> <中心座標Y> <半径> <開始角度> <終了角度>)
サンプル例
(command “ARC” 10 10 5 0 45)
中心座標が(10, 10)、半径が5、開始角度が0、終了角度が45度の円弧を描くコマンド例。
④RECTANGLE
矩形を描くコマンド。
(command “RECTANGLE” <左下座標X> <左下座標Y> <幅> <高さ>)
サンプル例
(command “RECTANGLE” 0 0 10 5)
原点から(10, 5)までの矩形を描けます。
⑤POLYGON
多角形を描くコマンドもあります。
(command “POLYGON” <中心座標X> <中心座標Y> <半径> <角の数>)
サンプル例
(command “POLYGON” 10 10 5 5)
中心座標が(10, 10)、半径が5、角の数が5の正五角形を描くコマンドになります。
編集で使うコマンド
次は編集で使うコマンドです。
①ERASE
オブジェクトを消去するコマンド。
(command “ERASE” <選択オブジェクト>)
サンプル例
(command “ERASE” *)
すべてのオブジェクトを消去するコマンドです。
②COPY
オブジェクトをコピーする
(command “COPY” <選択オブジェクト> <コピー先座標X> <コピー先座標Y>)
サンプル例
(command “COPY” * 10 10)
すべてのオブジェクトを(10, 10)にコピーします。
③MOVE
オブジェクトを移動するコマンド。
(command “MOVE” <選択オブジェクト> <移動先座標X> <移動先座標Y>)
サンプル例
(command “MOVE” * 10 10)
すべてのオブジェクトを(10, 10)に移動する編集ができます。
④TRIM
オブジェクトをトリムするコマンド。
(command “TRIM” <選択オブジェクト> <切断オブジェクト>)
サンプル例
(command “TRIM” * *)
すべてのオブジェクトをすべてのオブジェクトでトリムします。
⑤EXTEND
オブジェクトを延長するコマンド。
(command “EXTEND” <選択オブジェクト> <延長先オブジェクト>)
サンプル例
(command “EXTEND” * *)
すべてのオブジェクトをすべてのオブジェクトで延長します。
レイヤーに関するコマンド一覧
次はレイヤーを操作するコマンド一覧です。
①LAYERS
レイヤーの一覧を表示するコマンドです。
(command “LAYERS”)
②LAYER
現在のレイヤーを設定するコマンド。
(command “LAYER” <レイヤー名>)
サンプル例
(command “LAYER” “レイヤー1”)
現在のレイヤーを”レイヤー1″に設定します。
③LAYERCOPY
レイヤーをコピーするコマンド。
(command “LAYERCOPY” <元レイヤー名> <コピー先レイヤー名>)
サンプル例
(command “LAYERCOPY” “レイヤー1” “レイヤー2”)
“レイヤー1″を”レイヤー2″にコピーするコマンドになります。
④LAYERERASE
レイヤーを消去するコマンド。
(command “LAYERERASE” <レイヤー名>)
サンプル例
(command “LAYERERASE” “レイヤー1”)
“レイヤー1″を消去するコマンドになります。
その他にも便利なコマンドはたくさんあります。
英語が得意な方は、まるで英単語を覚えているような感覚になったのではないでしょうか?
AutoCADでスクリプトを作成する場合は、スペルも大事ですが座標や大きさの指定する順番や書式をシビアに打ち込むことに注意するようにしてください。
VBAを使用する場合ではスペースやエンターキーの打ち忘れにも充分注意する必要があります。
プログラミングの基本姿勢が必要になってきます。
しかし最近では、サンプルコマンドやスクリプト共有サイトでも必要なコマンドやスクリプトの完成ファイルをすぐに入手可能ですので、まずは意味や使い方を習得することがAutoCADのスクリプトを使いこなす近道といえるでしょう。
AutoCADスクリプトのサンプル例
では実際にスクリプトのテキストファイルにコマンドを書き込んだサンプル例を見てみましょう。
例えば、
(command “LINE” 0 0 10 0)
(command “LINE” 10 0 10 10)
(command “LINE” 10 10 0 10)
(command “LINE” 0 10 0 0)
とテキストファイルに書き込んで.scrファイルで保存して実行すると正四角形が描けます。
この例はlineコマンドのみを使用しています。
次に、少し複雑な動作を指定してみましょう。
異なるレイヤーにそれぞれ大きさの違う円を描くコマンドです。
(c-circle 0 0 2 “円レイヤー1”)
(c-circle 5 0 3 “円レイヤー2”)
(c-circle 0 5 4 “円レイヤー3”)
このスクリプトを実行するとそれぞれ指定したレイヤーに指定した位置と大きさの円を描きます。
これは極端な例ですが、こういった定型処理を毎回ひとつのスクリプトを実行するだけで正確に描けますので、繰り返し出てくる作業はどんどんスクリプト化していきましょう。
実際のスクリプトの使用では、事前にブロック化したオブジェクトの指定や共有図面の実行などをコマンドで指定して使用します。
こういった複雑そうに見えるスクリプトに書かれるコマンドも基本的なものばかりですので、まずはコマンドの基本的な使い方と、よく使うスクリプトのコマンドの内容を理解することから始めていけば素早くマスターできるでしょう。
AutoCADスクリプトでコマンドをうまく使うコツ
AutoCADスクリプトでコマンドをうまく使うにはいくつかのコツがあります。
特に初心者の場合は次の5つのコツを意識するようにしてください。
コマンドの引数を正しく指定する
コマンドには、様々な引数があります。
座標や大きさを指定する数値のことです。
この引数を正しく指定しないと、コマンドが実行されなかったり、意図した結果が得られなかったりします。
なお、コマンドの引数は、AutoCADヘルプなどで確認できます。
ヘルプには、各引数の意味や使い方などが詳しく説明されていますので慣れるまでは確認しながら入力すると間違いを減らせます。
コマンドの順序を正しくする
AutoCADでは、コマンドを実行する順序が重要です。
例えば、先に線を描いてから、その線に寸法を付ける必要があります。
エラーメッセージを確認する
コマンドを実行したときにエラーメッセージが表示された場合は、そのメッセージをよく読んで原因を特定する必要があります。
エラーメッセージには、問題の詳細や解決方法などが記載されています。
サンプルスクリプトを参考に
Autodeskのウェブサイトや書籍には、AutoCADスクリプトのサンプルがたくさん公開されています。
サンプルスクリプトを参考に、自分のスクリプトを作成できます。
練習あるのみ
何でもそうですが、AutoCADスクリプトを使いこなすにも練習あるのみです。
最初は簡単なスクリプトから始めて、徐々に複雑なスクリプトに挑戦していくと良いでしょう。
この記事をひと通り読んで理解できれば、あとはいくつも実際に試してみることをおすすめします。
これらのコツを意識して練習・実践を繰り返していきましょう。
AutoCADスクリプトのサンプルコマンドについてまとめ
AutoCADスクリプトは、AutoCADの自動化や効率化に非常に役立ちます。
しかし、初心者にとっては、スクリプトに使用されるコマンドを理解するのが難しいと感じる場合があります。
そこで、今回の記事では誰でもコマンドを理解できるように簡単なサンプルを用いて解説してみました!
Autocadのスクリプトも怖くなくなったと感じていただければ幸いです。
Autodesk Developer Networkなどのウェブサイトには、AutoCADスクリプトのサンプルコマンドがたくさん公開されています。
また、いくつかのスクリプト共有サイトではダウンロードしてすく使えるファイルが簡単に入手できます。
基本的なコマンドを理解するだけで多くのスクリプトを自在に使えるようになりますので、ぜひ挑戦していただけたらと思います。