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ZBrushとFusion 360のコンビネーションで、より柔軟な設計が可能に!「デジタル造形部 ~第一回:Fusion 360 × ZBrush~」レポート!

2016年12月22日、東京都千代田区のワテラスコモンホールで、株式会社ボーンデジタル主催のセミナー「デジタル造形部 ~第一回:Fusion 360 × ZBrush~」が開催されました。このセミナーは、ZBrushユーザーやFusion 360ユーザー、CGでものづくりをしたい方を対象としたもので、開演前にはほぼ全ての席が埋まるほどの盛況でした。

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ZBrushなどに関する書籍も定価の10%引きで販売されていた。

Fusion 360とZBrushのいいとこ取りを狙うハイブリッドな手法

このイベントは、全部で3つのセッションから構成されており、最初のセッションのタイトルは「ZBrushとFusion 360ハイブリッド手法」で、GEAR DESIGN代表の大上竹彦氏による講演でした。

大上氏はまず、有機的な造形が得意なZBrushと、きっちりした造形や機構設計が得意なFusion 360と言ったように、ソフトの特性を説明し、それぞれの得意分野を組み合わせることで、ソフト単体では難しかったものづくりが簡単に実現できるようになったと語っていました。

今回、大上氏の作品の中で、最初に紹介されたのが、ジッポのデザインでした。この例では、まず、きっちりした形状が得意なFusion 360で、ジッポのボディをデザインし、それを3Dデータの拡張子であるSTLデータとしてエクスポート、そしてZBrushでそのデータを読み込み、表面に白黒の画像データを用いスカルプトする方法や、あらかじめ用意したドラゴンの3Dデータを、2Dの深度マップに変換し、貼り付ける方法も紹介していました。

最後に紹介したのが、取っ手を回すとそれに連動して手が回転するリスのフィギュアです。こちらは、今までの例とは逆で、ZBrushでモデリングしたリスを、OBJデータとしてエクスポートしてから、Fusion 360で読み込み、歯車機構を内部に作り込んでいくといったものでした。

このように、ソフトそれぞれの得意分野を活かした『ハイブリッド手法』を使うことで、有機的なデザインでも、短時間でモデリングすることができると話していました。

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最初の講演を行った、GEAR DESIGN代表の大上竹彦氏。(大上氏の事務所にて撮影)

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写真は、大上氏が習作としてFusion 360でモデリングしたもの。

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Fusion 360で作成した鎧を元に、ZBrushでディテールを仕上げた例。

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鎧を持ち上げると、中の顔もきちんとモデリングされている。

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3つめの例が、ZBurshでモデリングしたリスをFusion 360で読み込み、歯車の機構を設計して、手で回すと動くようにしたもの。これは、最初のアイデアスケッチ。

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リスをZBrushでモデリングする。

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ZBrushからFusion 360へはOBJデータとして読み込ませる。

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Fusion 360で歯車などの機構を設計しているところ。

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こちらが完成形のCG。取っ手を回すと手が回転する歯車機構が組み込まれている。

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大上氏の作品が展示されていた。どちらもFDM方式の3Dプリンターで出力されたもので、左のリスは取っ手を回すと手が回転する。

Fusion 360で動く金属造形作品を制作

2つめのセッションは、「Fusion 360による金属造形作品の設計」というタイトルで、金属造形作家の坪島悠貴氏による講演が行われました。

坪島氏は、もともと大学で金工を専攻し、卒業後、打ち出しという技法を使った金属造形作品の制作を始めました。2014年に可変する金工作品という新しいコンセプトを思いつき、初の可変金物「羽化」を制作しました。羽化はその名の通り、さなぎが羽化するように可変する金工作品で、根付として制作されたものです。 これまでは、3D CADソフトを使わずに設計、制作していましたが、より複雑な変形機構を備えた可変金物を作るために、関節可動シミュレーションができるFusion 360に出会ったとのことです。

当初はFusion 360をソリッドモデリングでの機構設計だけに使う予定でしたが、使っているうちに、スカルプトモデリングの面白さに惹かれ、今では、ほぼ全ての設計をFusion 360で行っているそうです。

Fusion 360を使って制作された可変金物は、「可変金鶏」「可変卵鳥」「可変手毬海月」「絡繰餌乞雛」の4作品で、可変金鶏は内部機構のみFusion 360を利用して設計されていますが、可変卵鳥以降の作品は、スカルプトモデリングを活用して、外装のデザインもすべてFusion 360で行っています。

Fusion 360を利用することで、これまでには実現が難しかった複雑な変形機構を実現できるようになり、デザインについてもより細かな表現が可能になったとのことです。Fusion 360でモデリングした3Dデータは、いったん光造形方式などの3Dプリンターで樹脂として出力された後、型をとって金属に置き換えて、作品にしているそうです。会場には、坪島氏が制作した根付の実物が3種類展示され、坪島氏が変形する様子の実演を行い、多くの参加者の注目を集めていました。

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2つめの講演を行った、金属造形作家の坪島悠貴氏。

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坪島氏は、打ち出しという技法を用いて金属造形作品を作っていた。

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2014年に制作された根付「羽化」。蛹が羽化するように可変する金工作品で、初の可変作品となる。

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最初は機構設計だけに使っていたが、スカルプトモデリングの面白さに惹かれ、今では作品のほぼ全ての設計をFusion 360で行っているそうだ。

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これがFusion 360を使って最初に制作された「可変金鶏」。外装は打ち出しで作り、内部の機構のみFusion 360で設計し、ロストワックス方式で造形したもの。

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こちらは2014年に制作された「可変卵鳥」。Fusion 360のスカルプトモデリングを本格的に使った最初の作品。これは、卵形をしている状態。

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卵からペンギン型に変形する。

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Fusion 360を使って最初に制作された可変金鶏の内部機構。

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最新作の絡繰餌乞雛の内部機構。複雑なリンク機構が組み込まれている。

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坪島氏がFusion 360を利用して制作した根付の実物。左から、可変卵鳥、可変手毬海月、絡繰餌乞雛である。

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作品は手を触れないようにとのことだったが、休憩時間に坪島氏が可変する様子を実演しており、注目を集めていた。

リピートプロトタイピングの重要性を語った猿渡氏

3つめのセッションは、「Fusion 360 スカルプトモデリングの魅力」というタイトルで、日南の猿渡義市氏による講演が行われました。猿渡氏は、Fusion 360 Meetup vol.08でも講演を行っていましたが、こちらでは、リピートプロトタイピングという新しいデザインワークフローの重要性を語りました。リピートプロトタイピングは、スケッチ、クイックモデリング、3Dプリント、可視化の4つのプロセスを何度も回していく手法で、新しい気づきに出会えるチャンスが増えるとのことです。また、イメージを共有できるので、エンジニアとの設計検討や企画とコンセプトの段階での論議などが可能になり、新たなものづくりの可能性が広がるのではないかとのことでした。

最後に、スマホを置くことで音質や音量が向上するホーンスピーカーなど、猿渡氏がFusion 360を使ってデザインした作例をいくつか紹介していました。

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3つめの講演を行った、日南の猿渡義市氏。

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日南の事業領域。デザインプロセスからプロトタイプ作成、精密加工、金型製作まで製品開発に関わるすべてのプロセスをサポートする。

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現在のデザインワークフロー。先行開発、スケッチ開発、スケールモデル、フルサイズモデルの順に進んでいく。

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リピートプロトタイピングという新しいワークフローの概念。スケッチ、クイックモデリング、3Dプリント、可視化を繰り返すことで、新しい気づきに出会えるチャンスを増大させる。

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猿渡氏が制作したカーモデリングの例。VREDを利用してレンダリングしている。

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リピートプロトタイピングでは、チームでイメージを共有し、エンジニアとの設計検討や企画とコンセプトの論議などが可能になる。

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Alias Speed Formを使ったカーモデリング方法の解説。

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Fusion 360を使ってデザインされたスマホ用ホーンスピーカー。

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Fusion 360を使えばこのようなデザインも簡単にできるとのことだ。

Fusion 360を使ってできることは、これからどんどん増えていき、私たちの生活を楽しく便利なものにしてくれるでしょう。イベントが終了した後も、参加者たちは展示された作品を見ながら、講演に立った方々とFusion 360を使った新しいものづくりについて話したり、アドバイスをもらうなど、終始ワクワクがとまらないイベントとなっていました。

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