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Fusion 360をフル活用して誕生したスマートロック「Akerun Pro」メカニカルデザイナーに開発経緯を聞いてみた

Fusion 360の活用事例を紹介するこちらのコーナー。第3回目は、株式会社フォトシンスを取り上げます。2014年9月に設立されたスタートアップで、2015年3月に工事不要で後付けできるスマートロック「Akerun」を発売、大きな注目を集めました。2016年7月には機能を強化した高性能版の「Akerun Pro」を発売、中小企業やシェアオフィスなどさまざまな場所に導入されています。

社会に求められているモノだとわかり、起業を決意

フォトシンスは、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーによって設立されたスタートアップです。当初から起業を目指していたわけではなく、それぞれの得意分野を持つメンバー6名によってAkerunのプロトタイプを開発していました。そのプロトタイプが新聞に取り上げられたところ予想以上の反響を得たので、「これだけ求められているのなら、会社を設立して、本格的に開発しよう」ということで、会社を設立したとのことです。

今回、話をお聞きした関谷達彦氏は、メカニカルデザイナーとして、デザインや機構設計を行っています。関谷氏は、パナソニックで携帯電話の機構設計に携わっていましたが、フォトシンスの創業メンバーにパナソニック出身の方がいて、その方に誘われて、創業期からAkerunの開発に関わってきました。

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株式会社フォトシンス メカニカルデザイナー 関谷達彦氏

工事不要で簡単に後付けできることが最大の特徴

スマートフォンやICカードなどを利用して鍵の開け閉めが可能なスマートロックは、他社からも発売されていますが、Akerunシリーズの最大の特徴は、工事が不要で簡単に後付けできることです。Akerunシリーズは、ドアの内側にあるサムターンと呼ばれる指で挟んで回せる部分にかぶせる形で設置します。取り付けには、強力両面テープを利用しますので(Akerun Proではネジでも固定できます)、工具なども必要なく、ドアを傷つけることもありません。こうした完全後付け型スマートロックは世界初の製品であり、特許も取得済みとのことです。

また、鍵の権限の譲渡や入退室管理などをインターネット経由で行えることも特徴です。フォトシンスでは、Akerun Proをスマートロックではなく、スマートロックロボットと呼んでいますが、その名前にも同社の想いが込められています。

「ロボットという名称にも想いが込められていまして、『Akerun Pro』は、バージョンアップによって進化します。将来的には、家を出るときに挨拶をしてくれたり、『今日は雨が降りそうだから、傘を持っていったほうがいいよ』と言ってくれたり、そういうコミュニケーションができるようなものを目指しています。」(関谷氏)

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関谷氏が手に持っているのが「Akerun Pro」。サムターンにかぶせて装着する

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Akerun Proの設置する前(左)と後(右)。Akerun Pro設置後のドア。サムターンにかぶせて装着。目の前で取り付けする様子を見ることができ、ものの5分で設置し、スマートフォンとの同期を完了した

入退室管理に対するニーズから、Akerun Proを開発

2015年3月に発売された初代Akerunは主に個人向けとして開発されましたが、実際に出してみると、本格的な入退室管理を行いたいという中小企業からの声が多く届きました。大企業では、ICカードなどを活用した入退室管理システムが導入されているところが多いのですが、こうした入退室管理システムの導入には多額のコストがかかり、中小企業にはハードルが高いものでした。

そこで、Akerun Proは、本格的な入退室管理システムを、後付けかつ低コストで実現することを目指して開発されました。Akerun Proには、カードリーダーが付属していますので、Suicaなどの既存のICカードを鍵として使い、入退室管理を行うことができます。さらに、インターネットとのゲートウェイになる「Akerun Remote」を利用することで、インターネットを介した遠隔操作も実現できます。

「Akerun Remoteを使えば、自宅にいながらオフィスの施錠状態を確認したりとか、今まではスマートフォンで専用アプリを使わないと開け閉めができなかったのが、ブラウザでも開け閉めができるようになります。例えば、アプリが使えないガラケーでも、ブラウザから開け閉めができるようになります。」(関谷氏)

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Akerun Proのスターターキットに含まれる製品(右の2枚のICカードはオプション)。Akerun Proの左側にあるのが、ドアの開閉を検知するセンサーで、右側の2つがカードリーダー

クラウド対応がFusion 360導入の決め手

Akerun Proは、内部機構やボディ形状から付属品まで、すべてFusion 360を利用して設計されています。関谷氏は、日本語版登場以前からFusion 360を愛用していたそうですが、同氏に数ある3D CADからFusion 360を選択した理由を聞いてみました。

「会社として開発体制を整えていこうという段階のときに、私が主導で3D CADの選定を行いましたが、無料、有料含めてさまざまな3D CADを試してみた中で、クラウドベースでデータの管理ができ、さらに機能向上のアップデートも継続的に行われているということで、Fusion 360はこれまでにない、画期的な3D CADだという第一印象を持ちました。また、今後、開発に携わる人数が増えていくことも考えると、1ライセンスあたりの料金も重要になります。そうした部分も含め、総合的にFusion 360がベストだと判断しました。」(関谷氏)

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Akerun Proの内部機構は、すべてFusion 360を利用して設計されている

部品メーカーのやりとりにもFusion 360は便利。レンダリングや解析も活用

関谷氏は、クラウドで他のメンバーとデータのやりとりができることやレンダリング機能、解析機能を備えていることも高く評価しています。

「クラウドベースなので、デザイナーとのやりとり、データの共有もスムーズに行えましたし、ブラウザで3Dモデルのリアルタイムビューを共有する機能も部品メーカーさんとのやりとりなどに活用しました。部品メーカーさんによってはまだ3D CADを導入していないところもありますが、そういう場合でもリアルタイムビューのリンクだけ送って、3Dモデルをグリグリ回しながら、電話で打ち合わせしたりできますので、とても便利でした。これは今までの3D CADにはない機能だと思っています。レンダリングの品質も高いので、広告の画像などにも、Fusion 360でレンダリングした画像をそのまま使っています。さらに、解析機能も強度の検証などにかなり活用しました。他社の3D CADだと、解析機能はオプションで別途費用がかかるみたいな形になりますが、それらが全部入っているというのは大きなメリットですね。」(関谷氏)

Akerun Proは、スマートホーム、スマートオフィスのハブとなる可能性を秘めた製品です。APIの公開も行っていますので、今後は部屋に入ると自動的に明かりが点くとか、そういった他製品との連携にも力を入れていきたいとのことです。

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