CAD、CAMなどの製図を行うソフトウェアは今やものづくりの分野では必要不可欠なものとなっています。
そうして需要が増える一方で、それを扱う人の人手不足などが目立ってきました。
そんな中現れたのがRPAという、作業の自動化を行うことができるシステムです。
今回はCAD、CAMでの業務を自動化してくれるRPAについての基本的な情報から、具体的にどんな製品があるのかまで取り上げていきます。
自動化ツール、RPAとは?
RPAは、Robotic Process Automationの略称で、パソコン上で行う操作を自動化するツールを指します。
今までは人間でないとできないと考えられていた作業もAI、機械学習などの進歩により代行できるようになってきました。
そんなRPAを用いる最大の利点は、作業の効率化を進められるという点です。
長時間をかける必要があった作業を、システムの変更やフローの見直しを必要とせずに効率化することができます。
しかし、RPAは設定されたプロセスを繰り返すことしかできないため、手順が毎回変わるようなことには不適であるともいえます。
このようにRPAには使うことに適した場面と適さない場面が存在しますが、CAD、CAMなどの設計システムを効率化するという面ではとても有用なツールです。
実際にCADなどの設計業務でRPAを使用している例は幾つか見られます。
また、RPAとは少し異なりますが「自動設計」「テンプレート設計」などの様々な種類の手法も積極的に用いられ、手間やコストを軽減して設計を行えるようなシステムがどんどんと広まってきました。
では、設計業務では具体的にどのようにRPAなどが用いられているのでしょうか。
CAD/CAMにおけるRPAの特徴
設計業界において、CADなどの実際に設計を行う業務にRPAを導入することは非常にハードルが高いと言われています。
理由としてはいくつかあり、CADソフトが特殊であること、設計者の判断が必要であること、設計ルールが複雑であることなどが挙げられていますが、それでも実際にRPAが現場で用いられている例は存在します。
具体的にまず一つ例に挙げられるのが、プログラミングを使用してロボットの作成を行うタイプのRPAです。
このタイプでは一般的なRPAと同じく何度も繰り返す定型業務を自動化することができます。
データ入力、出力などの繰り返しの多い作業をRPAに任せれば空いた時間で細かい人間の判断が必要なことに取り組めるため、作業の効率化に非常に有用な手段であると言えます。
また、他の例としては雛形となる3Dモデル、図面にパラメーターを設定して最低限の操作で自動で設計を行えるテンプレート設計というものが挙げられます。
プログラミングを用いるものよりも簡単に活用することができるため、プログラミング経験があまりない方でも取り入れることができるのが特徴です。
これは厳密にはRPAではないと言われていますが、最終的な結果は変わらないため今回はRPAの一部として扱います。
このように、設計業界でもRPAは積極的に運用されています。
では、実際どんな製品が存在しているのか見ていきましょう。
RPA CAD/CAMの製品紹介
Cadropper
Cadropperは、通常のRPAとしての機能に加えてCADツールの自動化を行うことができるソフトです。
これはプログラミングを用いてロボットの作成を行うタイプのRPAで、
- Ruby
- C#
- PHP
- Java
というプログラミング言語に対応しています。
自動製図を行うことができ、AutoCAD、AutoCAD LT、BricsCADでいつも作業を行なっている方は、すぐにでもCadropperを導入することができます。
これ以外のCADには対応していません。
実際にCadropperを導入した事例がいくつかあり、橋脚の自動作図やオフィス家具の自動配置、製造業の図面制作などに用いられた実績があります。
Cadropperの販売元はCAPAで、ITサービスの提供を行なっている会社になります。
価格に関しては問い合わせる必要がありますが、サブスクリプション形式で3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月と使用することができるそうです。
3D CAD自動作図
このシステムは、Excelに寸法を入力するだけで類似のモデルを作成することができるというものです。
システムを導入することでモデリング時間の短縮や図面の標準化による品質確保、また設計をする際の負担を軽減することができます。
このシステムの最大の利点は、CAD操作の知識がない人でもモデリングすることが可能になるという点です。
自動でパラメータチェックなども行うことができるため、CADに詳しくない方でも便利に利用することができるでしょう。
プログラミングを必要としたCadropperと比較してとても簡単にモデリングを行える3D CAD自動作図ですが、その分機能は類似部品のモデリングに留まるため、目的に応じてどちらを用いるべきが検討する必要があります。
そんな3D CAD自動作図は株式会社アイ・シー・エスから販売されており、工数は340時間、費用は154万円程度で導入することができます。
ISIDAO_RPA
このシステムでも上二つと同じようにCADの自動化を行うことができます。
また、さらに加えてこのシステムを販売している株式会社ISID_AOは、CAD/CAM/CAE/PLMなど設計業務に関わる複数のソフトウェアサポートを行なっているため、それぞれの設計業務に適したRPA導入を支援することができるのです。
実績としては自動車関連製造業や、住宅関連製造業に利用されたものがあります。
価格、納期については株式会社ISID_AOに実際に問い合わせる必要があります。
3DエンジニアリングRPA
このシステムはRPAだけでなく、CADテンプレート、Agile AutomationというCAD拡張機能を組み合わせることでさらに作業の効率化を図ります。
RPAは前述の通りですが、CADテンプレートとは保有している設計基準に基づいて形状を標準化し、形状のルールをテンプレートとして構築するものです。
また、CAD拡張機能ではCADをAPIを用いてカスタマイズすることで作業環境をより良くすることができます。
これら三つを組み合わせることで、製品開発のリードタイム短縮を実現するのが3DエンジニアリングRPAです。
このシステムはSOLIZEが販売しており、電話、フォームでの問い合わせを行うことができます。
以上4つを取り上げましたが、これ以外にも様々なRPAシステムが存在しています。
それぞれ強さを発揮する場面や価格などは全く異なってくるため、目的に応じて必要なものを選ぶと良いでしょう。
設計にRPAを導入するメリット
CAD/CAMのRPA導入についての基本的な情報を紹介してきました。
最後に設計業界にRPAを導入するメリットを簡潔に纏めていきます。
RPAを導入することによって得られるメリットには主に以下の5つがあります。
- 人件費の削減
- 業務のスピードアップ
- ヒューマンエラーの削減
- より高付加価値の作業に人員をあてられる
- 素早く、簡単にリソースを追加することができる
RPAを用いればこれだけのメリットを得ることができる上に、RPAの導入はシステムを開発している企業に頼むことで簡単に実行できます。
人員不足や働き方改革などの影響でより作業の効率化を求められている設計業界では、RPAの需要は今後ますます増加していくでしょう。
RPA、自動設計、テンプレート設計などのシステム効率化のための手段をどんどん利用して、より簡単に設計業務が行えるようになる日は近いのかもしれません。
設計業務をRPAで効率化しよう!
このように、RPAを用いることでCAD/CAMを用いた設計業務は簡単に効率化することができます。
一見複雑で難しそうに見えるRPAですが、現在では簡単に導入できる手段も増えてきているため、気になる場合はぜひ一度調べてみるのも良いかもしれません。
