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日産が全固体電池の実用化を進行中!EV競争力を高める新たな取り組みとは?

自動車メーカーで有名な日産自動車が、次世代の電池として話題を呼んでいる「全固体電池」の実用化を進めています。では、EV(電気自動車)に用いられてきた従来電池と、いったい何が違うのでしょうか。

今回は、日産が実用化を進める全固体電池の概要や、従来電池との違い、取り組みの動向について深掘りします。EVの革新的な技術開発について興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

日産が全固体電池の実用化を進行中

自動車メーカーとして多数の自動車製品を提供している日産が、電気自動車の技術開発のひとつとして、全固体電池の実用化を進行しています。ちなみに全固体電池とは、以下に示す能力に優れた電池のことです。

  • 耐熱性
  • 寿命
  • 環境変化
  • 安全性

電流を発生させる液性の電解質を固体に置き換えた製品であり、すでに全固体電池の生産ラインを神奈川県横浜市の工場に導入する予定です。あと数年で市場投入を検討している新技術ということもあり、日産はもちろん数多くの自動車メーカーから注目を集めています。

日産の神奈川県工場における開発計画の予定

全固体電池の生産ラインが導入される日産の神奈川県工場には、次のラインが各工程で構成される予定です。

  1. 電極
  2. セル
  3. モジュール・パック
  4. 化成

また施設規模が1万平方メートルを超えるなど、日産による大規模開発が進められる予定となっています。さらに、全固体電池の生産ラインが整い次第、日産は約200名の人材を配置し、研究開発を進める予定です。

また、同時並行して日産の神奈川県工場では、既存工場の回収が進められています。
全固体電池への対応はもちろん、その他DXに欠かせない設備を整える計画です。

日産が開発する全固体電池と従来電池の違い

日産が開発中の全固体電池は、従来電池よりもさまざまな面に優れている電池として話題を呼んでいます。参考として、日産が開発する全固体電池と従来電池との違いを表にまとめました。

全固体電池 従来電池
電気を発生させる方法 固体の電解質 液体の電解質
サイズ 小~中規模 中~大規模
充電スピード 従来電池の2倍 全固体電池の1/2

日産が開発した全固体電池は、小型かつ高強度、さらには充電スピードにも優れる製品です。
そのため、充電すればするほど劣化スピードが早まる従来電池の課題をまるごとクリアできるほか、電気自動車の軽量化を実現できます。

全固体電池・従来電池の仕組み

現在利用されている従来電池は、リチウムイオン電池というものであり、有機溶媒と呼ばれる液体を電池内を移動させることによって電力を生み出す仕組みが採用されています。対して、日産が開発した全固体電池は、すべて固体でできているため液体が移動しません。

つまり全固体電池は、固体のままプラス極・マイナス極を移動できる特殊な仕組みで電力を生み出し、液体よりも素早く電子イオンを移動できます。電子イオンの移動効率が高いほど電力をすばやく生成できることから、従来電池よりも充電スピードや安全性が向上しました。

ちなみに日産の全固体電池に用いられている電解質は、硫化物系・酸化物系の素材です。
電力生成にとって酸化物系の素材は相性が良い一方で、水に弱いという弱点があります。

日産の全固体電池に期待される効果

日産の全固体電池に期待される効果

日産が開発している全固体電池には、従来電池を上回る複数の魅力があります。
現在の電気自動車が抱える課題の解決につながるポイントや期待される効果について、詳しく整理しました。

電池製造のムダを削減できる

電気自動車に利用される電池は、耐久性が低く短期間で充電容量が減ってしまうといったトラブルが起きていました。また、寒冷地では極端に電池残量の減りが早まってしまい、途中で電気自動車が停止するといった問題が起きています。

その影響もあり、全固体電池が開発される前までは、経年的にバッテリーの交換やメンテナンスが欠かせませんでした。対して、日産の全固体電池の実用化が進めば、電池製造にかかるコストを削減できます。

つまり、全固体電池1つ当たりの寿命が延びるため、その分だけ消費量を抑えられるのが魅力です。材料不足に悩まされる現代の製造業を改善する取り組みとして、自動車メーカー各社から期待が集まっています。

レアメタル不足の解決につながる

日産が開発する全固体電池の実用化が進めば、従来電池の課題であったレアメタル不足の問題を解決しやすくなります。なぜなら、次のような点でレアメタルの使用割合を減らせるようになるからです。

  • 全固体電池による電気自動車の長寿命化により製造数を抑えられる
  • 電気自動車の普及増により製品価格が安定化する

また、現在国内で研究されている全固体電池の中には、レアメタルを使わずに生成できるパーツの開発も進んでいます。中国等が市場を埋めているレアメタル問題を解消しやすくなるほか、必要最小限の使用料でEV電池を製造できるようになるのが魅力です。

日産の全固体電池だけでなく、従来電池の再利用プロジェクトといった面白い試みがスタートしています。詳しくは以下の記事をチェックしてみてください。

車載電池の再利用がスタート!トヨタ自動車が海外の再利用プロジェクトを主導

消費者のコスト負担を削減できる

従来電池を搭載した電気自動車は、電池容量の減りが早いほか、すぐに劣化してしまうといった問題を抱えていました。対して、日産の全固体電池が普及すれば、次のようなポイントから消費者のコストを削減しやすくします。

  • 全固体電池の普及により、提供価格を抑えやすくなる
  • 自動車の軽量化・バッテリー容量の増加により長距離移動ができる
  • 劣化しにくいことからメンテナンス・修理費用を抑えられる

電気自動車は環境にやさしいエコカーではありますが、まだまだ登場したばかりの製品です。
維持管理や使用にコストがかかるのがネックでしたが、全固体電池を搭載した電気自動車なら、ガソリン車と同程度までコストに抑えやすくなるのが特徴です。

日産を含めこれまでの電気自動車に負担を感じているのなら、全固体電池を搭載した自動車へ乗り換えを検討してみるのも良いかもしれません。

もし新技術やDX、AIといった事業に興味があるのなら、社内人材育成のために、DX・AI研修を開催するのがおすすめです。自社で対応が難しい場合には、次のようなサポートを利用してみてください。

日産が実用化を進める全固体電池の課題

日産の全固体電池が抱える課題

日産の全固体電池は、電気自動車の性能・品質をグレードアップできる魅力的な製品ですが、いくつか課題があります。

参考として、日産の製造を悩ませる課題を3つまとめました。
解決の動向も含めて紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

全固体電池の製造費が高額になりやすい

まず全固体電池が、日産で開発さればかりの電池だというポイントが課題です。

自動車メーカーの中でも日産を含む大手メーカーの一部でのみ生産が計画されているほか、製造工場の生産ラインの準備、設備導入にコストがかかるため、どうしても全固体電池の製造の費用が高額になってしまいます。

ただし全固体電池の市場投入が実現し、実用化が進んでいけば、需要の増加に伴い生産コストを抑えやすくなるはずです。少し時間はかかりますが、高額な製造費が徐々に落ち着いてくると予想されます。

全固体電池の品質統一が難しい

日産の全固体電池は、従来電池と違い電解質を固化することによって電力を生み出せる電池です。しかし、電解質を固化する際の品質が安定しにくいという課題があります。

電池全体に固体電解質を分散化しなければならないのはもちろん、均一に分散しなければ、電力の生成がばらついてしまいます。ただ日産では、この問題を解決するために、次のような改善に取り組んでいるそうです。

活物質と固体電解質を均一に分散して電極を形成し、均等に加圧してセルに組み立てる。繰り返し均一なリチウムを析出するには電極材料の均一性を確保する必要がある。材料投入の順序や革新的な混ぜ方を採用して、混ざり具合を改善した。

引用:ニュースイッチ「『全固体電池』実用化へ…日産が進める革新的な技術開発の現在地」

最新の動向では、電解質の均一分散が可能となり、製造ロスの発生をゼロに抑えられるようになりました。製造方法の難しい全固体電池ですが、日産のノウハウを活用することにより課題解決ができると注目されています。

従来電池よりも出力を上げにくい

日産の全固体電池は、従来電池よりも界面抵抗(電気イオンが移動するときの速さの抵抗)が大きいという点に課題があります。

界面抵抗が大きいと、その分だけ電気イオンのスピードが遅くなってしまい、電池の出力が一定以上にあがらなくなります。全固体電池がもつ性能を最大限に発揮できないことから、現在従来電池と同乗の伝導性のある素材開発が進行している状況です。

少し時間はかかりますが、日産により出力の問題が解決され、高出力の全固体電池を提供できるようになるでしょう。

日産による全固体電池の実用化が難しいと言われる理由

日産の全固体電池が実用化しないと言われる理由

日産が実用化を急ぐ全固体電池ですが、現状、実用化が難しいといった声があります。
なぜなら、日産の全固体電池には次の弱点があるからです。

  • 放電による耐久性に乏しい
  • 水に弱い

日産の全固体電池は急速充電を行えますが、電気自動車を稼働する際の放電で電池が劣化しやすいと言われています。繰り返し放電すると性能が低下してしまうため、改良にはさらなる時間が必要です。

また、水に弱いため徹底した防水対策が必要な点にも注意しなければなりません。
日産の電気自動車のボディで雨風は防止できますが、高温多湿な日本では湿気問題が影響します。高湿な日などには徐々に全固体電池の劣化が進む恐れがあると、実用化の面で不安要素が残っています。

日産の全固体電池の問題をカバーする対策として、近年ではパワー半導体を利用した電気自動車の長距離移動化といった手法も検討されています。日産以外の事例が気になる方は、以下の記事をチェックしてみてください。

パワー半導体で電動車の電力効率を向上!SiC採用によって生まれる効果とは?

日産の全固体電池についてまとめ

日産が実用化を進める全固体電池は、電気自動車の従来電池を上回る性能・耐久性をもつ魅力的な製品です。しかし、製造コストが高額になりやすいほか、品質維持や劣化スピードといった問題が一部課題に挙げられています。

しかし、電気自動車の長距離移動・充電頻度の減少など魅力的な点が多いのも事実です。
市場投入が計画されていることも含め、日産の動向チェックが欠かせません。

日産 全固体電池のアイキャッチ
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