自動車部品加工や金属加工など、高精度な自動加工が可能なマシニングセンタはさまざまな業界への導入が進んでいます。その一方で自社に実際に導入しようと思っても、取り組み方が分からずにお困りの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事ではマシニングセンタを詳しく解説し、種類や導入のメリット、加工の手順を紹介します。
マシニングセンタとは
回転式の切削工具を使用してセットした材料に接触させ、穴あけや中ぐり、ねじ立てなどの加工を可能にした機械をマシニングセンタといいます。
マシニングセンタは最初に加工のプログラムを設定します。
その後は加工条件により自動的に切削工具を交換してくれる機能、自動工具交換機能（ATC）による自動加工が可能です。
従来の切削加工では、加工条件が変わるたびに手動で切削工具を交換しなければいけませんでしたが、マシニングセンタの自動工具交換機能により生産性は以前よりも向上しました。
マシニングセンタの種類
マシニングセンタは高精度の加工を実現した精密機械で、加工する材料の種類やサイズ、材質などにより
- 横型マシニングセンタ
- 立形マシニングセンタ
- 門型マシニングセンタ
- 5軸制御マシニングセンタ
の4つの種類に分類されます。
ここからはマシニングセンタの種類と特徴を下記に表記し、それぞれを詳しく解説します。
| マシニングセンタの種類 | 特徴 |
| 横型マシニングセンタ | 材料加工で生じる切削クズが下部に落下し、材料上に堆積しないので高精度な加工が可能 |
| 立形マシニングセンタ | 加工により縦や横、上下に動く切削工具を上から確認できるので加工状況を確認しやすい点がメリット |
| 門型マシニングセンタ | 門型マシニングセンタは大型の製品加工に適している機種で、サイズもほかのマシニングセンタよりも大きいのが特徴 |
| 5軸制御マシニングセンタ | 複数の加工軸により、複雑な形状の加工に対する連続加工が可能 |
マシニングセンタの種類①横型マシニングセンタ
加工する材料に対して切削工具が横向きに設置され、水平方向に加工する機種を横型マシニングセンタといいます。材料加工で生じる切削クズが下部に落下し、材料上に堆積しないので高精度な加工が可能です。
横型マシニングセンタの中には材料を自動搬送する装置を追加できるものもあり、この機能により連続加工による大量生産も可能です。
マシニングセンタの種類②立型マシニングセンタ
立形マシニングセンタは、切削工具が加工する材料に対して垂直方向に設置され、上から加工します。加工により縦や横、上下に動く切削工具を上から確認できるので加工状況を確認しやすい点がメリットです。
垂直方向に加工する観点から省スペースでの加工が可能ですが、切削クズが材料に堆積して切削工具との摩擦が生じ、熱を持って加工精度が低下するなどのトラブルが発生しやすくなります。
マシニングセンタの種類③門型マシニングセンタ
門型マシニングセンタは読んで字のごとく、門型に作られているマシニングセンタです。
立形マシニングセンタ同様に切削工具が垂直方向に設置され、材料が切削工具の真下まで専用のテーブルで運搬されて加工を開始します。
門型マシニングセンタは大型の製品加工に適している機種で、サイズもほかのマシニングセンタよりも大きいのも特徴です。
マシニングセンタの種類④5軸制御マシニングセンタ
縦や横、高さに2方向という多方面からの加工が可能な、最新型のマシニングセンタが5軸制御マシニングセンタです。複雑な形状の加工を行う場合、従来の立形や横型のマシニングセンタでは、加工法面を変更するたびに機械を止めてセットし直さなければいけませんでした。
一方の5軸制御マシニングセンタでは複数の加工軸により、複雑な形状の加工に対する連続加工が可能です。
この機能により従来よりも作業効率を向上させることに成功し、複雑な形状の加工に対しても1台で完結できるため、長期的な観点におけるコスト削減にも繋がります。
おすすめのマシニングセンタを紹介
前述のように製品により使用するマシニングセンタも異なり、生産が多様化されれば幅広い知識やスキルも必要とされるので、思うような生産ができない場合もあります。
そこでおすすめのマシニングセンタが、株式会社岩間工業所が開発・販売しているライトユーザー向けマシニングセンタ「TAKMill」です。
TAKMillは工作機械の難しい操作性を簡素化し、初心者でも熟練者並みの高精度な加工を可能にしています。
加工プログラムの構築に関しても、Autodesk社のCAMソフトである「Autodesk Fusion」のAPI機能を利用し、機械側に効率的にデータ出力できる仕組み搭載しております。
さらにポリゴンデータ加工に特化したC&Gシステムズ社製の3DCAM「CraftMiLL」との連携により、滑らかで美しい研削も可能です。
| 動作範囲 | X550mm Y400mm Z250mm |
| 最大動作速度 | 8000mm/min（G00 G01） |
| テーブルサイズ | X600mm Y450mm |
| テーブル高さ | 770ｍｍ |
| 機械的分解能 | 0.001mm |
| 主軸形式 | S20T プル形式：S20R-1 |
| 主軸動力 | ビルトインタイプ 400W |
| 主軸回転数 | 500-12000rpm |
| 工具突き出し長さ | 主軸端面から100mm |
| ATC | 6本 固定ダイレクト型 |
| 位置決め精度 | 0.050mm/300mm |
| 繰り返し位置決め精度 | 0.010mm |
| 制御機 | mico（オリジナルコントローラ） |
| 加工デ－タ転送 | LAN、USB |
| 電源仕様 | 1単相AC100V 15A 接地付 単相AC200V 15A 接地付 |
| 必要空気圧源 | ATCクランプ側0.6Mpa、50L／分以上（エアブローなし時） その他 0.4MPa 300L／分程度（エアブロー時） |
| 外形寸法 | W970mm D1237mm H1756mm |
| 重量 | 本体：500Kg |
| セーフティー | ドアインターロック |
| その他標準機能 | エアブロー、ドアインターロック、 自動工具長測定装置、自動電源遮断 |
| 加工材料 | アルミ（石膏類・ＡＢＳ・ケミカルウッド・軽負荷金属） |
| 付属品 | 操作説明書 |
| オプション | オイルミスト、シグナルタワー、 A軸ユニット、サブテーブル、 ツールセット、クランプキット |
マシニングセンタの機能とは
マシニングセンタの機能として第一に挙げられるのが、コンピュータ制御で切削工具を自動で交換する機能が挙げられます。
前述のように材料の加工状況に合わせ、切削工具が収納されているツールマガジンから、必要な工具を自動で選択して切削する機能です。
この機能により切削工具交換時間の削減や、生産時間短縮に繋がりました。ほかにも加工条件に合わせて、必要な工具の長さや径を補正する工具補正機能など便利な機能も搭載されています。
マシニングセンタ導入のメリット
マシニングセンタは従来の人の手による加工よりも、短時間で高精度の加工を可能にした精密機械です。では精度の高いマシニングセンタのメリットを細かく検証しましょう。
マシニングセンタのメリット①品質向上と安定化
マシニングセンタは従来の工作機能にはなかった、工具自動交換機能などの優れた機能を有しています。
この機能により切削工具の取り替えの手間が削減できるうえに、材料の形状に適した高精度な加工が実現されて品質向上に繋がりました。
また、従来の工作機械のように人の手で加工しないため、熟練度による品質の違いやヒューマンエラーなども減少した、品質の安定化が可能になる点もメリットです。
マシニングセンタのメリット②作業効率の向上
従来の工作機械では全ての加工を手作業で行っていたため、1つの製品が完成するまで1人の作業員はつきっきりで作業を行わなければいけませんでした。
一方のマシニングセンタは、一度加工データをプログラミングすれば自動加工するので、1人で複数台のマシニングセンタを取り扱うことも可能です。
そのほかにも従来の工作機械では生産中に機械を停止して切削工具を交換していましたが、マシニングセンタでは工具自動交換機能によるスムーズな加工が実現されています。
マシニングセンタのメリット③安全性向上
以前は手作業での切削工具交換時に工具で手を切傷したり、手動での加工時に工作機械に手指を巻き込まれる事例などもありました。
一方のマシニングセンタは切削データをプログラムセットすれば、自動的に加工が行われるので作業者が怪我をする心配もありません。
また、切削工具も自動交換されるので、工具交換による怪我のリスクも無くなり、安全性の向上にも繋がりました。
マシニングセンタの加工の手順
マシニングセンタは高精度な自動加工が可能なNC工作機械ですが、具体的にどのような手順で行うのでしょうか。
ではマシニングセンタの加工の手順を詳しく解説します。
手順1.加工プログラム設定
マシニングセンタの加工では、最初に加工するための具体的なプログラム設定を行います。単純な加工では機械に直接的に入力することもできますが、複雑な形状の加工であれば3DCADやCAMなどを使用して図面を作成して機械に送信するのが一般的です。
尚データ内には加工方法だけでなく、切削工具の回転数や速度など、細かな情報も入力しなければいけません。マシニングセンタの加工プログラムは3DCADソフトが使用すると良いでしょう。
手順2.材料セット
加工プログラム設定が完了すれば、次に実際に加工する材料をマシニングセンタにセットします。材料セット時には切削工具の位置も確認し、切削時の動作不良を予防しましょう。
手順3.材料加工
加工プログラム設定や材料セットが完了すれば、実際に材料の加工を開始します。加工時には、切削工具の設定や作業手順などの設定に間違がないか最終確認を行いましょう。
加工工程は、製品の大まかな形状を整えるための荒加工、中仕上げ加工、仕上げ加工の順番に行われます。
マシニングセンタ導入時の注意点
マシニングセンタを導入すれば自社の生産性を高めることができますが、効率的な導入・運営を行うためにもいくつかの点に注意しなければいけません。
ではマシニングセンタ導入時の注意点を紹介します。
注意点①費用対効果を十分検討する
マシニングセンタは数百万円程度で購入できる低価格のものから、1億円近くする高額製品まで使用目的や機能によって価格も異なります。したがって導入時には、マシニングセンタの導入目的や導入後の収益も検証するなど、費用対効果を見込んだうえでの導入を進めましょう。
導入後の費用対効果を得るためにも、導入後の生産で見込める利益やマシニングセンタにかかるランニングコストなどを算出し、そのうえで予算と相談しながら最適な機種を選択しなければいけません。
注意点②人材育成に手間がかかる
マシニングセンタを使いこなすためには工作機械に関する知識だけでなく、CADやCAMなどの設計・製図に関わる知識も必要です。したがってマシニングセンタ導入時には工作機械や設計・製図のソフトの取り扱いに精通した、ハイスキルな人材も必要とされています。
そしてそのような高い技術を持つ人材の育成には、手間がかかるのも注意点の1つです。
企業ができる具体的な解決策として現場でのOJT教育の徹底や、マシニングセンタの専門資格である「マシニングセンタオペレータ（機械加工技能士）」の取得を進めるのもおすすめです。
尚この資格は難易度やスキルによって、特級・1級・2級・3級に分類されています。
注意点③導入の意図を明確にする
マシニングセンタを導入する際には、導入の意図も明確にしましょう。具体的に導入によりどのような製品を生産し、どれくらいの収益を確保したいのかなどの目的を明確にしなければ、導入による成果を得ることはできません。
一方で導入による具体的な意図や施策を事前に練っておけば、導入すべきマシニングセンタの機種や今後の生産計画も具体化され、収益化へのスキームも明確になります。
マシニングセンタの導入で作業効率化を図ろう！
本記事ではマシニングセンタを詳しく解説し、種類や導入のメリット、加工の手順を紹介しました。自社の生産にマシニングセンタを導入すれば、労力の軽減化による人件費の削減や品質の安定化など、さまざまなメリットを得ることができます。
今後自社の生産にマシニングセンタを導入する際には、本記事を参考にして効率的な導入を行い、十分な成果をあげてください。
