DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みたいものの、費用をかけて本当に成功できるか不安に感じている企業も少なくありません。特に予算に限界がある中小企業の場合、確実にDXを成功させたいはずです。
そこでこの記事では、建設業や製造業のDXを成功させる参考として、身近な成功事例をわかりやすくまとめました。DX成功事例のタイプや共通点、進め方も紹介しているため、失敗しないポイントを知る参考にしてください。
なぜDX成功のカギは「過去の成功事例」にあるのか
DXを成功させるために重要なのは、最新ツールやトレンドを追いかけることではありません。
自社と近い立場・条件で成功した事例から学ぶことが、失敗リスクを下げてくれます。
実際、経済産業省・IPAが公開している「DXレポート2.2」「DX動向2025」でも、DXに成功している企業の多くが以下の特徴を持っています。
- 過去の成功・失敗事例を参考にしている
- 業界特有の課題(人手不足・属人化)につながるDX事例が多い
たとえば、これまでは手動で図面を書いていたところを、自動化機能で効率化するという事例も少なくありません。しかし、どのように動くことでDXを定着させたのかまで理解しなければ、DXを成功させられないでしょう。

つまり、DXを成功させるための根幹にあるのは「新しさを追う」ことではなく「自社で取り入れられる再現性」にあります。だからこそ、初めてDXに取り組む企業は、まず過去の成功事例を体系的に理解することが重要です。
中小企業がDX成功事例をチェックすべき理由
中小企業がDXで失敗しやすい理由は、膨大な予算を準備できる大企業の事例をそのまま真似してしまうことです。潤沢な人材・予算を前提としたDXは、中小企業では再現できません。
一方で、中小企業のDX成功事例には次のような共通点があります。
- 限られた人数・予算で実行できるものを選んでいる
- 現場主導で小さく始めている
- 改善を繰り返し、徐々に規模を大きくしている
たとえば、建設業では「施工管理の属人化解消」、製造業では「CAD作業や工程管理の効率化」など、日々の業務を改善する小さなDXが成果につながっています。そのため、成功事例をチェックする際には、自社の予算でも動けそうなDX成功事例を参考にしましょう。
なお、成功事例などを学びながら今後の動きを考えたい方は、以下の無料セミナーがおすすめです。オンラインで成功事例やDXの取り組み方を学べます。
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建設・製造業のDX成功事例は3タイプに整理できる
DX成功事例をそのまま並べて読むだけでは、「結局どれを参考にすればいいのか」がわからず終わってしまいがちです。そこで重要になるのが、DX成功事例を「タイプ別」に整理して理解することです。
ここでは、建設業・製造業が取り組むDX事例を、以下の3タイプに分けて紹介します。
- 社内の課題を解決する「守りのDX」
- 新たな利益を生み出す「攻めのDX」
- 社内の仕組みづくりを行う「全員DX」
業務効率化型DX(守りのDX)
業務効率化型DXは、もっとも中小企業が成果を出しやすいDX事例です。
目的はシンプルで、「ムダな作業・属人化・二度手間をなくすこと」にあり、次のような改善を目指します。
- 紙・FAX・電話中心の業務をデジタル化
- CADソフトの自動化
- Excel属人管理をクラウドで共有
- 写真・図面・進捗情報の一元管理
売上を急激に伸ばす施策ではないものの、人手不足や残業・ミスの削減の成功につながるため「守りのDX」だと言えます。
ビジネスモデル変革型DX(攻めのDX)
ビジネスモデル変革型DXは、売上や収益構造そのものを変えるDX事例です。
難易度は高いものの、次のような施策を講じ、成功すれば大きな成果につながります。
- 受注後対応型から「提案・データ活用型」への転換
- 設計データや施工データを活用した新サービス創出
- サブスクリプション・保守サービスのデジタル化
新たなチャレンジをするという意味でも「攻めのDX」に該当します。
中小企業の場合、まずは前述した業務効率化型DXで社内にDX耐性をつけたあと、段階的に攻めのDXへ進むのが正攻法です。
組織・文化変革型DX(全員DX)
組織・文化変革型DXは、DXを一部の担当者に任せない仕組みづくりの事例です。
特に、DXのノウハウが不足し、1人の担当者に任せがちになりやすい建設業・製造業では、このタイプのDXが成功を左右します。
別名「全員DX」と呼ばれており、社員全員にDXの基礎知識や考えを身につけてもらい、複数名で動けるようになるのが最終目標です。成功事例の多くも、経済産業省・IPAが公開している「デジタルスキル標準(DSS)」などを参考にして文化変革に取り組んでいます。
なお、デジタルスキル標準について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
建設業が参考にしたいDX成功事例5選

建設業のDXで成功するためには、「最先端技術を取り入れること」ではなく、現場特有の課題をどう解決するか検討することが重要です。
ここでは、以下の資料などに掲載されている大手・中小企業の成功事例を参考にしつつ、中小企業でも取り組めるポイントを紹介します。
- 日本建設業連合会の「建設DX事例集」
- 厚生労働省の「中小企業の取り組み事例」
施工管理の現場課題を改善したDX成功事例3選
施工管理の現場では、多くの作業員が協力して働くため、そこで発生する「危険」「負担」「依存」に目を向けることで、DXを進めやすくなります。たとえば、以下のDX成功事例では、課題に合う新技術の導入や、仕組み化により、作業員の負担を軽減しています。
| 企業名 | DXの課題 | 成功事例 |
|---|---|---|
| 株式会社熊谷組 | 危険工事箇所において作業員の切羽近接作業をなくしたい | 山岳トンネル工事に遠隔操作技術を導入し、爆発と吹付けコンクリート施工の両方を無人化することで安全管理の品質を高めた |
| 株式会社本間組 | パイプラインの敷設工事において、現地測量~2D図面による検証を実施すると工程の大幅遅延が見込まれた | UAVによるレーザー測量および3Dモデルによる検証を取り入れたことで、作業日数を約60%に抑えられた |
| 大津建設株式会社 | 熟練工への依存が進み、作業判断が属人化していた | 資格取得や技能講習を会社が支援し、従業員1人ひとりが複数業務を担える体制を構築したことで、熟練工依存と属人化を解消した |
ほかにも、写真管理のクラウド化やオンラインによるデータ共有なども、建設業のDXを成功させるポイントです。NETISの新技術や管理アプリの活用も検討してみましょう。
人手不足・作業時間の課題を解消したDX成功事例2選
人手不足や少子高齢化は、現在の建設業における重要課題であり、関係者1人ひとりの「作業時間」「負担」などに目を向けることが欠かせません。その対策として、以下の企業では新たな仕組みの導入や自社開発でDXの成功を収めています。
| 企業名 | DXの課題 | 成功事例 |
|---|---|---|
| 株式会社フジタ | 出来形測量に多くの人員を割かなければならなかった | 重機に搭載できるレーザー計測システムを導入したことにより、人力での出来形測量を最小限に抑えられた |
| 株式会社奥村組 | CIM技術を導入したが、スキル習得~モデル作成に大幅な時間を要していた | 社内向けのCIMモデル自動作成システムを開発したことで、これまで5日かかっていた作業を0.5日まで削減できた |
人が足りない部分をシステムや機械で補うことが、建設業のDXを成功させるポイントです。
活用する際には、どの項目をどれくらい削減できるのか数値化することで、成功の有無が見えてきます。
製造業が参考にしたいDX成功事例5選

製造業の現場では、関係企業を含む複数名が協力し合いながらプロジェクトを進めるため、業務の中枢を担う設計・生産・管理のムダや属人化を解消することが重要です。
ここでは、以下の資料を参考に、中小企業が取り組むべき内容を解説します。
- IPAの「製造分野のDX事例集」
- 経済産業省の「中堅・中小企業等における DX 取組事例集」
設計・CADの業務時間を削減したDX成功事例3選
製造業が実施する設計やCAD業務を効率化するためには、人力による作業のみならず「関係者間の連携」「効率的な共有」まで見込むことが重要です。たとえば以下のDX成功事例では、体制の見直しやクラウド、AIを活用することで、設計を進めやすい環境を構築しています。
| 企業名 | DXの課題 | 成功事例 |
|---|---|---|
| 株式会社樋口製作所 | 設計情報や製造条件が部門ごとに分断され、図面変更や仕様判断が属人化していた | 設計・製造データを統合する自社プラットフォームを構築し、設計判断に現場データを即時活用できる体制を整えて、品質向上と設計業務の効率化を実現した |
| 株式会社IBUKI | 工場の稼働状況や製造実績が現場に閉じており、設計・営業と情報が分断されていた | 工場の稼働データをクラウドツールに蓄積し、OT・ITデータを統合することで、設計・営業部門も外出先から状況把握できる体制を構築した |
| 株式会社ウチダ製作所 | 高難易度プレス金型は設計・製造を一貫対応できる企業が限られ、繁忙期には外注依存とコスト増が発生していた | 地域金型メーカーと企業連合を組成し、IoT・AIを活用した「つながる工場」を構築し、設計から製造までを分散最適化した |
ただCADソフトを導入するだけではなく、事例などを参考にして、そこに関わる周辺状況を見直すこともDXの成功に欠かせないポイントです。
生産・工程管理の無駄を削減したDX成功事例2選
納期や数量が詳しく決まっている製造業の現場では、生産や工程間に課題を抱えやすいのが特徴です。よってDXを成功させるためには、「情報管理の方法」「誰が主導で動くのか」まで考慮しながら取り組むことが成功の近道です。
| 企業名 | DXの課題 | 成功事例 |
|---|---|---|
| 西機電装株式会社 | 個別仕様・設計変更が多い製品特性に対し、量産前提の生産管理システムを導入したことで運用が破綻していた | kintoneを活用し、設計変更を前提とした柔軟な業務アプリを内製したことにより、情報管理を一元化し、手戻り削減と業務効率化を実現した |
| 中央工機株式会社 | 多品種少量生産ゆえに受発注・生産管理が煩雑で、人手作業によるミスや負担が大きかった | 改善意識の高い現場主導で、オフコンやEDI、クラウド型生産管理を活用し、受発注から生産までを効率化した |
なお、DX成功事例だけでは自社の課題解決が難しいとお悩みの方は、自社向けにDXのやり方や人材育成を支援してくれるサービスを活用しましょう。
以下の研修・人材育成サービスでは、DXを確実に成功させたい企業向けに、過去の事例などを活かしつつ最適な施策を提案してもらえます。自社にDX人材がいない場合に最適です。
DX成功事例に共通する5つのポイント
DXの成功企業を横断で見ていくと、導入したITツールやシステムの違い以上に、取り組み方そのものに共通点があることがわかります。以下に成功事例の共通点をまとめました。
- 経営層がDXを「経営課題」として扱っている
- IT導入ではなく業務改善から始めている
- 現場が「自分ゴト」として関わっている
- 外注任せにせず内製・理解を重視している
- 小さく始めて早く改善している
つまり、DXを成功させたいならDXをIT導入ではなく経営課題として捉え、業務改善を起点に小さく始めることが重要です。現場を巻き込み、内製理解を重視しながら改善を重ねることで、DXを定着させやすくなります。
事例からわかる中小企業がDXを成功させる手順

中小企業のDX成功事例だけを見ても、それを自社に落とし込まなければ、DXを成功へ導くことができません。ここでは、中小企業がDXを成功させるための進め方と、逆に失敗しやすいDXの進め方について紹介します。
成功しやすいDXの進め方4ステップ
事例にも登場したDXを成功させている企業の多くは、以下のように、いきなりシステムを入れるのではなく、現状把握から着実に進めています。
- 現場業務を洗い出し、ムダ・属人化を可視化する
- 解決すべき経営・業務課題を明確にする
- 小規模なデジタル化から試行する
- 効果を確認しながら改善・横展開する
特に現場を巻き込み、小さく試して改善する流れがDXの成功につながります。
まずは自社の課題と取り組めそうなDXの施策を事例などから検討してみて、予算や人員を考慮し、始められる施策を探してみてください。
また、成功事例だけでなくDX人材育成の流れを知りたい方は、以下の記事もおすすめです。
失敗が起きやすいDXの進め方3ポイント
成功事例を参考にすることで、企業のDXを進めやすくなりますが、一方で、以下の動き方をしている企業はDXで失敗する可能性が高まります。
- 課題整理をせず高機能ツールを導入する
- 現場説明や運用設計を後回しにする
- 定着前に次の施策へ進めてしまう
ツール先行や経営と現場の分断は、かえって業務負担を増やす原因になります。
成功事例のチェックはもちろん、余裕があれば失敗事例などの企業事例もチェックし、何をやっていいのか、何をやってはいけないのかを明確にするのがおすすめです。
また、自社で事例や施策の分析ができないとお悩みの方は、まずプロへの相談からスタートしましょう。以下のサービスでは、企業課題をヒアリングしたうえで最適なDX支援をカスタマイズしてもらえます。
DX成功事例についてよくある質問
ここまで紹介したDX成功事例について、よくある質問をFAQ形式で回答します。
DX成功事例についてまとめ
DX成功事例からわかるのは、成果を出している中小企業ほど「IT導入ありき」ではなく、業務課題や経営課題の解決を起点にDXを進めている点です。
実際、建設業・製造業でも、現場改善や情報共有といった身近な取り組みから始め、小さな成功を積み重ねることでDXを定着させています。よって重要なのは、自社に合った進め方を見極め、現場を巻き込みながら継続的に改善することです。
本記事で紹介したDX成功事例や参考文献先の資料などを参考にしつつ、自社と相性の良いDXの施策を検討してみてください。