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【2026】デジタルスキル標準(DSS)とは?DXリテラシー標準・DX推進スキル標準の違いも解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みたいものの、「結局、何を学べばいいかわからない」「設計・製造の現場にどう落とせばいいのか見えない」と感じていないでしょうか。そこで役立つのが、経済産業省とIPAが策定した「デジタルスキル標準(DSS)」です。

デジタルスキル標準は、DXリテラシー標準(DSS-L)とDX推進スキル標準(DSS-P)で構成されており、設計・製造業でも人材育成や研修設計の基準として注目されています。

そこでこの記事では、デジタルスキル標準の全体像から、設計業務との関係、研修や人材育成への活かし方までわかりやすくまとめました。効率よくDXに取り組むための指標として活用してください。

経済産業省・IPAの「デジタルスキル標準(DSS)」とは?

デジタルスキル標準

デジタルスキル標準(DSS)とは、日本企業がDXを進めるうえで必要な「スキル」を職種・役割別に体系化した国の公式指針です。

これまでのDXは、IT部門や一部の担当者に依存しがちでした。
その結果、現場との分断や「研修を受けただけ」で終わるケースが多発してしまう企業も少なくありません。

こうした課題を解消するため、経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が中心となり、誰が・何を・どこまで身につけるべきかを明確化したのが、デジタルスキル標準です。

デジタルスキル標準の位置づけ(国のDX政策との関係)

デジタルスキル標準は、国のDX政策を企業・現場レベルに翻訳するという位置づけの実務ガイドです。

DXは、「単なるIT化」ではなく、ビジネスモデル・業務プロセスの「変革」が根底にあります。しかし、抽象的な政策だけを投じても、現場(企業)が動けません。そこでIPAが中心となり、政策と現場をつなぐ具体指針として、DXとは別にデジタルスキル標準が運用されています。

そのため、企業としてDXを効率よく進めたい場合には、デジタルスキル標準をもとに無駄のない計画を立てることが欠かせません。

デジタルスキル標準の変遷(Ver1.0~1.2)

デジタルスキル標準の最新版は、2024年7月に公開されたVer1.2です。
Ver1.0が公開されて以降、生成AIの急速な普及に対応する形で、次のようにバージョンアップが行われてきました。

バージョン 公開年 調整されたデジタルスキルの内容
Ver1.0 2022年 DSS-L(3月)・DSS-P(12月)の策定
Ver1.1 2023年8月 知識項目に生成AI関連の内容を追加
Ver1.2 2024年7月 以下の情報が追加
・生成AIの具体的な業務活用
・社内ルール・ガバナンス整備
・データ活用を前提とした実践的スキル定義

このようにデジタルスキル標準は、技術トレンドを後追いする資料ではなく、企業実務に合わせて更新され続けている点が特徴です。そのため、DX研修や人材育成を検討する際は、必ず最新版を前提に内容を確認することが重要です。

デジタルスキル標準の全体構成(DSS-L・DSS-Pの違い)

デジタルスキル標準は、大きくDSS-L(DXリテラシー標準)とDSS-P(DX推進スキル標準)の2層構造に分解できます。

DXのためには全社員が最低限の理解をもつ必要があり、かつ推進役が専門性を発揮しなければならないことから、役割分担の明確化を目的に、2つの標準が設けられました。両者の違いを、設計・製造業の視点で紹介します。

比較項目 DSS-L(DXリテラシー標準) DSS-P(DX推進スキル標準)
対象者 全てのビジネスパーソン・設計者 DX推進を担う専門人材
目的 DXを理解し「自分事化」する DX施策を企画・実行する
主な内容
(設計業務の場合)
DXの背景を理解し、設計業務を説明できる力 設計プロセスを変革し、成果を出す実行力

DXリテラシー標準は「すべての設計者に必要な共通知識」

DXリテラシー標準
出典:IPA「DXリテラシー標準(DSS-L)概要」

DXリテラシー標準(DSS-L)は、CAD設計者・エンジニアを含む、すべての設計職が共通して身につけるべきDXの基礎知識を定義したデジタルスキル標準です。

たとえば設計業務では、3DCAD、CAE、BIM、データ連携、生成AIなどの活用が進んでおり、ただツールを使うだけでなく「なぜそれが必要なのか」をすべての関係者が理解しなければなりません。

そのため、DXリテラシー標準では、以下の4つの視点でデジタルスキルの基本がまとめられています。

項目 役割
Why なぜDXが求められているのか(社会・産業構造の変化)
What DXで使われるデータ・デジタル技術の基本
How データや技術を業務でどう活用するか
マインド・スタンス 新しい価値を生み出すための姿勢・考え方

「DXは一部の担当者の仕事」と感じている設計現場ほど、DX推進スキル標準のなかのDXリテラシー標準の考え方が必要です。設計部門全体でDXの共通認識をそろえることが、デジタルスキルの育成とDXを失敗させない第一歩になります。

DX推進スキル標準は「設計DXを牽引する人材の役割定義」

DX推進スキル標準
出典:IPA「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」

DX推進スキル標準(DSS-P)は、DXを前へ進める「役割」と「協働のあり方」を定義したデジタルスキル標準です。

主に、企業で発生しやすい「DXの方向性を描けない」「どのような人材が必要なのかを整理できていない」などの課題を解消する役割があります。そして、取り組みを実現するため、DXを担う人材を5つの類型に整理し、デジタルスキルと役割を次のように明確化しました。

人材類型 人材のデジタルスキルと役割(全業種対応)
ビジネスアーキテクト DXの目的設定から導入、効果検証までを一気通貫で推進する人材
デザイナー 顧客・ユーザー視点で製品・サービスや開発プロセスを設計する人材
データサイエンティスト データ収集・解析を通じて業務変革や新規価値創出を支える人材
ソフトウェアエンジニア DXを実現するシステム・ソフトウェアを設計・実装・運用する人材
サイバーセキュリティ人材 DXを支えるデジタル環境のリスクを抑制する人材

ここで重要なのが、各人材が上下関係で動く存在ではなく、相互に連携・協働する関係である点です。担当者が分かれたままでは、うまく連携を取れずDXを実現しにくくなるため、デジタルスキルと役割を整理することから着手しましょう。

デジタルスキル標準は「CAD・設計職」にどう関係するか

デジタルスキル標準と「CAD・設計職」の関係

デジタルスキル標準は、CAD・設計職におけるDXを実現するための指針として活用することが可能です。

ここでは、前項で紹介したデジタルスキル標準およびDSS-L・DSS-Pと、CAD・設計職を当てはめつつ企業の取り組み方を紹介します。

CAD設計者が該当しやすいDX推進人材類型

CAD設計者が該当しやすいDX推進人材類型

デジタルスキル標準におけるDSS-Pの人材類型は、CAD・設計職の場合、次のように置き換えられます。

人材類型 CAD・設計職向けの役割
ビジネスアーキテクト 設計データを軸に、設計〜製造〜業務全体のDXを設計・推進する設計リーダー
デザイナー 使いやすさ・作りやすさを考え、製品や設計プロセスを設計する設計者
データサイエンティスト CAE結果や設計データを分析し、品質・性能・効率を改善する設計者
ソフトウェアエンジニア CAD自動化・ツール連携・設計システムを構築する設計×IT人材
サイバーセキュリティ人材 設計データやPLM環境を守り、情報漏えい・改ざんを防ぐ設計管理人材

デジタル化が進んでいる現在、CAD設計者は1つの業務だけでなく「データ活用」「LISPやマクロを用いた自動化」に対応する機会も増えています。そのため、人材類型は「どれか1つに当てはまるか」ではなく「どの要素をどの程度担っているか」という視点が必要です。

たとえば下の画像のように、AutoCADを扱える人材は、CADの使い方を熟知しているデザイナーでありつつ、自動化を実装できるソフトウェアエンジニアとしてのデジタルスキルを持ち合わせているケースもあります。

CAD作図と自動化のセット

そのため、ひとつの類型に絞り込むのではなく、5つの項目(デジタルスキル)をレーダーチャート化し、総合的に役割を可視化していくことが重要です。

CAD・CAE・3Dプリント業務とデジタルスキル標準の関係

設計業務に関わる「CAD」「CAE」「3Dプリント」などの業務は、デジタルスキル標準においてDXを実行する中心業務として位置づけられます。ただし、ここで評価しなければならないのは「作業内容」ではなく「どのように活用されているか」です。

たとえば、図面作成や解析、試作を個別に行っているだけでは、単なるデジタル化にとどまります。一方で、設計データを製造・解析・試作と連携させ、業務全体の効率化や品質向上につなげていれば、DX推進スキルとして評価されます。

ここで重要なのは、現在の設計業務が「DXとして説明できる状態になっているか」を確認することです。

デジタルスキル標準に当てはめて育成計画や採用計画を立てるためにも、まずは「設計データがどこまで連携しているか」「人に依存している工程はどこか」を洗い出すことから始めましょう。棚卸しを行うだけで、強化すべきデジタルスキルや研修方針を決めやすくなります。

デジタルスキル標準を研修・人材育成に活かす方法

デジタルスキル標準を研修・人材育成に活かす方法

デジタルスキル標準は、ただ知識を得たり、人材の特徴を整理したりするだけではなく、その後の研修や人材育成といったアクションにつなげることが重要です。

ここでは、企業が実務で取り入れやすいデジタルスキル標準の活用方法を紹介します。

研修設計に活用する(全社員・選抜型)

研修のためにデジタルスキル標準を活用する場合、人材の特徴に合わせて以下の2つの研修スタイルを用意するのがおすすめです。

  • 全社員向けの基礎研修
    (DXの背景・データ活用・生成AIリテラシー・デジタルスキルを共有)
  • 選抜型のDX研修
    (設計リーダー・DX人材のデジタルスキル育成)

デジタルスキルの育成やDXが進まない原因は、「一部のDX担当者だけが理解している状態」にあることから、DSS-LとDSS-Pに分け、従業員の状況やレベルに合わせて研修を設計することが重要です。

そのため、自社で「全社員に求めるDXリテラシーやデジタルスキル」「設計職・DX人材に求める専門のデジタルスキル」を整理し、たたき台を作ることから始めてみてください。

人材要件・評価基準へ落とし込む

デジタルスキル標準は、人材要件定義や評価基準を明確化するための指標としても活用できます。

もしDX人材の評価があいまいなまま取り組みを進めた場合、「スキルがある人が正当に評価されない」「伸ばすべきスキルが伸びない」などの問題が発生するかもしれません。

対して、デジタルスキル標準にもとづいて「その人材に必要なスキル」を明確化すれば、自社におけるDXの貢献度をすぐに把握できるようになります。今後の研修選びやDX人材の採用にも関わるため、DX視点で評価できていない項目がないか確認してみてください。

マナビDX(経済産業省・IPA)と連携する

研修を実行する際は、経済産業省とIPAが提供する公式ポータルサイト「マナビDX」を活用し、学習とデジタルスキル標準をひも付けると効率的です。

マナビDXのサイトには、デジタルスキル標準に対応した研修・講座が整理されています。
自社でゼロから研修を作るよりも、国の指針と整合した形で学習設計に取り組めるのが魅力です。

なお、自社でどこから整理すべきか判断が難しい場合は、デジタルスキル標準を前提に整理支援を行う研修サービスを参考にするのも1つの方法です。

たとえば以下の研修サービスを活用すれば、自社に最適なデジタルに強いDX人材を育成し、DX化を推進しやすくなります。DXの課題をヒアリング、スキルチェックした上で研修・プランを提案するため、ゼロベースからでもDXに取り組めるのが魅力です。

デジタルスキル標準についてよくある質問

ここまで紹介してきたデジタルスキル標準について、よくある質問をFAQ形式で回答します。

デジタルスキル標準は資格として使える?
デジタルスキル標準は資格そのものではなく、取り組み方の指標です。ただし、人材要件や研修設計、評価基準の土台として活用できます。特に、ITパスポートなどの資格はDSS-Lと親和性が高く、資格+デジタルスキル標準でスキルを説明できます。
DXに必要なスキルは何ですか?
DXに必要なデジタルスキルは、従業員全員に必要なDXリテラシー(背景理解・データ活用・マインド)と、役割別の専門スキルです。設計職では、設計データ活用、業務連携、ツール自動化などがDX推進スキルとして重視されます。

デジタルスキル標準についてまとめ

デジタルスキル標準は、DXをベースとした人材育成・評価・研修を設計するための実務指針です。

特にCAD・設計職では、設計業務をDXの視点で整理し、価値として可視化することが重要になります。自社が満たしているもの、逆に不足しているものを明確にし、次に伸ばすスキルを洗い出してみてください。

そのうえで、マナビDXや研修サービスなどを活用すれば、計画的な人材育成や研修を実施できます。

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