ハローワークが国や自治体と提携して提供する「CADの職業訓練」について、意味ないという声を聞き、不安に感じている方も多いでしょう。なかには、噂のせいで申し込むべきか決めきれない人もいるはずです。
そこでこの記事では、CADの職業訓練の概要や必要性、活用するメリット・デメリット、選び方までわかりやすくまとめました。職業訓練に申し込む魅力を知り、自分向けのコースを探してみてください。
CADの職業訓練(ハロートレーニング)とは?
CADの職業訓練(ハロートレーニング)とは、ハローワークと国・自治体が連携して行う再就職支援プログラムのことです。無料または低コストで実務レベルのCADスキルを習得でき、再就職まで伴走支援を受けられるため、CADオペレーターや設計者を目指す方に向いています。
なおCADの職業訓練は、単なる座学や操作講座ではなく「業界で働くことを前提に組み立てられたカリキュラム」です。建築・機械・土木などの分野別コースがあり、AutoCADやJw_cad、SOLIDWORKSといった現場で使われるCADソフトの使い方を学べます。
まずは、CADの職業訓練の概要をわかりやすく解説します。
- 種類
- 受講方法
- 学べる内容
- 得られること
CADの職業訓練の種類
CAD職業訓練は、以下の3タイプに分かれます。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 公的職業訓練 | 設備が充実しており、実習を中心に受講できる (雇用保険受給者向け) |
| 離職者・求職者支援訓練 |
離職・求職の支援が充実している (雇用保険非受給者向け) |
| 民間委託職業訓練 | 通いやすさ重視の訓練であり、民間ならではの得意分野などもある (雇用保険受給者向け) |
雇用保険を受給している方で、アクセスできる範囲に職業訓練がある場合は「公的職業訓練」、アクセスできない場合は「民間委託職業訓練」を選ぶのがおすすめです。
また、仕事をやめて雇用保険被保険者となった場合には「離職者・求職者支援訓練」を選ぶと良いでしょう。
CADの職業訓練の受講方法(通学・オンライン)
CADの職業訓練は、通学型が基本です。ただし近年ではオンラインを併用できるハイブリッド式の訓練校も増えてきています。
なお、地域によってオンラインで学べる学校が異なります。
すべての学校が対応しているわけではないため、CADを学ぶ際には職業訓練の事前確認が必要です。
CADの職業訓練で学べる内容
CADの職業訓練では、次のように「CADソフト操作+製図・モデリング知識+実務演習」をセットで学べます。
- CAD基本(CADソフトの特徴や仕組み)
- 製図の手順
- 拡張子やデータの規格
- 実務スキル
- 周辺知識(Excel連携・PDF納品・自動化など)
たとえば、建築系の職業訓練コースでは確認申請図の作図、機械系の職業訓練コースでは部品表BOM作成など、実務につながる知識やその操作まで学べます。仕事をするうえで必要なCADスキルを、体系的に学習できると理解しておきましょう。
CADの職業訓練で得られること(就職・ポートフォリオ)
CADの職業訓練を利用すれば、「求職活動に使えるポートフォリオ・実績」そして「即戦力となれるスキル」を身につけられます。
職業訓練の目標は、単にスキルを習得できることではなく、「就職・転職成功」です。
無料で提供されているセミナー講習とは違い、実務に近い形でじっくりとCADスキルを学べるため、職業訓練は学んだことをすぐ仕事につなげたい方向けのスキル習得方法だと言えます。
CADの職業訓練が意味ないって本当?

「CADの職業訓練は意味ない」という噂を聞いて、不安を感じている方も多いでしょう。
結論として、その評価のほとんどは誤解によって生じたものであり、「コース選びと活用方法を間違えた方」などが意味がなかったという発言をしていることがほとんどです。
たとえば、厚生労働省が公開している「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況」の資料によると、令和6年度時点の就職率は施設内訓練で85.7%、委託訓練で72.4%です。
この数字からも分かるように、CAD職業訓練が意味ないのではなく、「目的設定→コース選択→就職準備」を正しく踏めるかどうかが結果を分けています。逆に、次のようなケースでは成果につながりにくくなります。
- CADの操作だけ覚えて「業界知識」を訓練で学ばなかった
- 目指す分野と違うCADソフトを学んだ
- 就職・転職が目的なのにポートフォリオを作り込まなかった
このように、職業訓練は「通うだけ」では効果が薄く、在学中にポートフォリオ作成と就職活動を並行する人ほど成功しやすい仕組みです。「CADの職業訓練は意味ない」と後悔しないためにも、受講前に目標職種とソフトを整理し、計画的に通学しましょう。
CADの仕事はAIでなくなることはない
もうひとつ、意味がないと言われる理由として多いのが、近年のAIの発達によりCAD系の仕事が減ってしまうという噂です。
結論として、CADの仕事は、生成AIや自動作図ツールが普及しても完全になくなる可能性は低いと考えられます。その理由は、CAD業務の中心が「図面を描くこと」ではなく、設計意図の理解や調整・法規や基準の判断などの考える業務だからです。
現在のAIは、過去データをもとに図形を自動生成できるようになってきていますが、施主の要望や法規の擦り合わせや現場条件をもとにした図面調整などは、まだまだ人間の仕事です。CADオペレーターの需要はなくならないため、職業訓練を活用してみてください。
CADの職業訓練を活用するメリット
CADの職業訓練を受けるべきか迷っている方向けに、通学するメリットを整理しました。
- 無料or低コストでCADを学べる
- 給付金を受けられる
- 就職・転職サポートを受けられる
- 実務レベルの演習を受けられる
- 資格取得につながる
無料or低コストでCADを学べる
職業訓練は公的制度のため、受講料が原則無料であり、教材費のみの負担で済みます。
求職者支援制度は、再就職、転職、スキルアップを目指す方が月10万円の生活支援の給付金を受給しながら、無料の職業訓練を受講する制度です
引用:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
一般的な民間スクールだと数十万円かかる内容を、低コストで受講できるのが大きな利点です。
高性能PCやCADライセンスも校内で利用でき、費用面のハードルを下げた状態で学習を始められます。
給付金を受けられる

次のような一定条件を満たすと、職業訓練受講給付金(月10万円)や通所手当を受け取れます。
- 本人収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練実施日全てに出席する(例外あり) など
失業中でも生活基盤を確保しながら学べるため、学習に集中しやすい仕組みです。
また、雇用保険受給者は基本手当が延長対象になる場合もあり、経済面の不安を抑えながら再就職を目指せます。
CADの職業訓練の支援制度一覧
CADの職業訓練では、受講料が無料もしくは低価格というだけでなく、生活面を支える公的制度が用意されています。代表的な制度を一覧で整理しました。
| 支援 | 特徴 |
|---|---|
| 職業訓練受講給付金 | 職業訓練受講手当:10万円/月 通所手当:通所方法で異なる |
| 雇用保険 |
基本手当:離職前の賃金に応じて支給額が異なる 受講手当:500円/日(上限あり) 通所手当:通所方法により支給額が異なる |
| 就職サポート | キャリアコンサルティング 職業紹介 |
出典:厚生労働省「就職支援・給付金などについて知る」
就職・転職サポートを受けられる
職業訓練では、次のような就職・転職のサポートがセットで提供されます。
- 履歴書添削
- 模擬面接
- 求人紹介
CADオペレーターや設計者系の求人の企業説明会も多く、未経験者でも就職・転職しやすい環境です。加えて、担当指導員が希望分野に合わせて職務経歴書を調整し、内定まで伴走してくれます。
実務レベルの演習を受けられる
職業訓練で学べるCADは、操作練習だけではなく、実際の案件を想定した課題図面を作成できます。たとえば、建築分野では平面図・立面図、機械分野では部品図・アセンブリなどを扱うため、完成データをポートフォリオとして、面接時に活用可能です。
また、CADの知識は独学でも学べます。練習方法については以下の記事をチェックしてみてください。
資格取得につながる
職業訓練で学べるCADのカリキュラムは、次のような資格取得のための基礎知識としても役立ちます。
- CAD利用技術者試験
- 建築CAD検定
実際、試験対策が授業に組み込まれる職業訓練も多く、在学中に合格を目指せます。
CAD系の資格は就職・転職での強力な武器となるため、特にCAD未経験の方は取得を目指してみてください。
また、建築CAD検定に興味をお持ちの方は、以下の記事もチェックしてみてください。
CADの職業訓練を利用するデメリット
CADの職業訓練はメリットが大きい一方で、時間・選考・就職保証の面で制約があります。
参考として、デメリットに感じやすいポイントと対策を整理しました。
- 週5での通学が負担になりやすい
- 選考倍率が高い
- 内定保証がない
- 学習に時間がかかる
週5での通学が負担になりやすい

職業訓練として提供されている多くのCADコースは、平日週5日・1日5~6時間の通学形式が基本であり、現在の仕事や育児との両立が難しくなりがちです。
オンラインを併用できる学校も増えていますが、実習は登校必須の場合が多く、通学時間も負担になります。途中で挫折しないためにも、生活リズムや交通費を事前に確認し、通いやすい職業訓練を選ぶようにしましょう。
選考倍率が高い
建築CAD・機械3Dなど人気分野は、時期によって倍率が跳ね上がることも多く、特に人口比率の多い都市部などでは、希望する職業訓練に入れないことも少なくありません。
特に入学するための面接では、志望動機や就職計画が重視され、準備不足だと不合格になりやすい点が課題です。希望する職業訓練コースに落ちた場合の代替校や時期を想定し、複数の選択肢を持っておくと受講する機会を逃しにくくなります。
内定保証がない
職業訓練は就職支援付きですが、内定を保証する制度ではありません。
求人紹介や添削は受けられますが、最終的な応募・面接は本人次第です。
特に、ポートフォリオ不足や希望条件のこだわり過ぎが原因で内定が決まらないケースもあるため、職業訓練でのCADの学習と併行して、求職活動も入念に対策しましょう。
学習に時間がかかる
職業訓練でCADを学ぶ場合、CADの操作だけでなく次のような知識・スキルの習得なども必要になることから、一般的に通学できる3~6か月では時間が足りないと感じる人もいます。
- 製図スキル
- 規格の理解
- 図面の読解
- 業界知識
特に3D分野は理解に時間がかかり、復習時間の確保が欠かせません。
短期で成果を出すためにも、職業訓練の授業外での演習なども独学で行いましょう。
失敗しないCADの職業訓練の選び方
CADの職業訓練選びを失敗したくない方は、自分が目指す業界と、そこで利用されているCADソフトを確認したうえで訓練校を選択するのがおすすめです。
ここでは、業界別の職業訓練コースの選び方を紹介します。
- 建築・土木向け
- 製造・機械・電気向け
建築・土木向けコースの選び方(AutoCAD・Jw_cad・Revit)

建築・土木業界を目指している方は、以下のCADソフトを学べる職業訓練コースを選びましょう。
- Jw_cad(2D作図)
- AutoCAD(2D作図・3Dモデリング)
- Revit(BIM)
それぞれ、業界で活用されている標準ソフトであり、小規模な設計なら2D作図ができるJw_cad、中規模以上の設計については2D・3Dの両方に対応したAutoCAD、そして国が推進するBIM業務に対応したいなら、Revitを学べる職業訓練コースがおすすめです。
なお、設計の標準ソフトとして活用されやすいのが「AutoCAD」です。
複数のCADソフトとの互換性が高く、さまざまな業種で活用されています。
しかし、以下のようにコマンドの数が多いため、独学ですべてを学ぶことに高いハードルを感じる方も少なくありません。

そのため、職業訓練などを通じてAutoCADの全体像を学ぶのがおすすめです。
また、確認申請図・施工図・数量拾いなど実務課題がある職業訓練コースを選ぶと、実務で役立つ知識も学べます。
製造・機械・電気向けコースの選び方(SOLIDWORKSなど)

製造・機械・電気系の業界を目指している方は、以下のCADソフトを操作できる職業訓練コースがおすすめです。
- SOLIDWORKS
- Autodesk Fusion
- Inventor
それぞれ、3Dモデリングを行うことができ、アセンブリや部品図の作成など、業界で必要となるCAD操作を学べます。しかし、次のように3DCADでは3Dモデリングだけではなく、解析やレンダリングといった機能も搭載されており、覚える範囲が非常に広いです。

さらに規模が大きいプロジェクトでは、CADと連携して解析やシミュレーションを行える「CAE」、工作機械を制御する「CAM」を学ぶ必要もあります。そのため、まずは幅広い業務範囲に対応している職業訓練コースを選び、実務に直結する知識を得ることが重要です。
CADの職業訓練とセミナー講習を比較しよう
CADの職業訓練は、すべての人に最適なサポートとは限りません。特に、以下にあてはまる方は、CADの職業訓練を受けるよりも、セミナー講習を選択するのがおすすめです。
- すでに仕事をしていて週5通学が難しい
- すぐに特定ソフトだけ習得したい
- 転職ではなく業務効率化の目的で学びたい
- 自己学習ペースで進めたい
たとえばセミナー講習なら、特定のCADソフトを用いて、短期間で学習を終えられます。
有料ではありますが、土日や自宅で学習できるセミナー講習も見つかるため、効率よくCADスキルを身につけたい人に向いています。
- 2DCADの「Jw_cad」
- 2D・3DCADの「AutoCAD」
- BIMの「Revit」
2DCADの「Jw_cad」を学ぶ

Jw_cadは、建築・内装・住宅分野で利用者が多い国産の2DCADソフトで、無料で使える点が強みです。住宅・リフォーム業界を目指す人、費用を抑えて基礎から学びたい人、2D中心のCADオペレーターを希望する人に向いています。
そして、以下のセミナー講習では、Jw_cadの基本知識や操作、実務における使い方を体系的に学習できます。プロ講師からアドバイスをもらえるため、個人でCADを学べない方に最適です。
| セミナー名 | Jw_cad基礎セミナー |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 27,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
2D・3DCADの「AutoCAD」を学ぶ

AutoCADは、建築・土木・機械など、さまざまな業界をまたいで活用できる汎用型のCADソフトです。求人数も多いため、未経験から就職の選択肢を広げたい人、派遣・在宅も視野に入れる人、汎用性を重視する人に適しています。
以下のセミナー講習では、AutoCADの知識・操作を体系的に学べます。
2D・3Dそれぞれに触れることができ、実務で役立つ知識も学習できるため、初めてCADに触れる初心者におすすめです。
| セミナー名 | AutoCAD基礎セミナー講習 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 27,500円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
BIMの「Revit」を学ぶ

Revitは、BIM業務の中心的なツールです。2D・3DCADソフトと連携して利用できるほか、数量や図面を自動で連携できるなど、近年の建築・土木業界の標準となりつつあります。
そのため、設計事務所・ゼネコンを目指す人、将来のキャリアアップを狙う人、3D思考が得意で長期的な成長を重視する人は、前述のJw_cadやAutoCADに合わせて、Revitのセミナー講習を受けておくのが最適です。
以下のセミナー講習では、Revitの概念から、CADとの違いや連携方法、そして設計の流れまでを総合的に学べます。初学者に難しいポイントを解説してもらえるため、つまずきやすい点を解消しながら学習できます。
| セミナー名 | BIM・建築 3DCAD Revitセミナー講習 |
|---|---|
| 運営元 | GETT Proskill(ゲット プロスキル) |
| 価格(税込) | 41,800円〜 |
| 開催期間 | 2日間 |
| 受講形式 | 対面(東京・名古屋・大阪)・ライブウェビナー・eラーニング |
CADの職業訓練についてよくある質問
ここまで紹介してきたCADの職業訓練について、よくある質問をFAQ形式で回答します。
CADの職業訓練についてまとめ
CADの職業訓練は、未経験から設計・製図の仕事を始めるための、有用性の高い支援です。
無料または低コストでCADを学ぶことができ、給付金や求職支援も活用できます。
また職業訓練選びで重要なのが「業界×CADソフト」を正しく選択すること、そしてポートフォリオと就職活動を並行することです。目的を持って取り組めば、年齢・経験を問わず再就職の可能性が十分にあります。まずはハローワークでコース相談から始めましょう。