AIクローンは、話し方や思考パターン、判断基準をAIに学習させ、人間のように応答・判断させる技術です。そして、この技術を業務に活用できるか検討している方も多いでしょう。
そこでこの記事では、AIクローンの仕組みからメリットや注意点、具体的な作り方についてまとめました。CAD業務での活用方法もまとめているので、業務効率化を実現する参考にしてみてください。
AIクローンとは?
AIクローンとは、特定の人物の次の情報をAIに学習させて、デジタル上で再現する技術です。
- 知識
- 思考
- 判断傾向
単なるAIの自動応答ではなく、「その人らしい考え方」を再現できます。
たとえば従来のAIチャットボットは、FAQ対応や定型業務が中心でした。
一方で、AIクローンは大規模言語モデル(LLM)と検索拡張(RAG)を組み合わせて、「過去の発言」「業務判断の基準」「専門分野の知識」といった文脈をもとに応答が可能です。
「ベテラン設計者の判断履歴を学習し、設計意図を説明する」「過去案件の図面・指摘内容をもとに、若手の質問に回答する」といった使い方もできるため、人間をサポートする新技術として多くの企業から期待が寄せられています。
なお、AIクローンを作成するためには、ベースとなる生成AIやプロンプトの組み方を学ばなければなりません。そのため、生成AIに触れたことがない初心者の方は、セミナー講習を通じて、基本操作や実践的な使い方をインプットしましょう。
以下のセミナー講習では、ChatGPTやCopilotの利用手順や業務活用法について詳しく学べます。
セミナー名 生成AIセミナー 運営元 GETT Proskill(ゲット プロスキル) 価格(税込) 27,500円〜 開催期間 2日間 受講形式 対面(東京・名古屋・大阪)・eラーニング
AIクローンでできること・できないこと

AIクローンは「人間の代わりに何でもできるAI」ではありません。
一方で、得意な領域に正しく使えば、人の思考や判断を強力に補助できる技術です。
ここでは、実務で誤解されやすい「できること・できないこと」を整理します。
AIクローンで得意なこと
AIクローンが力を発揮するのは、過去の知識・判断をもとに、同じような思考で対応する次のような業務です。
- 過去の資料・発言・判断履歴をもとにした質問対応
- 専門分野におけるアドバイスや一次判断の提示
- 繰り返し発生する相談・問い合わせへの即時対応
- ベテラン社員の考え方を再現した教育・OJT支援
- CAD・設計業務における設計意図や過去事例の説明
AIクローンは、正しく学習させれば「その人らしい判断」をすぐに再現できます。
自社業務の中に当てはまりそうなものがある場合は、AIクローンの作成を検討してみてください。
AIクローンが苦手とすること
AIクローンは、次のような責任を伴う最終判断や、前例のない創造的業務を単独で行うことはできません。
- 法的・倫理的な責任を伴う意思決定
- 前例や学習データが存在しない新規判断
- 感情や人間関係への高度な配慮が必要な対応
- あいまいな条件下でのリスク判断・責任分担
- データが不足している業務の丸投げ運用
たとえば、「倫理観を無視した経営を左右する判断をAIに任せる」という指示を出した場合、AIクローンはあいまいな提案しかしてくれません。あくまで人間のサポートという立ち位置である点に注意してください。
AIクローンを作成するメリット
AIクローンは、単に業務効率化を実現できるだけでなく、企業のデジタル資産として長期的に活用できるのが強みです。ここでは、実務で効果が出やすい3つのメリットを紹介します。
思考や判断を再現して業務を分身化できる
過去の発言や判断履歴をAIクローンに学習させれば、インプットした本人に近い思考プロセスを再現できます。
問い合わせ対応や設計方針の整理などを「分身」として任せられるため、人がゼロから考える時間を減らしつつ、判断の一貫性を保てる点が大きな強みです。
属人化したノウハウをAIとして引き継げる
AIクローンに資料や判断基準を学習させれば、ベテラン社員のノウハウを組織全体で共有できます。
たとえば、ベテラン社員の経験やコツ、勘は文章化されないまま属人化しがちであり、その人材がいなければ業務が機能しないケースも少なくありません。
対してAIクローンを活用すれば、退職・異動によって知識やコツが絶たれるリスクを防止でき、人材の異動が多い現場でも安定化を図りやすくなります。
人手不足でも品質を落とさず業務を回せる
AIクローンを補助役として活用すれば、判断補助や一次対応を任せることができ、これまで人が対応してきた一部の業務をAIクローンに任せられるようになります。
例として、建設業や製造業、物流業などの現場は人材不足の危機に瀕しており、人材が減ると、特定の人物に業務が集中するリスクを抱えている状況です。
実際、帝国データバンクが2025年に実施した「人手不足倒産の動向調査」によると、3年連続で倒産件数が増加傾向にあり、建設業や物流業などの倒産が目立つと分析されています。
一方でAIクローンを導入すれば、不足する人員の一部の役割をAIが担えるようになります。
結果として、少人数でも業務品質を維持しやすくなるのがメリットです。
またAIクローンのベースとなる生成AIを活用すれば、作図をAIに任せられる可能性も高まってきています。以下の記事では、活用例を紹介しています。
AIクローンのリスクと注意点

非常に便利なAIクローンですが、使い方を誤ると大きなリスクを伴います。
特に近年は、なりすましや情報漏えいといった実害が社会問題化しているため、ここでは、導入前に必ず押さえておくべき注意点を紹介します。
なりすまし・詐欺に悪用されるおそれあり
AIクローンは、話し方や判断を再現できる反面、第三者に悪用されると「本人になりすました詐欺」に使われる危険があります。
マカフィー株式会社が2023年に実施した調査によると、海外では音声クローンを使った詐欺被害も報告されています。そのためAIクローンの導入時は、本人確認ルールや利用範囲を明確に定めることが欠かせません。
個人情報・知的財産の扱いに注意
AIクローンに学習させるデータには、個人情報や社内ノウハウが含まれることが多いため、管理が不十分だと、情報漏えいや権利侵害につながるおそれがあります。
たとえば、本人の同意なく社員の発言記録や顧客対応履歴をAIクローンに学習させる行為は、内容によっては個人情報保護法に抵触するおそれがあります。
また、取引先との契約書や設計ノウハウなどを無断で学習データに含めた場合、営業秘密の不正利用(不正競争防止法)や、著作権侵害(著作権法)と判断されるかもしれません。
AIクローンによるトラブルを避けるためにも、学習データの範囲や保管方法を整理し、社内ルールとして明文化しておくことが重要です。
AIクローンを作り出すサービス一覧

AIクローンは、特定の生成AIサービスを通じて作成することが可能です。
参考として以下に、AIクローンを作り出せるサービスを一覧化しました。
| AIクローンのサービス名 | 特徴 | 価格帯(税込) |
|---|---|---|
| Google Gemini(Gem) | プロンプトを用意してAIクローンをカスタムする | 2,900円/月~ |
| ChatGPT(マイGPT) | プログラミング不要で対話を通じてAIクローンをカスタマイズできる | 20ドル/月~ |
| Maison AI | 対話形式&資料読み込みで専門性の高いAIクローンを作成できる | 要問い合わせ |
| AIQ Inc. | 特許AIを活用してECサイト上で稼働するAIクローンを作成できる | 要問い合わせ |
汎用的なAIクローンを作成したい場合は、Google GeminiやChatGPTといった生成AIを活用するのが便利です。一方で、特定の分野に特化したAIクローンを作る場合には、Maison AIやAIQ Inc.など、国内企業が提供するサービスを活用しましょう。
また、AIクローンだけでなく業務ではさまざまなAIサービスが活用されています。
クローン以外の活用法も知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
AIクローンは無料でも作成できる?
AIクローンは、無料のChatGPTやGoogle Geminiを通じて作成することも可能ですが、次の点に注意が必要です。
- AIモデルのバージョンが低い
- 出力文字数などに制限がある
- 対話をするなかで出力結果が変動しやすい
無料である分、AIクローンの精度が低く、品質がばらつきやすい点に気を付けてください。
業務で活用できるAIクローンを導入したいなら、可能な限り有料のものを選ぶ必要があります。
AIクローンの初心者向けの作り方(ChatGPTを活用)

AIクローンは、いきなり高度なツールを使わなくとも、ChatGPTといった生成AIを活用することで作成することが可能です。
ここでは、ChatGPTのPlusプランで利用できる「マイGPT」という生成AIをカスタマイズできる機能を使いながら、具体的な作り方の例を紹介します。上の画像の手順でマイGPTを起動したうえで、実際にAIクローンを作成してみてください。
AIクローンに学習させる情報を整理する(発言・判断・資料)
まずは、AIクローンに学習させる情報を整理します。
ChatGPTのマイGPTでは、プロンプトベースでAIクローンを作成できるため、今回は「建築設計」という業務で活用する目的で、次の人格設定を行いました。
・年齢:40代
・職業:ベテラン設計者(20年の実績があり、建築士の資格を持つ)
・性格:穏やかかつ論理的
・スキル:建築設計に深く精通しており、クライアントの意向を汲んだ設計に強い
・強み:設計のことならすべて即答できる/基準をすべて理解している
なお、性格などを調整すれば、AIクローンの口調が変わります。
またマイGPTでは、資料を読み込ませることも可能であるため、設計データなどを準備しておくと、精度を高めやすくなります。
誤回答を防ぐための制約条件と禁止ルールを設定する
AIクローンのプロンプトを組む際には、誤回答を防ぐための条件を設定することが重要です。
誤回答が多いAIクローンはビジネス活用が難しいため、今回は設計で痛恨となりやすい以下のルールを設定しました。
・数値情報を出す際は、根拠情報を示すこと
・提案をするときは、どの基準を参考にしているのか出典を記載すること
・基準や過去の事例にない提案を行う際は、その旨を記載すること
・断言できない提案は、必ず判断を仰ぐこと
特に設計業務では、国や自治体、研究機関が出している技術基準などにもとづいて対応する必要があります。AIクローンがそのルールを無視しないように、細かく「ダメなこと」を指示することが重要です。
小規模テスト運用で精度と安全性を検証する

ここまで設定してきた情報をもとに、実際にマイGPTに読み込ませてみます。
上の画像にある「指示」に、上記の2つの赤枠の内容をコピペしました。
これで実際に、AIクローンを動かしてみます。今回は「建築設計を行ううえで必ず最初に設定しなければならない数値情報を教えてください」と指示をしてみました。すると、ベテラン設計者のAIクローンから次の回答を受け取りました。

建築設計で「必ず最初に設定すべき数値情報」は、後工程すべて(法規チェック・ボリューム検討・構造計画・コスト)に影響するため、初期段階で確定または仮固定しておく必要があります。以下は2026年時点の建築基準・実務慣行を前提にした、必須の数値情報です。
上記の書き出し以降、必要な設定項目やチェック先、用途などが細かく整理されました。
追加で質問をすれば情報の深掘りもできるため、AIクローンと対話をしながら設計業務を進めることが可能です。
AIクローンをCAD業務に活用する方法
AIクローンは、設計者の思考を再現することで、CAD業務に活用することも可能です。
ここでは、AIクローン×CAD業務を組み合わせる活用例について紹介します。
図面作成の相談をする

AIクローンに過去の図面や設計判断を学習させれば、「この納まりで問題ないか」「過去はどう判断していたか」といった相談に即座に回答できます。
たとえば上の図面を読み込ませたうえで、「作成した図面にミスがないかチェックして」という指示を出したところ、次の回答を得られました。

① 明確なミス、またはミスの可能性が高い点
1. 廊下幅員が法規・実務基準ギリギリ
廊下寸法表記:1,500mm
事務所用途(特定多数が利用する可能性あり)の場合
建築基準法施行令 第119条
片廊下:1,200mm以上
両側居室:1,600mm以上
本図面は
EV、階段、トイレ、パントリーへの動線廊下
両側に室がある区間が存在
1,500mmは「両側居室扱い」だと不足の可能性
→ 用途(事務所専用か/不特定多数か)を要確認
このように、設計者が1から考える時間を減らしつつ、判断のブレを防止できるのがAIクローンの強みです。図面作成後の最終チェックとして活用できます。
若手設計者向けアドバイザーとして活用する
ベテラン設計者の知識やノウハウをAIクローン化すれば、次のような若手設計者がつまずきやすいポイントのアドバイス役として活用できます。
- 作図のために何を検討する必要があるか
- 基準に合う作図ができているか
このように、AIクローンが補足説明することで、OJTの負担を軽減できます。
ベテラン設計者の考え方を再現したアドバイスをいつでも受けられるため、質問待ちによる手戻りを防ぎ、育成スピードの向上につながります。
AIクローンについてよくある質問
ここまで紹介してきたAIクローンについて、よくある質問をFAQ形式で回答します。
AIクローンについてまとめ
AIクローンは、人の思考や判断を再現し、業務を支える新しいAI活用手法です。
万能ではありませんが、正しく設計すれば属人化や人手不足の解消に役立ちます。
またAIクローンはCAD業務などの、専門分野にも活用できます。
業務効率化や生産性向上を目指すひとつの方法として、この機会にAIクローンの作成をスタートしてみてはいかがでしょうか。