金属加工を行う製造業などにおいて、これまで手作業で行っていた加工業務を自動化する「マニシングセンタ」が広く普及しています。
マニシングセンタは、現代のものづくり現場において欠かせない機械であり、多くの企業で導入が進んでいることから、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか?
そこで気になるのが価格です。
決して安価ではないため、マニシングセンタを導入する際は「業務がどれだけ効率できるのか」「自社予算に合っているのか」など見極める必要があります。
本記事では、マニシングセンタの価格相場や導入時のポイント、おすすめの製品を紹介します。
マニシングセンタとは?
マニシングセンタとは、回転工具を利用し穴あけやフライス削りなど複数の切削加工を1台で行える工作機械です。マニシングセンタには自動で工具を交換する「自動工具交換装置(ATC・オートツールチェンジャー)」、数値制御を行う「NC装置」などの機能を備えているのが特徴です。
従来のフライス盤では、工具交換を機械を都度停止し行っていましたが「自動工具交換装置」によって大きく作業効率を向上させています。
また、工作機械生産高のうちおよそ4割がマシニングセンタであることから、最も使用されている工作機械であると言えるでしょう。
マニシングセンタの基本的な構造と概要については以下の表を参照ください。
機能 | 概要 |
NC装置、制御盤 | NCプログラムの読み込み・機械を動かす指令を出す |
自動工具交換装置(ATC) | 加工で必要になる工具の交換を行う機能 刃物台が回転して工具交換をする「旋回式」、ツールマガジンに収納した工具をアームによって主軸に取り付ける「マガジン式」に分かれる |
主軸(スピンドル) | 取り付けた工具を回転させる装置 |
テーブル、ベッド | 材料を直接配置したり、バイスやロータリーテーブルなどの治具を配置する箇所 人が乗れるぐらい大きくなるとベッドと呼ぶ |
インデックステーブル | 割り出し加工をする前提で、材料をつかんで回転させるための治具 テーブルに固定して使用 回転を止めて切削するもので、基本的には回転しながら切削する同時4軸/5軸の加工は不可 |
マニシングセンタの主な種類と価格
マニシングセンタは主に下記4種類があり、それぞれによって特徴や価格は異なります。
- 立型マシニングセンタ
- 横型マシニングセンタ
- 門型マシニングセンタ
- 5軸マシニングセンタ
立型マシニングセンタ
切削工具を取り付ける向きがZ軸となり、鉛直方向をZとします。
加工物を上から加工する機械で、移動軸はX(横:左⇔右)、Y(縦:手前⇔奥)、Z(高さ:上⇔下)に動作します。回転軸のない一番オーソドックスな工作機械です。
フラット面を残すために枠を残したり、製品にフィットする治具を準備するなどの工夫をすることで、
表裏の加工を行ったり、インデックステーブルを配置することで多面加工を行うなど、工夫することで多面加工にも対応される会社もあります。
CAMのツールパス作成も単純なので、導入数は断トツで稼働率も非常に高い工作機械です。
価格相場は、テーブルサイズに比例しますが、1000万~5000万円ほどです。
※高精度などの特別条件は当然金額に直結しますが、単純に大きくなれば剛性を必要とするために金額も高くなります。
横型マシニングセンタ
今回は横型を前提とするので、切削工具を取り付ける向きは水平方向です。
加工物を横から加工する機械で、移動軸はX(横:左⇔右)、Y(縦:上⇔下)、Z(高さ:手前⇔奥)に動作します。Y軸を回転軸(B軸回転)とする工作機械です。
重量のある多面加工を要する製品を加工する場合や、4面治具の各面を使って複数の製品を削る場合に効果を発揮します。
回転動作やワーク座標系をうまく使うことで、3軸加工のNCデータを複数の原点で流用することも可能ですし、パレットチェンジャーと組み合わせて量産加工を自動化している会社もあります。
価格相場は、基本的に大型ということもあり、5000万~1億円ほどです。
3軸+1軸を横型で紹介しましたが、小型になれば立型の機械も存在します。
また、立型3軸にインデックステーブルを取り付けて3軸+1軸として利用することも可能です。
門型マシニングセンタ
立型同様に鉛直方向に、工具の取り付け位置があり、「門型」と呼ぶゲートの上部に主軸がY軸方向に稼働するように設置してあります。門自体はY軸とZ軸の方向に稼働します。ベッド(テーブル)がX軸方向に稼働します。
非常に大きな加工機で、人も乗れる大きさのテーブルはベッドと呼ばれます。機械の機構で言えば立型の3軸に近いですが、 ゲート自体の上下でZ軸の移動軸を持ち、さらに主軸部が下向きに伸びる動作のW軸を持つ機械もあります。
また、主軸部分が角度を持つアングルヘッドやユニバーサルヘッドになっていれば、A軸/B軸やC軸の回転軸を持ちます。
このヘッドにより多様な多面加工が可能となります。材料が大きいことと、早送り動作を早くできないことにより、できるだけ回避動作を少なくしたり、段取り替えをしなくて済むようにプログラムを作ることが求められます。
価格相場は、非常に大型なものばかりなので、数億円と言われています。
5軸マシニングセンタ
立型3軸と同様に鉛直方向を基本とし、XYZの移動軸を持ちます。
回転軸は2つあり、テーブルに2つあるもの、ヘッド側に2つあるもの、テーブルとヘッドに1つずつあるものの3種類あります。
同時5軸は荒取りには適しませんが、中仕上げ/仕上げにおける切削速度を整えることができ、突き出し長さを短くできるメリットがあります。
割り出し加工ではつなぎ目部分のぼかし方に悩むところですが、同時5軸で加工することにより、滑らかな接続面に仕上げることも可能です。
また、割り出し加工にも当然対応しているため、精密な穴加工や中途半端な角度の面出し加工が混ざっている製品を仕上げることも可能です。
ただし、同時5軸においてはCAMが必須となるので、メーカーさんの紹介するCAMを導入されている会社さんも多いことでしょう。
しかし、今となってはメーカーさん・ベンダーさん・代理店さんの知識も蓄積されており、自社の加工に適したCAMを選定する余地も出てきたのではないでしょうか。
価格相場は、1000万円~1億円とばらつきがあるので、自社の得意な材料にフィットしていそうな機械メーカー・商社さんから見積を取るのが良いでしょう。
マニシングセンタの価格相場
前述した通り、マニシングセンタの価格は1台で1,000万円以下のモノもあれば、1億円以上する高価なモノもあります。
価格相場は発売されているメーカー・特徴・種類によって異なります。
また、基本的にオープン価格で表示されていることが多いため相場価格には幅があります。
オープン価格とは、メーカーが小売価格を提示せず卸価格だけを設定する価格表示形式であり、実際の販売価格は商社が決定します。
つまり、実際に商社に問い合わせてみないと価格がわからないということです。
マニシングセンタの価格相場を正確に知るためには、複数の商社に問い合わせをしてもらい「自社に必要な機能やオプション」で見積もりを取ってもらいましょう。
不慣れな方にもおすすめな立型3軸マシニングセンタTAKMill(たくみる)
ここからは株式会社岩間工業所が発売する立型3軸マニシングセンタ「TAKMill(たくみる)」について紹介します。
TAKMillとは?
TAKMillとは、モノづくりの開発研究・デザインの現場において切削経験がない方や製品を簡単に造形したい方を対象に工作機械特有の難しい機能を削減し、誰でも”匠”の「勘・コツ」を表現できることを目的とした立型3軸マニシングセンタです。
TAKMillの特徴
TAKMillは大きく以下3つの特徴があります。
- アシストモードの搭載
- コンパクトかつ大きな削り面
- 工具長測定が不要
TAKMillの特徴①アシストモードの搭載
従来のUIである「mico」の操作画面をより簡潔に、スムーズに操作できるアシストモードを搭載しています。機械が提案するシンプルな手順通りに操作するだけで、切削加工に必要なすべての準備がスムーズに行えます。
TAKMillの特徴②コンパクトかつ大きな削り面
機械幅1000mm以下に対してストロークが広く、省スペースかつ広い加工範囲での切削が実現できます。また、高さ方向のストロークが250mmもあるため深い形状の加工も可能です。
TAKMillの特徴③工具長測定が不要
工具長測定を行う場合、慣れていなければ時間がかかり測定ミスによって最悪の場合、機械の損傷につながります。TAKMillは手順を自動で行ってくれるようにプログラミングし工具長測定が不要です。
TAKMillの製品概要
TAKMillの製品概要は以下の表を参照ください。
項目 | 概要 |
動作範囲 | X550mm Y400mm Z250mm |
テーブルサイズ | X600mm Y450mm |
テーブル高さ | 950mm |
主軸回転数 | 500-12000rpm |
重量 | 500Kg |
価格 | 要問い合わせ |
マニシングセンタ導入時に注意するポイント
マニシングセンタ導入時には以下3点のポイントに注意しましょう。
- 詳細価格は見積もりを取る
- メンテナンス等の費用もかかる
- サポート体制が充実しているか
注意するポイント①詳細価格は見積もりを取る
マニシングセンタの価格はオープン価格であるため、詳細価格はわかりません。
自社に必要な機能やオプションを商社に伝え、見積書を取りましょう。また、見積もりは複数から取るのがおすすめです。
仮にWeb上で価格が表示されていたとしても自社に不要な機能が備わっている場合もあります。
自社の予算に収まるように検討しましょう。
注意するポイント②メンテナンス等の費用もかかる
マニシングセンタは導入時に大きなコストがかかりますが、ランニングコストもかかります。
メンテナンス費用や故障やトラブルにおける修理費用なども考慮しておかなければいけません。
メンテナンス費用を抑えたいのであれば、シンプルな機能のみ搭載されているマニシングセンタがおすすめです。機能が少なくシンプルな機種は比較的メンテナンスも楽で長く使い続けられるのが特徴です。
注意するポイント③サポート体制が充実しているか
マニシングセンタはサポート体制が充実しているか重要なポイントです。
特に5軸マニシングセンタなどは高度なプログラミング機能が必要であり、メンテナンスも複雑になってきます。
万が一故障やトラブルが起きた際に対処できる人材体制が構築できていれば良いですが、体制が構築されていなければ稼働が停止する恐れもあります。
そのため、サポート体制が充実しているものを選びましょう。
マニシングセンタの価格に関するよくある質問
ここではマニシングセンタに関するよくある質問についてまとめています。
マニシングセンタの価格は高ければ高いほど高機能で使いやすいというわけではありません。
もちろん高価であれば製品の品質が良く、機能が多く搭載されていますが、すべての機能が必要なケースは稀です。また、マニシングセンタを使用する頻度が少なければ高品質の製品でなくても長期間使用できるでしょう。
マニシングセンタを始めとするNC工作機械はオペレーターが直接NCプログラムを入力して加工する作業があります。
しかし、手動でプログラムを作成するのは時間がかかる上に高度な技術が必要です。
CAMを使用すれば業務時間の短縮にもつながります。
CADの機能も搭載されており、2軸、2.5軸、3軸など多彩な機能も搭載されています。
また、初心者にも扱いやすくプログラムの作成を手軽にできるでしょう。
マニシングセンタの価格についてまとめ
マニシングセンタは決して安価なものではありません。
高いモノだと1億円〜の場合もあるため、複数の商社から見積もりを取り慎重に比較・検討を行って導入しましょう。
また、価格相場はあくまでも目安ですので参考正確な価格を知りたいときは問い合わせを行いましょう。自社の予算と相談しながらマニシングセンタの導入を検討してみてください。
![マニシングセンタの価格相場は?導入時に注意するポイント](https://cad-kenkyujo.com/wp-content/uploads/2024/06/5cd99822a37d837764c6092ed1ecc891-375x245.png)