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蓄電池モジュールの鉄道向け次世代製品が登場!導入に伴う業界の変化とは?

家電製品や産業機器、社会インフラといった幅広い事業を展開している三菱電機が、鉄道業界向けの次世代蓄電池モジュールを開発しました。登場した蓄電池モジュールは、従来の製品と何が違うのでしょうか。

今回は蓄電池モジュールのニュースから、製品の特徴や従来製品との違い、導入に伴う業界の変化を深掘りします。鉄道業界で何が起こるのか、ぜひチェックしてみてください。

三菱電機が次世代蓄電池モジュールを開発

武蔵精密工業の子会社である三菱電機が、山梨県北社市にある「武蔵エナジーソリューションズ」と連携し、鉄道業界向けの次世代蓄電池モジュールを開発しました。

三菱電機は、家電製品から社会インフラまで幅広い開発事業に取り組んでいる会社であり、今回鉄道業界のカーボンニュートラル実現に向けて共同開発を進められました。モジュール開発の役割は以下の通りです。

企業名 蓄電池モジュール開発の役割
三菱電機 高出力・高密度・長寿命の蓄電池デバイスの開発
武蔵エナジーソリューションズ 耐振動・絶縁・防水性能などの付与

環境に優しく省エネ効果が高い蓄電池モジュールとして、鉄道業界全体から注目が集まっています。

三菱電機の目標

三菱電機は、開発した蓄電池モジュールを国内外の鉄道業界に向けた販売を検討しています。

鉄道業界は国内外を問わず、多くの企業がCO2排出問題に頭を抱えています。
特に環境配慮型の車両は世界的に需要が高まっている状況です。

三菱電機は世界売網の実績を活かし、カーボンニュートラルの実現や、消費電力の縮小化をはかる企業などに向けて販売の準備を始めています。

武蔵エナジーソリューションズの事業内容

次世代蓄電池モジュールの開発は、三菱電機だけでなくカーボンニュートラルの実現に向けた蓄電池の製造・販売を展開している武蔵エナジーソリューションズも関わっています。

主にエネルギー密度が高く、高効率な出力ができるハイブリッドスーパーキャバシタを製造しており、三菱電機との共同開発をきっかけに鉄道向けの蓄電池製造をスタートしました。

次世代蓄電池モジュールの本体のほとんどは武蔵エナジーソリューションズが担当しており、ほかにも数多くの蓄電池製造を対応している会社です。

蓄電池モジュールとは?

蓄電池モジュールとは
出典:三菱電機「蓄電池モジュール」

蓄電池モジュールとは、電力を蓄えられる充電装置に使われているセル(電池)の集合体のことです。蓄電池の中には複数のセルが搭載されており、モジュールとして大量の電力を充電できます。

また充電した電力は、今回紹介する鉄道はもちろん、外部電源として利用できるのが特徴です。
電力を利用して動く鉄道の場合は蓄電池モジュールが必要不可欠あり、近年では蓄電池から電力を供給して動く、蓄電池電車などの需要も高まってきていきます。

一般的な蓄電池の種類

三菱電機が開発した蓄電池は鉄道業界向けの製品ですが、ほかにも数多くの蓄電池が販売されています。参考として、以下に一般的な蓄電池の種類を整理しました。

蓄電池の名称 特徴
鉛蓄電池 蓄電池のなかでも古い歴史を持っており、非常用電源や自動車のバッテリーとして活用されている
ニッケル水素電池 単3電池など小型の蓄電池であり、環境への影響が少ないことから市販品としても販売されている
リチウムイオン電池 ニッケル水素電池を改良した大容量電池のことであり、パソコンやスマートフォンといったデバイス充電用として広く利用されている
NAS電池 ナトリウム硫黄を活用した電池であり、電力の大規模貯蔵施設などで利用されている

蓄電池電車の種類

蓄電池モジュールを搭載した充電装置を利用して動く蓄電池電車は、国内外のさまざまな場所で利用されています。参考として、主な蓄電池電車の種類をまとめました。

国名 車両名
日本 クモヤE995-1・EV-E301系
EV-E801系
ドイツ ETA150
ETA176
オーストラリア デジロML
イギリス IPEMU

ただし、蓄電池に蓄えられる電力量には限界があるため、1回の充電で50~100km程度の走行に対応できる車両が多い傾向です。また技術の発展に伴い、徐々に走行距離を伸ばしているほか、各駅に配置された蓄電池を交換するといった作業で対応しています。

次世代蓄電池モジュールと従来製品の違い

今回新たに開発された蓄電池モジュールは、従来製品と比べて以下の点に優れています。

  • 回生電力の吸収が可能
  • 走行時に必要な電力を自動で調整

従来製品の場合、ただ電力を消費するだけでなく、走行時の電力調整は鉄道の種類によって左右されていました。対して、次世代蓄電池モジュールは、ブレーキをかける際に回生電力を吸収するほか、走行時に必要な電力を自動調整できるのが魅力です。

蓄電池モジュールが解決する社会的課題

蓄電池モジュールが解決できること

開発された蓄電池モジュールは、ただ性能がアップしただけではなく、社会的な課題や業界的な課題をいくつも解決できるのが魅力です。何を解決できる技術なのか詳しく見ていきましょう。

CO2排出量削減によるカーボンニュートラルの実現

次世代型の蓄電池モジュールは、従来製品よりもCO2排出量を削減できるのが魅力です。
1日中走行が必要な鉄道の電力を節約できれば、その分だけ電力を生み出すための発電が不要となり、カーボンニュートラルの実現に近づくことができます。

また回生電力を活用することでムダな電力を消費できることから、従来の蓄電池モジュールよりもさらに電力消費量を抑えやすくなると期待されています。

日本はもちろん世界中が2050年を目標としてカーボンニュートラルの実現を目指しており、鉄道業界に環境に優しい製品を取り入れられると注目が詰まっています。

鉄道業界のコスト縮減

次世代蓄電池モジュールの導入は「電力」というポイントで鉄道業界全体のコスト縮減に効果があると言われています。参考として、コスト縮減効果の高いポイントを以下にまとめました。

  • 回生電力の効果で走行時の消費電力を節約できる
  • 自動調整機能により走行に合わせた電力消費ができる

鉄道業界は少子高齢化の影響で徐々に廃線数が増えており、運用コストの高さで利益を生み出せなくなってきています。そういった状況で無駄な電力を消費しない蓄電池モジュールを活用することにより、コスト縮減に貢献しやすくなるのが魅力です。

鉄道設備のスリム化

三菱電機が開発した蓄電池モジュールは、従来のモジュールよりもコンパクトなサイズであることから、車両に搭載時に次のメリットがあると言われています。

  • 車体重量を削減できる
  • 車内空間に余裕を生み出せる

蓄電池モジュールの重量が軽くなったことにより、車体重量が減り、消費電力を節約しやすくなるのが魅力です。また、省スペースに蓄電池モジュールを搭載できることになったことで、鉄道車両のサイズや条件を問わず導入しやすくなっています。

蓄電池の活用事例

蓄電池の活用

鉄道業界向けの次世代蓄電池モジュールはもちろん、蓄電池はさまざまな場所でカーボンニュートラルの実現に役立っています。参考として環境対策としての活用事例を紹介します。

自治体による災害対応としての蓄電池導入

日本では、頻発する気象変動や豪雨災害の対策として蓄電池の導入を推進する自治体が増えています。避難場所でも快適な生活が送れるように、次のような場所に蓄電池を導入しています。

  • 学校施設
  • 公民館
  • 自治体運営施設(市民体育館など)

また近年では、自治体のみならず企業でも災害への意識が高まってきています。
災害時などでも企業経営を存続する対策であるBCP(事業継続計画)のひとつとして、会社への備蓄や蓄電池モジュールの導入などが進められています。

毎年のように発生する災害により、日本は国・自治体・企業・国民を含めて十分な災害対策が備わってきていると言えます。

企業による蓄電池モジュールを使ったCO2排出量削減

カーボンニュートラルの取り組みは国や自治体だけでなく、企業も再生可能エネルギーを活用しつつ、次のような方法でCO2排出量の削減を目指しています。

  • ビル屋上や外壁に太陽光発電システムと蓄電池モジュールを設置
  • 山間部の土地を購入して太陽光発電設備を運用

太陽光発電システムはCO2を排出しない再生可能エネルギーとして注目されており、発電した電力を蓄電池モジュールに蓄えられるのが魅力です。通常時は会社を運営するための電力として利用するほか、災害時の緊急電力として利用する2つ目的で導入が進んでいます。

太陽光発電は日本の発電割合のなかでも、2番目に電力量の多い発電方法であることから、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献できる取り組みとして、蓄電池モジュールも含めて企業の導入が進んでいます。

個人の省エネとして電力を確保

再生可能エネルギーや蓄電池モジュールの技術は、個人の家でも広く活用されています。

何も物を置かない屋根を利用して太陽光発電システムを設置することが多く、発電した電力を自宅で消費できるのが魅力です。

電力会社がCO2を排出して生み出した電力を供給しない、また供給したとしても供給量を減らせるとして、多くの家庭が再生可能エネルギーや蓄電池モジュールを活用しています。

蓄電池モジュールの課題

蓄電池モジュール

鉄道業界はもちろん、企業や個人にとって大きなメリットのある蓄電池モジュールですが、次の課題を抱えていることに注意しなければなりません。

  • 利用期間が長いほど蓄電量が減っていく
  • 蓄電池モジュールの費用が高い

近年では戦争などの影響により、材料や製造コストが高騰しています。
蓄電池モジュールも同様に価格高騰の影響を受けているため、費用対効果を検討したうえで導入することが重要になるでしょう。

蓄電池モジュールについてまとめ

三菱電機が開発した蓄電池モジュールは、鉄道業界のカーボンニュートラルの実現や電力コストの縮小化、設備のスリム化などに大きく貢献する製品です。

現在、国内外向けの提供が始まりつつあるため、今後の動向から目が離せません。

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