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成形不良を予測する『流動解析』とは?CAEソフトウェアの利用知識

建築分野や製造分野では欠かせないCAE解析。
しかし、CAE解析の種類も用途も様々で、どのように活用できるのかよくわからないと言う方も多いでしょう。
納品先からの製品の差し戻し、修正、不良トラブルetc…
コストも時間も掛かってしまう製品や部品の欠陥は、予め予測できるといいですよね。

そこで今回は、そんな悩みを解消できるCAE解析の中でも、実用的な流動解析について解説していきたいと思います。

流動解析(CAE)とは?

流動解析(CAE)とは?

外観では確認できない射出成形機から、金型内部に射出された溶融樹脂がどのように流動し充填するかをシュミレートすることを、流動解析(CAE)といいます。

金型やプラスチック成形品の成形過程で流れる溶融樹脂の流れを可視化し、樹脂の圧力や温度、収縮量などを解析することにより成形時の不良の予測および原因の分析ができます。
つまり解析結果からは、

  • 流動パターン
  • 樹脂圧力分布
  • 樹脂温度分布
  • ウェルドライン発生位置

等の予測ができます。

流動解析で得られる解析内容

流動解析で得られる解析内容

充填解析

対象のモデル解析上で、成形性や品質上のトラブルを表示し、それに対しての対策方法を明示してくれます。
また、樹脂の温度、圧力分布、充填パターンを確認し、ウェルドラインやエアートラップの発生位置を予測する事も可能です。

ヒケ解析

ヒケと呼ばれる、成形収縮段階で生じるへこみやくぼみの深さと発生位置を予測できます。

冷却品質解析

成形サイクルで増大していく、熱が溜まる部位を確認できます。

ゲート位置解析

最も適切なゲート位置を提示し、かつ脆い部分や欠陥部分などの不適切な部位の確認ができます。

流動解析を行う目的

流動解析を行う目的は、目に見えない部分を可視化して不良トラブルを予測するのと、無駄な工数や費用を削減して短納期、低コストで実現するという2つの目的があります。

1.不良品トラブルを避けるため

目に見えない金型内部や、プラスチック内部の溶融樹脂の流れを可視化できる流動解析は、主に不良品トラブルを未然に防ぐ目的で活用されます。
具体的には充填不良、ウェルドライン、エアトラップなどの成形不良を予測したり、冷却不良時の不良箇所の特定や成形後の収縮、ソリ不良の発生箇所を予測します。
これらの解析結果から、不良品トラブルの予測や原因の特定ができるため、不良品トラブルの発生を未然に防げるほか、製品の高品質化にも繋がります。

2.短納期、低コストで製品を仕上げるため

流動解析を行うもう1つの目的は、無駄な工数や費用を削減して短納期、低コストで高品質の製品を実現するためです。
製造前から不具合箇所を予測できることは、同時に製品の差し戻しや試作回数を減らす事にも繋がり、結果として低コストかつ短納期にも対応できます。
資源を使わずに、ある程度の完成系までもっていけるのも流動解析の特徴だといえます。

流動解析を行う上で必要な知識

流動解析を行う前に前提となる知識が3つあります。

1.解析ソフトの利用知識

フリーで使える無料のソフトから、有料のソフトウェアまでありますが、解析が行えるのであればどちらでも構いません。
企業から色々な解析ソフトが出されているので、自身の分野に適した解析ソフトを使いこなせるといいでしょう。

2.材料力学を含む工学知識

CAE解析を行うには、工学知識の中でも特に材料力学の知識が必要不可欠になります。
材料力学とは、機械の部品に働く力である「変化量」や「応力」を算出する学問のことです。
これらを算出することにより、部品がうまく機能するのかを計算上で割り出す事ができます。
単純な形状であれば算出することは簡単ですが、実際の製品に使われるパーツは複雑な形状のモノも多いので、そういったときは解析ソフトが役に立ちます。

有限亜素法の知識(FME解析)

別名、Finite Element Methodと呼ばれる有限亜素法の知識も、流動解析を行う上で必須の知識となります。
有限亜素法とは、構造物をメッシュと呼ばれる要素に分割して数値解析を行う事です。
メッシュが細かければ細かいほど計算精度が上がり、メッシュの1辺が長いなど、アスペクト比(縦横比)が大きく違うと精度が落ちるため、メッシュのアスペクト比は1:1か1:2が良いとされています。

流動解析の手順

流動解析の手順

1.解析モデルの作成

3D CADなどのツールを用いて、成形品をメッシュ化します。
メッシュ化した成形品にゲート、スプルー、ランナーを追加し、射出位置の設定を行います。

2.成形材料の設定

解析モデルをメッシュ化したら、解析ソフトを操作し、樹脂データベースから材料グレードを選択します。
データベースにない場合は類似の材質を選択、もしくは新規で樹脂データの手配が必要になってきます。

樹脂データを新規で得るためには、材料メーカーに問合わせをし、データを持っている場合は支給してもらいます。
持っていない場合は、材料データの新規作成になります。

3.成形条件の設定

成形材料が決定したら、次に成形条件の設定を行います。
冷却時間、保圧、射出、樹脂温度、金型温度etc…の基本的な条件を指定し、必要に応じて成形機のスペックも変更します。

4.解析スタート

指定した箇所に間違いがないか確認したら、解析を開始します。
解析エラーが生じる場合は、エラー箇所があるはずなので修正し、再開します。
解析にかかる時間はモデルの容量によって変わり、複雑なモデルや容量の大きいモデルは、結果がでるまで時間が掛かります。

5.解析終了

解析が終了すると、解析結果が表示されます。
解析結果からは、充填解析結果からモデルに流れる樹脂の挙動を確認することができます。

流動解析の注意点

いくら解析ソフトの技術が発達しても、解析ソフトの精度と完成品のギャップは僅かながら生じます。
なので、解析結果を中心にして試作するのではなく、過去の試作データと解析結果を併用することで、より現実的な予測や不良箇所の特定ができ、精度を向上させることができます

成形不良を予測する『流動解析』とは? まとめ

今回は流動解析について解説しましたがいかがでしたか?

流動解析を行う事によって工数の削減に伴うコストカット、時間の短縮、不良トラブルの予測による高品質化など様々なメリットが得られる事が分かったかと思います。

おさらいとして最後に箇条書きでまとめて終わりたいと思います。

  • 流動解析は設計前段階で成形不良を予測するための解析。
  • 流動解析を行うためには前提知識が必要。(解析ソフトの利用、材料力学、FME解析の知識)
  • 過去の試作データがある場合、それらを加味して解析結果を照らし合わせると成形品の精度を上げる事ができる。
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