皆さんは、Autodesk社が開発した「Moldflow」をご存知でしょうか?
プラスチック射出成型のシミュレーションソフトウェアで、製造上の欠陥を低減させるうえで役立つとされるMoldflowですが、その実力はどれほどのものか気になりますよね。
今回は、Moldflowの機能や価格、導入事例など、基本的な情報を詳しく解説していきたいと思います。
製品の概要
Moldflowでは、射出成形金型設計、プラスチック部品設計、および射出成形プロセスのための各種ツールを利用できます。
Moldflow製品には二つの種類があります。
解析担当者のための高度なプラスチック設計シミュレーションツール「Moldflow Insight」は、最先端の成形プロセスのシミュレーションを行い、生産の遅れを回避できます。
設計者と開発担当者のためのプラスチックシミュレーション「Moldflow Adviser」は、成形品と金型の設計を最適化し、成形品の品質と製造性を確保できます。
Autodesk Moldflow Adviserには二つのエディションがあり、一個取りのみに対応した充填解析が可能な「Premium」と、セット取りに対応した充填解析、保圧、反り解析、金型冷却解析に対応した「Ultimate」があります。
〇機能比較
Moldflowには、射出成形を最適化する様々な機能が搭載されています。ここでは、その一部をご紹介します。
・Moldflow Insight
粉末射出成形 | 金属射出成型又はセラミック射出成形プロセスをシミュレートできます。 |
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収縮と反り | 正確に補正されたモデルを生成して、金属設計に使用したり、成形品の形状にさらに変更を加えたりすることができます。 |
バルブゲート開閉の制御 | バルブゲートの開閉を制御したり順次開閉させることで、高品質のサーフェス仕上げを実現できます。 |
誘導加熱 | 金型コンポートの電磁誘導加熱をシミュレートできます。 |
熱可塑性樹脂射出成形 | 設計及び成形プロセス、リアクティブ成形、半導体封止成形などをシミュレートできます。 |
成形不良の可視化 | ウェルドラインや引けなどの成形不良を可視化し、射出ポイントの位置などを最適化できます。 |
成形不良の削減 | 成形不良に早めに対応でき、エアートラップ、ショートショット、コアシフトなどの潜在的な不良を低減できます。 |
複屈折 | ブラーや二重イメージなどの光学的な品質の問題を予測し、軽減できます。 |
・Moldflow Adviser
ランナーバランス | ランナーバランス処理により、金型のすべてのキャビティが、均等に分散された圧力で同時に充填されます。 |
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成形品公差、収縮、反り | 成形品反りを解析し、潜在的な設計上の問題を評価することにより、成形品の品質を最適化できます。 |
効果的な金型のモデリングと冷却 | 自動的に冷却管を作成し、宇久数の冷却平面を追加できるほか、手動で冷却回路をモデリングできます。 |
デザイナーのためのアドバイザ | コンセプトを解析・評価し、開発プロセスの早い段階において選択した設計の影響を確認できます。 |
〇最新版・Moldflow2019で追加された機能
最新版であるModflow2019では、新たに3つの新機能が追加され、ソフトウェアの機能拡張、解析精度の向上、セットアップ時間のスピードアップが実現しています。
冷媒流解析 | ポンプから金型までの冷媒流の経路全体を分析して、ホースの長さと冷却管の効果を見極められます。 |
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共有ビュー | クラウド接続デバイスを使用して、簡単に解析結果の確認、コメント、設計の推奨事項の提供を行うことで、容易にコラボレーションを実現します。 |
Fusion360によるCADの修復 | Fusion360により、パーツのジオメトリの修復や単純化が容易になります。 |
〇価格比較
Moldflowは、サブスクリプション方式(機関体でソフトの利用を契約する方法)で配信されています。
1年間の使用価格は、Moldflow Adviser Premiumが337,000円(税別)、Moldflow Adviser Ultimateが1,684,000円(税別)となっています。
導入事例
・小松開発工業株式会社
自動車産業を中心に、ものづくりの幅広い分野で技術サポートを提供する小松開発工業株式会社。
Moldflowにより、樹脂部品の試作検討段階で発生した不具合を可視化し、さらにその対応策をも可視化して提案するという手法を生み出しました。
・サトーパーツ株式会社 関東工場
Moldflowの導入により、従来では実際に成型するまで分からなかった樹脂成型時の引けの変化や、これに伴う新型起工による新たなゲート市やウェルドライン、エアトラップなどを事前に可視化することが可能になりました。
Moldflowによって試作回数を減らしながら製造上の欠陥を低減させることに成功した事例です。
動作環境
Windowsプラットフォームで実行する場合のハードウェアとソフトウェアの最小動作環境と推奨動作環境は以下の通りです。
システムコンポーネント | 推奨 |
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CPU速度 | 2GHz以上 |
メインメモリ(RAM) | 8GB以上 |
仮想メモリ/スワップ容量 | 4GB以上 |
ディスク容量 | 12GB以上のディスク空き容量(インストールには最小2GBのディスク空き容量) |
WEBブラウザ | Internet Explorer 9.0以降 |
プラスチック製品生産の解析を向上・迅速化させるMoldflow
ここまでMoldflowについてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
プラスチック製品を作る設計から量産までの各フェーズの課題解決に役立つソフトウェアであるということがお分かりいただけたと思います。
機能や価格を比較しながら、現場の課題に合ったMoldflow製品を導入してみてはいかがでしょうか。