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Fusion360_CAMの特徴の一つでもある、負荷制御とは?

負荷制御(Adaptive Clearing)とは?

一般的には、工具負荷が一定になるようなパスだと言われていますね。
じゃあ、工具負荷が一定とは、どんなパスなのか?
ちょっと、Fusion360で簡単なポケット形状を掘り込むパスを出してみます

ポケットと負荷制御
左が「2Dポケット」。右が「負荷制御」です
ぜんぜん、違いますね~
負荷制御は加工時間の短縮ができるとの情報もありますが、本当でしょうか?
このパスを見た限りでは、2Dポケットに比べるとかなり複雑で
逆に、時間がかかるように思ってしまいます
実は、どんな場合でも効率よくなるか・・と言われるとそうでもないんです
やっぱり、得意不得意があるので、ある程度特徴をつかんでおく必要があります

HPM(High Performance Machining)と
HSM(High speed machining)

「2Dポケット」のパスは、非常にシンプルで経路も短いです
一見、効率的な加工方法に見えなくはないですね
それに対して「負荷制御」は複雑ですねぇ~
実は、こんな複雑な削り方なのに、これが高スピードで加工ができる細工です
効率を取るか?スピードを取るか?
実際の加工時間は、時間あたりの切り屑の排出量できまります。
ゆっくりだけど、一度に沢山削り取るのか(HPM)、少しずつだけど、速く削るのか?(HSM)
どっちの削り方がいいのでしょうか?
これは、加工形状でも違ってきますし、加工機械にも左右されます
力のない機械に、一度に沢山削れ!といっても限界がありますし
スピードの出ない機械に、速く削れと言うのも無理がありますね~
やぱり、それぞれの特徴をつかむ事が重要です
実は、旧式の機械で「負荷制御」で削っても効果は出にくい場合も多いです

高硬度
これは、ある工具メーカーの切削条件表です
「側面」と「溝」という項目があります。
一番下の図を見ると、「1.5D」とか「0.03D」とかの指示があります
「1.5D」とは、工具径の1.5倍と言う意味です。
一番左の例では、深さ方向に切り込みは、工具径×1.5 で横方向の切り込みは工具径×0.03の意味です
その「側面」と「溝」の条件に対して、「回転数」と「送り速度」が設定されています
ざっと眺めるとわかりますが、「側面」のほうが2倍近く速いですね
要するに、比較的深い形状で、側面の切り込み量が保障されれば、「側面」条件が使えると言う訳です
負荷制御の場合、この側面の切り込み量が保障されているので、「側面条件」が使えます
「2Dポケット」の場合には、側面切り込み量は一定になりません。
したがって「溝」条件を選択せざるを得ません
浅い形状の場合には、「2Dポケット」のほうが効率がいい場合もありますが
Fusion360の場合、どちらでも選択可能なので、使い分けも可能です

材質についても、少し考えてみます
実は、会社では結構高硬度な材料を削ります
樹脂など柔らかい素材の場合、「ハイス」という素材の工具を使用しますが
その工具と同じぐらいの硬さです。
このように硬い材料を削る場合、側面切削がベストです。
溝加工では、工具すぐにダメになってしまいます

深い形状や高硬度の材質を削る場合には、「負荷制御」は非常に威力を発揮します

エンドミル

切削加工に使用する、エンドミルを見てみましょう

DSC00318
DSC00319

右に行くほど、工具軸に対して螺旋の角度がきつく、芯は太くなっているのがわかります
溝切削の場合は、切り屑の排出をよくしたいので、螺旋をゆるくします
余談ですが、ステンレスなど粘っこい材料を横の切り込みを多くして、螺旋のきつい工具を使用すると、
切り屑に引張られて工具が抜けてくることがあります。
側面切削は、切り屑は小さいかわりに、加工速度を上げたいので、刃数を多くします
基本的に刃数と速度は比例します
「負荷制御」には、右側の多刃の工具で、一気に深く切り込んだ加工が適していると思われます
ただし、「負荷制御」は横の切り込み量を保証したパスを出してくれますから
半溝的な加工でも、無駄のない安定した加工ができるはずです

使い方や加工効率はまだまだ、未知数な削り方だと思ってますが
このパスが出せるだけで、これからの削り方も非常に楽しみです

トロコイドと負荷制御

負荷制御が話題になる前、トロコイド加工という方法が注目されていました
横方向の切込みを一定にするという事では、負荷制御と似たようなパスですが
トロコイドの進化系が負荷制御ともいえます
トロコイドは横方向の切り込みを一定にする方法ですが
負荷制御はそれだけはありません、実際に切削している時に
素材と接触している角度(エンゲージ角・切削関与角)も一定にするようです

エンゲージ角
この図のように、同じ切込み量でも、削る箇所によって、エンゲージ角は変わってきます。
「負荷制御」はこのエンゲージ角度も一定にするらしいです。すごいですねぇ~。
このへんの情報は、「antec」さんが詳しく公開されています。
5年ほど前の記事ですが、今でも勉強になります
もし興味があれば、覗いてみてください
http://tma6c.seesaa.net/article/322236722.html
http://tma6c.seesaa.net/article/378360563.html

さらに負荷制御は横の切り込み量だけでなく、工具のねじれ角度や、深さ方向の突っ込み量にも
影響があるようですね。
切り込み深さを適正にする事でさらに、加工は安定し、工具寿命にも良い影響でできそうです
http://tma6c.seesaa.net/article/303525472.html
このあたりの理論値で加工条件を決定できるのは、「負荷制御」によって加工負荷が保障されるからです
今までの負荷が安定しないパスでは、いつ負荷が大きくなるかわからないので、
最初の加工時には、加工条件を低く設定し、様子を見ながら良い条件を探すという作業が必要でした
したがって、条件設定はある程度経験が必要な作業でもありました。

安定した加工

加工効率は、形状や機械能力でも影響しますが、ソフト的に安定性を検証してみます
私が使っている、TRYCUTというシミュレーションには、工具が移動する事で加工した
切り屑排出量をグラフ化できるおまけがついています
切り屑の排出が一定なほうが安定した加工といえます

1003
1004
この図形で、上が「2Dポケット」で出力したパスのグラフ
下が「負荷制御」で出力したパスのグラフ
切り屑排出量が「負荷制御」のほうが多いのは、工具メーカーのカタログ値によって、削り深さと横の切り込みを設定した結果です
負荷の安定度は一目瞭然ですね!
「2Dポケット」では、一気に仕事したかと思うと、何もしなかったりが連続状態になってます
「負荷制御」は常に、一定の仕事量ですね
このように安定しているという事は、工具にもやさしく、工具寿命は延びると推測できますし
加工条件の設定も、経験などに頼らずに、工具カタログを参考に簡単に設定できそうですね。

荒加工には、負荷制御加工

加工形状や加工機の違いにより、「負荷制御」の効果は違ってきますが
よほど、浅い切り込みでない限り、荒加工は「負荷制御」で問題ないと思っています
あまり効果がでない状況であっても、負荷の安定は工具にはやさしいですし
常に切削量を一定にた、無駄のないパスを出してくれます
「2Dポケット」などの場合、領域や輪郭の設定によっては
無駄なパスが出てしまう場合も多いです
とりあえず、荒加工は「負荷制御」!でかなりの加工はカバーできると思います

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