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ゼロからのスケートボード制作体験記(Fusion 360、切削機)

自分でデザインをしてみたい! ものづくりをしてみたい! 絵を描いている人であれば一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか?
2次元のイラストで立体的なものを作りたい、ものづくりの幅を広げたいという人のために、3D CADソフトFusion 360や、専門の工作機械を使ったものづくりの方法をご紹介します。

アメヒロさん

今回のものづくり挑戦者:アメヒロさん

イラストレーター。ヴィレッジヴァンガードとコラボ商品を開発したり、4コマ漫画の連載をしたりなど幅広く活躍中。
アメヒロさんが以前から興味があったというスケートボード作りに挑戦していただきます。
スケボーデザインから板の削り出し、デッキテープやトラックの取り付けなど、ものづくりの工程をイラストレーターであるアメヒロさんが体験します。

1. スケボーのデザインをする

これまでに、オリジナルデザインTシャツや手のひらサイズのラバーキーホルダーなどは制作したことがあるというアメヒロさんですが、スケボーのような大きなものの制作は初めてです。今回は、一般的なスケボーの板のサイズ、幅200mm~250mm×長さ700mmでデザインをします。

アメヒロさん

【アメヒロさんのスケボー制作への意気込み】

あまりスケボー経験がないのですが、このお話をいただいたとき、立体物を一から作る工程にとても興味があったので嬉しかったです。
スケボーのデザインは、以下の2点を意識して制作しました。

  • 従来のスケボーの型にとらわれず自由なアウトラインにする。
  • 凹凸にしたときに引き立つデザインにする。

どのくらいイメージに近づけるか楽しみです。

「せっかくなので、立体的に見えるようにしたい」というアメヒロさん。オリジナルのキャラクター、ウサギとカメが飛び出しているようなデザインになりました。
「BEST FRIEND」のウサギとカメ。”FRIEND”の”F”の文字が入っています。

スケボーのAIデータ

2. Fusion 360で3Dデータを作成する

今回は、個人的な趣味の範囲であれば無料で使える3D CADソフトFusion 360でスケボーの板の削り出すための3Dデータを作ります。
Fusion 360はIllustratorなどのツールとも互換性があり、Fusion 360の「押し出し」機能は比較的簡単な立体化の方法で、この機能を使うと平面の絵に厚みを持たせることができます。
アメヒロさん自身が3D CADを使ったことがないということで、株式会社ミリメーター・諏訪部梓さんに3Dデータ制作にご協力いただきました。

諏訪部梓氏

技術協力:諏訪部梓氏 株式会社ミリメーター

市ヶ谷のシューズカフェで、足を3D計測し、3Dプリンターで1人1人の足にあうヒール靴を木型から作るフルオーダーメイドサービスを提供している。Fusion360をはじめとした、さまざまな3D CAD/CAMソフトを使いこなし、看板や企業ロゴの3Dプリントサービスを行う「Last Once」の運営も行う。

―どうやって2Dデータを3D化するのでしょうか?

諏訪部:今回はベースとなるデザインデータがjpg画像でしたので、Adobe Illustratorの機能を使って、自動でスケボーの輪郭(アウトラインデータ)の作成を行いました。
それをSVG形式※で書き出し、Fusion 360のスケッチに取り込んで「押し出し」機能で厚みを出して立体化しました。
 ※SVGとは、ベクトル形式によって画像を描画する方式。高品質のグラフィックでありながらファイルサイズを小さくできる。画像品質を維持したまま拡大縮小を行うことができる。

―普段は2次元のイラストしか描かない3D CAD初心者でも、簡単なものだったら作れるのでしょうか?

諏訪部:3Dといっても基本は2Dの平面に線を描いて形を作り、それを押し出したり、くぼみをつけたりして3Dデータを作っていきます。なので、2Dで図形を描くことができれば、3Dデータの作成は可能です。
Adobe Illustratorを使わなくても、3Dデータのベースとなる2Dの絵を直接Fusion 360上で描くことができます。

―スケボーの板の3Dデータを作るとき難しかったところ、注意すべきポイントはなんでしょうか?

諏訪部:イラストレーターで作成したアウトライン(線)ですが、自動生成には限界があります。線と線が上手く繋がっていなくて、離れているところを見つけて線を繋いでいく作業が大変でした。
元のデータの線が綺麗に繋がっていると、後の「押し出し」などの作業が楽になると思います。

スケボーの3DデータGIFアニメ

スケボーの3Dデータ完成

Fusion 360でスケボーの3Dデータが完成しました

3. 3Dデータを切削機に取り込み、スケボーの板を削り出す

赤坂・六本木にあるTechShop Tokyoでスケボーの板を削り出します。スタッフの永島さんはスケボー愛好者ということで、今回のスケボー作りにご協力いただいています。
設定方法やドリルの種類について、永島さんに教えてもらいます。

永島さん

TechShop Tokyoドリームコンサルタント:永島さん

TechShop Tokyoは、敷地面積約1,200m²のワークスペースをもつ会員制DIY工房。工作機械は金属加工、溶接、木工、3Dプリンターなどの樹脂加工だけでなく、電気工作やテキスタイルなどの約50種類の工作機械を取り揃えている。

オリジナルスケートボード制作

本番の削り出しをする前に試作品を見せてもらいながら、レクチャーを受けるアメヒロさん

オリジナルスケートボード制作

TechShopでは切削機がある木工室で作業をするとき、目を守るためのゴーグル着用が義務付けられています

オリジナルスケートボード制作

ドリルで切削。ドリルの種類を教えてもらっています

オリジナルスケートボード制作

ドリルの取り付け方を教えてもらっています

木工用の機械にはいろいろな種類があり、複雑な削り出しができる機種もあります。スケボーを削りだす切削機とは別の機械ですが、木工用CNCターニングマシンという木材を立体的に掘ったり、渦巻状に削り出したりすることが可能な機械もあります。

オリジナルスケートボード制作

こんな複雑な形も、木工用CNCターニングマシンで削り出すことが可能です

4. トラックを取り付ける穴を開け、デッキテープを貼る

オリジナルスケートボード制作

穴を開けるところを決めます。横幅を飛び出すデザインにしたため、どの位置を中心にして穴を開けたらよいのか悩みます

オリジナルスケートボード制作

ドリルで穴を開けます。穴開けの作業は完了予定時間を大幅に過ぎてしまい、40分程掛かりました

穴を開けたら、足の滑り止めの役割を果たすデッキテープを貼ります

オリジナルスケートボード制作

デッキテープ裏面はシールを剥がすと糊状になっており、接着剤なしでそのままボードに貼り付けられます

オリジナルスケートボード制作

スケボーの型に沿ってヤスリで跡を付け、カッターナイフで余分な部分を切っていきます。
はみ出した部分は、余ったデッキテープを貼り付けます

オリジナルスケートボード制作

デッキテープを貼ったら、一気にスケボーらしくなりました

永島さん自身、趣味でスケボーをやっているそうですが、ゼロからのスケボー作りをサポートするのは初めてとのこと。
スケボーは技を競うだけでなく、かっこいいオシャレなボードを持っているかということも一目置かれる基準になるんだとか。奥深いスポーツなんですね。

5. 塗装する、ニスを塗る

いよいよ塗装の作業に入ります。最近はデジタルで絵を描くことがほとんどで、手書きで作業することはめっきり減っているというアメヒロさん。久しぶりに絵筆をとってのアナログ作業、クリエイター魂に火がつきます。

オリジナルスケートボード制作

まずは、板一面を真っ白に塗りつぶします

オリジナルスケートボード制作

黙々と塗装作業に没頭するアメヒロさんは、とっても真剣な面持ち。ちょっと声を掛けにくい雰囲気です

デザイン画に合わせて色を塗っていきます。

オリジナルスケートボード制作

だんだん仕上がっていきます

オリジナルスケートボード制作

塗装作業完了。2時間程度で終わる予定でしたが、6時間程度掛かりました

オリジナルスケートボード制作

塗料が乾いてから、ニスを塗っていきます

6. トラックを取り付ける

オリジナルスケートボード制作

自分でデザインしたスケボーが完成するまで、あともう少し!

ニスが乾いたら、いよいよ最後の工程、トラックの取り付け作業。
トラックとは、スケボーの板とウィール(タイヤ)をつなげる金具の部分です。

オリジナルスケートボード制作

オリジナルスケートボード制作

ネジでトラックを固定します

完成!!

オリジナルスケートボード制作

オリジナルスケートボード制作

アメヒロさん

【アメヒロさんのスケボー制作の感想】

近頃はデスクワークが多いので、立体物を一から手作りをすることは本当に久しぶりでした。キーホルダーやTシャツといったオリジナルグッズを作るとき、いつも専門の業者さんに制作を依頼しているのですが、手作業の手間をかけずに完成品が手元に届くので便利です。手作業も含めいくつかの工程を経て、スケボーを作り上げるのは時間がかかって大変でした。その反面、とても楽しかったです。作品にもよりいっそう愛着がわきました。

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スケボー制作に使用したのは、フィンランドバーチというしなりのある白樺の合板木材。実際に乗れます!

2Dのイラストが描ける人は、Fusion 360や切削機などを使ったものづくりに挑戦してみてくださいね。

※店内でのスケートボードは禁止です。今回は取材・撮影のために特別に許可をいただいておます。

※TechShop Tokyoで工作機械を使うには、事前にSBU(Safety and Basic Use)という必須教育を受講する必要があります。

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