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どれがCGの小物?3D技術でコスプレハロウィーンパーティー

クイズ:
3種類のコスプレをしている写真。一つだけCGで作られた小物なんです。どれでしょう?

皆さん、ハッピーハロウィーン。俳優の伊藤裕一です。
さて、今日は10月31日ですね。ハロウィーンといえば、元々海外の文化ですが、日本では、仮装やコスプレを楽しむイベントとして定着しています。お祭り好きの日本人のアレンジ力は凄まじいですね。
でも、コスプレをしたい!クオリティをアップしたい! と思っても、衣装や小道具を揃えるのはなかなか大変。
炎の剣、フランベルジェって渋谷じゃ売っていないし、闇の力を溜め込む宝玉の装飾部分が上手く作れないなどといった悩みをそこかしこで耳にします。
中学二年生の頃に憧れた、ダークヒーローになることはもうできないのでしょうか?
いいえ。
イマジネーションがあれば、大丈夫!
実は、3D技術を駆使すれば、色々な素材を使って自作の小道具を作れちゃうんだとか。

金属、アクリル、プラスチック……個人でものづくりができる時代に

僕は劇団の運営もしているのですが、一部の小道具を専門のスタッフさんに発注しています。
でも、簡単なものは、100円ショップで買ってきたり、劇団のメンバーで作ったり、どうしても予算の都合上そうせざるを得ないのですが、プロが作ったものとクオリティに差が出てしまうことが、いつも悩みどころです。
うちの劇団のメンバーも、もしかしてこの技術を覚えたら、作業が楽になっちゃうのかな?
金属やアクリルなどの素材を加工して立体物を作るのはなかなか大変ですが、3D CAD(キャド)というものを使えば、個人でのものづくりが可能なんだそうです。
3D CADと3Dプリンターをあわせて使えば、個人でも立体物を造形することができるんだとか。
なるほどなるほど……。
やっぱりよくわからないので、プロの3Dモデラーの方に小道具の自作方法を教えてもらいました。

小原 照記さん

解説:小原 照記(おばら てるき)さん
岩手県北上市「いわてデジタルエンジニア育成センター」で3D CADを中心としたデジタルものづくりのエンジニア育成に携わる。企業への3D CAD導入のサポートも行っている。

―3D CADとは何ですか?

コンピュータ上で立体物の設計ができるツールです。車や家電などの機械や建物の設計など、幅広く使われています。数十万~数百万と高価なソフトでしたが、最近は個人的な趣味の範囲で使用する場合であれば無料で使えるソフトも提供されており、個人でのものづくりがしやすい時代になってきました。

―小原さんは3D CADをどのように使っているのでしょうか?

自分の頭の中にある物、または原画や資料を元に、作りたい製品を設計するときに使います。3D CADで設計後、3Dプリンターで造形したり、削ったりして実際に物を作っています。依頼されて設計することが多いのですが、単純に自分の好きな物をコンピュータ上に作って、見て楽しんでいるときもありますね。TwitterやFacebookなどのSNSに作品をアップすると、周りからの反応があって、そこも楽しいところですね。

―使いこなすことが難しそうです……。初心者でも簡単なものだったら作れるのでしょうか?

3D CADは、2次元の丸や四角などの輪郭形状をコンピュータ上にスケッチして、それを押し出したり、回転させたりして立体化してくのが基本的な使い方です。初心者の場合、ここからチャレンジしていき、徐々に他の機能も覚えながら複雑な形状を作成していくとよいと思います。直方体や円柱、球など簡単な形状を組み合わせて作れるものも結構ありますので、それほど難しくなく作ることができますよ。

参考:
Fusion 360で可愛いロケットをつくろう!
ひみつ道具 No.003「テルえもんの鈴」
Fusion 360でカワイイUFOをつくろう!

また、現在は全国各地で3D CADの半日の体験セミナーや複数日に渡った講習会などが開催されています。講習会で基本操作を習い、それから独学で本やネットの動画をみて、じっくり勉強していけば効率よく習得できると思います。

欲しい小道具を3Dモデリングしてもらった

とはいえ、初心者の僕がいきなり3D CADを使うのは難しそう。そこで3Dモデリングの工程を教えてもらいつつ、今回は特別に、欲しい小道具を小原さんに3Dモデリングしてもらえることに!

王冠の素材デザイン画制作中

冒頭のクイズの正解はAの「王冠」でした!
仕事とはいえ、僕のへたくそな絵を皆さんにお見せするのが恥ずかしい。
十字架のところの交差感が、絵が下手な人の特徴を如実に表していますよね……。

王冠の素材王冠の素材

しかし、3Dモデラーさんとはいえ、この絵を本当に立体化できるのでしょうか?
小原さんに制作過程を見せてもらいました。

【王冠を3Dモデリングしてもらった】

① まずはデザイン画をFusion 360に挿入し、大きさと位置の調整を行う

王冠を3Dモデリングしてもらった

② その後、平らな面にスケッチを作成して回転させたり、押し出して形状を切り取ったりして形状を作成。左右対称のところはミラーコピーして制作する

王冠を3Dモデリングしてもらった

③ できあがった形状に色付けを行う

王冠を3Dモデリングしてもらった

④ 背景を設定し、レンダリング機能を使って画像の作成を行う

小原 照記さん

【ポイント】Fusion 360のレンダリングは、簡単な設定できれいな画像ができるので、非常に気に入っています。色のバリエーションも豊富で、細かな色の編集もできますし、背景の環境は画像の明暗の比が広いHDR(ハイダイナミックレンジ)ファイルを読み込むことができるので、表現の自由度が広がります。また、書き出しの際はクラウドで処理を行うため、自分のパソコンに負荷をかけないのもよいところだと思います。

板を準備して、デカールとして画像を挿入する。下絵の挿入だとレンダリングした際に消えてしまうので注意。板を準備して、デカールとして画像を挿入する。下絵の挿入だとレンダリングした際に消えてしまうので注意。

王冠の位置を調整王冠の位置を調整

シーンの設定で明るさや背景を設定シーンの設定で明るさや背景を設定

レンダリング実行レンダリング実行

●板を人の体に切り取る方法もある

板を人の体に切り取る方法

好きな写真を背景として設定できる好きな写真を背景として設定できる

あっという間に王冠が完成! 小原さんすごい!! すごすぎる!!
ちなみに制作時間はなんと15分くらいだそうです。丸1日とかかかっちゃうのかと思ったけど、予想をはるかに上回る素早さ……。

もっと細かいところをこだわるとなると、倍以上の時間がかかるんだそう。(例えば、飾りのサファイア球体ではなく、カットをいれるなどもっとこだわった形にするとか)
Fusion 360の場合、データをあとで修正することも可能。ある程度イメージしたら、初めにざっくりと形を作ってから、ドンドン完成形に近づけていく作り方でもよいのだそうです。

3Dモデリングができれば、自分の作りたいものが立体化できる

3Dモデリングのスキルがあれば、自分の手で木を削ったり、金属加工したりできなくても、好きな素材で立体物を制作できることがわかりました。
頭の中にあるアイデアが3D化するなんて、すばらしい!

ちなみにFusion 360上の 「レンダリング」という機能を使えば、仕上がりのイメージをリアルにシミュレーションできるそうです。
さらにPhotoshopでCGと写真を合成すれば、実物さながら!
そんな写真をSNSにあげてみるのもいいかも。

王子様のハロウィーンパーティー

もちろん作成した3Dモデルのデータは、3Dプリンターで出力をすることが可能。
立体になって目の前に現れるんです。
個人でもプロが使うような高機能のソフトが使えて、ものづくりができるなんて、まさに夢のようですね!

今回は、A.王子様、B. 赤い悪魔、C. ヴァンパイアのコスプレでハロウィーンパーティーしてみました。

Before Before

After After

本当に実物の王冠をかぶっているみたいな画像が作れるんですね。パッと見ではどれが実物の小道具なのか区別がつきません。

王子様のハロウィーンパーティー

脱帽。
あ、 脱いじゃダメだ。

『Fusion 360』(フュージョン・スリーシックスティ)の無償体験版ダウンロードはこちら

【王冠 Fusion 360モデリング フル動画】(小原照記さん制作)

伊藤裕一さん

伊藤裕一
俳優・モデル・MC・作家 オリオンズベルト所属。主な出演作品にCM「楽天生命保険」、映画「進撃の巨人」、「シン・ゴジラ」、ドラマEX「Doctor-X 外科医・大門未知子」、舞台「~崩壊シリーズ~九条丸家の殺人事件」・「リメンバーミー」、2.5次元舞台「戦国BASARA~関ヶ原の戦い」等がある。自身の劇団「お座敷コブラ」の主宰・脚本・演出・出演も手掛け、多才を生かし様々なジャンルで幅広く活躍中。

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