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Fabイケメンインタビュー Vol.4 伊藤理

デジファブ業界のイケメンを、ライター たがはらが発見する「Fabイケメンインタビュー」。
デジタルファブリケーションの業界では、ソフトウェア、ハードウェア、デザインなどの技術者がチームを組み、数日間でアイデアを出し合い、プロトタイプを完成させるために集中的に作業をする「ハッカソン」という開発イベントが行われます。
名古屋テレビ放送株式会社、通称メ~テレでプロデューサーとして勤務されていた伊藤理さんは、そのハッカソンを「メイキン クエスト」として、東海で初めてテレビ番組として放映することに成功しました。
ライター たがはらもファブ女チーム(黄色チーム)として出演させていただいた中で、番組企画者と出演者で語る、あの番組の裏話をお届けします!
※「メイキン クエスト」とは… 1泊2日・30時間ぶっとおしの発明コンテスト。最新技術と地元の伝統工芸品を組み合わせ、未知のハイテクおみやげを作り出すというテーマで、8名の芸能人と、40人のものづくりのスペシャリストで挑むハッカソン番組です。

【プロフィール】
伊藤理(36歳) 名古屋テレビネクスト株式会社勤務(名古屋テレビ放送株式会社から出向中)
身長 172cm 体重 75kg 血液型 A型 既婚 長男3歳
名古屋市出身 目黒区在住
好きな言葉
やる気は人生の宝
仕事のモットー 人は何かを創ることで何者かになれる

伊藤理さん

伊藤理さん

全国からものづくりの猛者が集まる、伝説のハッカソン番組「メイキン クエスト」の発起人

―伊藤さんは、3D Fabのインタビュイーとしては異色の、番組プロデューサーです!なかなか馴染みがない職業ですので、これまでのご経歴や今のお仕事について、教えていただけますか?

はい、2017年8月まで、名古屋テレビ放送株式会社(通称メ~テレ)で勤務していまして、バラエティ番組の「ザキとロバ」のチーフディレクターをしていました。
話題に出ているメイキン クエストは、メ~テレ開局55周年記念特番の社内コンペに企画が採用され、2017年6月、東海地区としては初のハッカソン番組である、「メイキン クエスト」の制作を手掛けることとなりました。

メイキン クエスト伊藤さんが手掛けた、東海地区初のハッカソン番組「メイキン クエスト」。

―まず、ハッカソンそのものの説明が難しい中で、それを90分の枠で番組にするというのは本当に大変だったと思います。どうしてこのテーマで、番組を作ろうと思われたのでしょうか?

もともとは僕自身が自分の空想を形にするのが大好きでして、子供の頃は工作とか、大学では映像を作っていました。ある日、3Dプリンターというものが家電量販店で売られるということを聞いて、思ったことが空間に出現させられるということができると思うと、すごい・・・本当にすごいなと思いまして!田中浩也先生の『FabLife』(オライリージャパン、2012年)や、クリス・アンダーソンさんの『MAKERS』(NHK出版、2012年)などの書籍を読んで、きっと新しい時代がやってくるというわくわく感を感じ、なんとしても3Dプリンターを手に入れたいと思いました。量販店で、パソコンを買いに行ったお金で3Dプリンターを衝動買いしてしまって・・・(笑)。嫁に怒られましたね。でも、これをきっかけに、3Dプリンターを使って番組を作ってみたいと思うようになりました。

―そういえば、伊藤さんの作られた番組の中には、他にもデジタルファブリケーションのテーマのものがありますね。

いくつか過去に企画したものがあります。
最初は、3Dプリンターだけで無人島から脱出するという企画でした。これは、いろんな専門家にお話を聞きに行ったりしましたけれども、無人島の電力の問題とか、3Dプリンターを使って脱出する方法論が確立しないとか、物理的な制約が多くて実現しませんでした。
その次は、『MADE IN FICTION』という番組を作りました。工学部出身の元CanCamモデルの梨衣名ちゃんが、自分の空想を現実にするべく、3日間のものづくり合宿に挑む番組です。

これが実は、メイキン クエストの前身となっている番組なんです。
これまで扱ったことがないテーマを番組として取り上げ、自分の理想が目の前に具現化できるということに驚きを感じてもらえたということが評価されて、手応えを感じました。

―そこから、メ~テレ開局55周年記念番組への応募に繋がったんですね。社内公募のプレゼンは、どんな様子だったのでしょうか?

テーマが、「もっと!地元応援団」だったので、他の企画としては全国の小中学校対抗の紙相撲大会とか、名古屋グルメをテーマに全世界のシェフが料理で戦うといった企画がありました。
そういった企画がある中で、「新しいものづくりを広めることで、東海地方のものづくりをさらに成長させていくきっかけになります」と地方の成長のお話をプレゼンして、選んでもらうに至りました。
もともと、『MADE IN FICTION』という番組をきっかけに得た人脈があって、メイカー系の名刺は600~700枚ぐらいあったのですが、それをプレゼン資料の最後にズラっと並べて、
「これだけのブレーンがいるので、絶対に成功します!」と言いました(笑)。

―すごい!業界を牛耳っていますね(笑)。メイキン クエストは、メイカーの文化と、クエストというコンセプトを掛け合わせたことが斬新でした。この、ハッカソン×クエストのテーマが出た経緯は?

やっぱり、普通にハッカソンだけを見せても、興味のない人はつまらなく思うだろうし、そもそも見ようと思ってくれないと考えて、どうエンターテイメントにするか悩みました。
そこで自分がなぜハッカソンにわくわくするのかを考えたのですが、ハッカソンって、ドラゴンクエストみたいに仲間を集めてそれぞれの特技を発揮するような、そんな要素があって・・・。
自分だったらチームメイトに誰を加えようかな、プログラミングはあいつだな、デザイナーはあの子を入れたらみんながモチベーション上がるかな、とか、そういったチームを作ることが楽しいと思いました。
日頃脚光を浴びない人でも、どこかで特技を活かして輝けるシーンが出てくるはずで、そういう場面を描きたくてクエスト風というテーマを思いつきました。
あとは、僕がメイカームーブメントでわくわくする要素は、これまでフィクションだったことが現実になるというところなので、空想と現実の壁を取り払うという世界観を表現したかったです。

―メイキン クエストの現場は、セットや演出が本当に異空間で、とてもわくわくしました。第二弾の開催も構想中とのことだったので、ここからは、メイキン クエストの裏話について是非お聞かせください!

1泊2日、30時間ぶっとおしのハードロケ!メイキン クエストの裏話。

―さて、6月に放送されたメイキン クエストですが、みんなで大きなフリップボードに様々なアイデアを出し合い、その後製作に入りました。ものが喋るとか、空を飛ぶとか、斬新なアイデアがたくさん出てきましたが、その中で伊藤さんが一番「これ、どうやってやるの!?」って思ったアイデアはありましたか。

う~ん・・・。寒天を使って、スマートフォンの映像をホログラムにするというアイデアでしょうか。見てみないとイメージができなくて。
あとは、ファブ女さんでやっていた、「デキ女トート」も、できるのかな!?って思っていました。

ファブ女のアイデアファブ女のアイデア。プログラマーが少ないのに、果たしてできるのか…!?

なぜか3Dスキャンが始まるバッグ作りのはずなのに、なぜか3Dスキャンが始まる弊チーム。

―実は収録前に何度かチームで集まって、アイデア出し合って試作品を作っていたんですけど、デキ女トートとは全然違うものを作っていたんです(笑)。だから、時間無くて大変でした。でもアイデアは突拍子もないように見えると思うんですが、自分たちの中ではどうやって作ったらいいか、ある程度道筋はできているんですよね。それを、わかりやすくするテレビのお仕事って、すごいなぁと思いました。

そうそう、視聴者が見たら、何をしているのか全然わからないものづくりのポイントを、面白さも交えて解説してくれる狙いでタレントさんや芸人さんに、チームにひとりずつ入ってもらいました。
「これ、どうやんねん」とか、「今から何やるの?」みたいな質問を言ってくれる人がいることによって、何をやっているかわかるようにしたかったです。
梨衣名ちゃんや、池澤あやかさんは、二人ともものづくりが得意なので、なかなかそういう質問が出てこないので尺がギュッと縮んでしまったんですけど、代わりに、完成物のクオリティが高かったのが面白いポイントでしたね。

―芸能人チームは、女性陣のほうがものづくりが得意なところも独特でしたね(笑)。今回、順位に関係なく、MVPがいるとしたらどなたでしょうか?

TKO 木本さんですかね。(紫チーム)
木本さんは、自分の役割を理解してくださっていました。8チームで行うハッカソンだったのですが、それぞれのチームでバラバラに作るので、時間軸もバラバラになって全体のストーリー性がなく、分かりにくい構造になりそうな収録でした。
それを防ぐためには、他のチームに対してちょっかいを出すとか、そういった工夫が必要なんです。

―!来ました!そういえば、うちのチームにも、アイデアソンのカンニングが(笑)。実際、私たちの知らないところで、芸人さんたちが自発的に集まり、「どうしたらもっと盛り上げられるか」という会議をしていたそうですね。

はい!びっくりしましたね。顔合わせもそんなにきちんとしていなかったのに、その場で番組をよくするための会議をぱっとやってくださって、そのリーダーとしての役割を木本さんが担ってくださったのが良かったです。

敵情視察にやってきた吉木さんくっきーさんの元へ、敵情視察にやってきた吉木さん。よりにもよって、トラブル中に…。

―それでは、チームのMVPはいますか?

難しいですね・・・。実は、ファブ女さんのチームは、すごく心配していたチームだったんです。ハッカソンをやるにあたって、プログラマーがいないって圧倒的に不利なんですよね。
でも、逆にファブ女チームに春香クリスティーンさんをアサインすることによって、初心者の女の子たちが同じ目線で意見を言い合えるチームワークができるんじゃないかなという期待をしていました。
芸人さんのチームでは、野生爆弾 くっきーさんのチーム(赤チーム)が良かったですね。くっきーさんの面白さって、真面目な人に対してのイジリとかツッコミにあると思っていたので、ガッチガチのエンジニアチームに入れたいなって。
メイキン クエストの収録の1ヶ月ほど前に、選抜チームへのリハーサルとして、アイデアソンをやって各チームの性格を見ていたのですが、意外と社会人チームよりも、名城大学の学生チームのほうが真面目な印象を受けたんですよ。
よく考えれば、社会人のメイカーって、どちらかというと尖ったおじさんの層が厚いですしね。そういう経緯で、名城大学チームに入れたら、撮れ高良かったです(笑)。

―あのチームのシーン、すごくおもしろかったです!でも、他にも未公開シーンで面白いところはいっぱいありましたよね。伊藤さんが本当は公開したかったシーンはありますか?

一番は、春香クリスティーンさんの涙に至るドラマですね。

―わ~!!あれか~!!実はファブ女チームは、プレゼンが終わったあと悔しくて全員でボロボロ泣いちゃったんです。絶対使われるだろうなって覚悟していたので、オンエアみてホッとしました(笑)。でも、ああいったドラマ性があるといいんですね!

泣いていたチームはファブ女チームだけではなかったし、各チームそれぞれにドラマがあったんですけど、泣く泣くカットしました(笑)。
きっとこの番組は、自分自身が出演するのが一番楽しいと思いますよ!僕も出たいぐらいですもん。

―伊藤さんがもしどこかのチームに入るとしたら、どのチームに入りたいですか?

作業がはかどらなくて一番大変そうだった、Beyond salon(青チーム)ですね。ファブ女チームと同じで、あそこもプログラマーが少なくて、出演が決まってから周りの人に協力を得て特訓したチームだったみたいなんです。
もともと、アイデアソンで発表していたテーマとは全然別のプロダクトになりましたけど、そこに入っていたらまた新たに違うアイデアになりそうだなって思いました。

青チームのトラブル青チームのワンシーン。何やら、トラブルが…?

―そんなメイキン クエスト、好評を得たこともあって、第二回の開催を構想中とのことですが、次の出演を狙われるみなさんに向けて、今回の良かったポイント、改善したいポイントをお願いいたします。

良かった点としては、出場した方の中にお子さんがいらっしゃる方がいて、子供さんに「パパって、かっこいい仕事してるんだね。」と言われたというエピソードを聞いたのが嬉しかったです。
自分のお父さんじゃなくても、兄弟やおじいちゃん、おじさん、女性のエンジニアの方でも、だれでもヒーローになれるような番組を次も作っていきたいと思います。
改善したいポイントとしては、番組に対して一番多かった意見なんですけど、やっぱりそれぞれのチームのプロセスをもっと深堀りして知りたかったという声が多かったので、もう少しエントリーを絞っていくことも考えています。
予選みたいな形でチームの方向性を見て、じっくり決めていきたいなと思いました。今回のチームでも、こんなに面白いチームはぜひ出したい、というところもたくさんあったので、絞ること自体本当に悩ましいのですが・・・。

「真面目」「ひたむき」「愛され力」可愛い後輩との二人三脚

そんな伊藤さんが、「番組を作る上で、すごく助けていただいた人」と尊敬するのは、メ~テレで様々な番組を手掛けられ、メイキン クエストでもプロデューサーの一人として名を連ねている、太田雅人さん。

太田雅人さん

―伊藤さんとの最初の出会いは、どんな出会いでしたか?

出会いは、私が東京制作部に所属し、彼が新入社員で東京支社業務部に配属された時でした。
とてもまじめな雰囲気で、優等生タイプに見えました。彼が制作希望だったことと、同じ大学出身ということで、彼のほうから、積極的に元気よく挨拶をしてきたり、制作に関しての質問をしてきたのを、とても覚えています。
新入社員のころから、番組作り、ものづくりにとても意欲的でした。

―伊藤さんの仕事ぶりと、人間性について教えてください。

彼の仕事ぶりは、まさに「情熱の塊」です。
いい作品を作る上での、労苦や手間などは一切気にせず、ただ、ひたむきに制作する姿は、とてもたくましいです。
また、「既存のカタチ」に拘らず、常に「新しいナニカ」を捜し求めている姿は、クリエイターの鏡だと思います。
また、彼の最大の強みは「人間力」です。
タレントから、スタッフ、取材先等々、どんな人にも愛され、信頼を勝ち取る、その人間力は、たくましいを通り越し、
憧れます。実際に、番組で一緒になった、お笑い芸人のロバートさんやザキヤマさんにも、最大限の愛をこめて「おさむちゃん」というキャラクターで、愛されていました。
彼は、メ~テレの大いなる財産であり、これからも、誰も見たことのない扉を、こじ開け続けていってほしいです。

伊藤さんMakerFaire2017にて、メイキン クエストの展示ブースに立つ伊藤さん

全く異分野からデジタルファブリケーション業界を知って、持ち前のフットワークで次々と人脈を手に入れ、テレビ業界とのコラボレーションに成功した伊藤さん。
優しい物腰でありながら目をキラキラさせて業界を盛り上げたいと語るお姿はとても印象的でした。

メイキン クエスト第二弾の開催を期待しています!
今回のメイキン クエストの模様は、GYAO!で期間限定無料で見られるので、是非皆さん、お見逃しなく。
https://gyao.yahoo.co.jp/player/01072/v00011/v0000000000000000131/
(配信期間:2017年6月27日~2018年3月31日)

たがはらさん.png

たがはら(ライター)
印刷会社でデジタルファブリケーションに関する新規事業立ち上げを担当。同時にデジタルファブリケーション業界を盛り上げるための有志チーム「ファブ女」を結成し、衣食住×最先端技術をテーマに、真似しやすいデジタルファブリケーションの在り方を啓発している。名古屋テレビ放送ハッカソン「メイキンクエスト」出演他、様々な展示会・ワークショップを実施。

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