結婚式やパーティで活躍するフォトプロップス。今回は、BASEやCreemaなどでオリジナルグッズを販売し、猫やフクロウなどの動物をモチーフにした可愛らしい作品で人気を集めるne22co(ねこ)さんの人気アニマル作品を、Fusion 360を使って3D化してみました!
結婚式やパーティを盛り上げる写真の小道具、フォトプロップス
フォトプロップスとは、写真の小道具という意味で、吹き出しやメガネ、猫耳などのモチーフを付けた棒のことです。海外では昔からよく使われていましたが、日本でも最近は結婚式やパーティなどで見かけるようになりました。このフォトプロップス作りに挑戦してもらったのが、イラストレーターとして活躍しているne22coさん。ne22coさんは、BASEやCreemaなどで猫やフクロウなどの動物をモチーフにしたTシャツやトートバッグなどのオリジナルグッズを販売していますが、その作品の可愛さでSNSでも人気を集めています。
イラストレーターのne22coさん。BASEやCreemaなどで猫やフクロウなどの動物をモチーフにしたTシャツやトートバッグなどを販売している
動物のイラストからパーツを3D化する
今回は、ne22coさんが描いた猫や花のイラストを元に3D化を行い、2種類の方法でフォトプロップスを作ってみました。
ne22coさんが描いた手書きのイラスト。今回はここから、鼻から口元、両耳を3D化
ne22coさんがFusion 360を使うのは初めてなので、講師として甲斐貴大氏をお呼びしました。甲斐氏は、オリジナルの家具などを製作されている方で、Fusion 360やRhinocerosの達人です。
技術サポートをしてくださった甲斐貴大氏
今回、製作のために訪れた場所は、会員制のシェア工房「Makers’ Base」です。Makers’ Baseは地下1階から5階までのフロアがありますが、地下1階は木工、1階はギャラリーや受付、カフェ、2階はデジタル加工、3階は金工、4階はテキスタイル・縫製、5階は陶芸というように、階によってテーマが異なっています。いわゆるFabLabなどに比べて、より幅広い分野のモノ作りをサポートするスペースです。Makers’ Baseでは、さまざまなワークショップが行われており、リングやバングル、ピアスといったアクセサリーからスツールやお皿などのインテリアまで、世界に一つしかないオリジナル作品を作ることができます。
Makers’ Baseの2階は、デジタル加工がテーマで、レーザーカッターやCNC切削機などがずらりと並んでいる
アクリルをレーザーカッターでカットするためのデータ作り
今回は、アクリルと木材という2種類の材料を使ってフォトプロップスを作ることにしました。そこでまず、ne22coさんにアクリルをレーザーカッターでカットするためのデータ作りをやってもらいました。
レーザーカッターで板を切断する場合、データは2Dの輪郭線があればOKです。そこで、Fusion 360にne22coさんが描いた花のイラストを取り込み、その輪郭を「スプライン」機能を使ってなぞっていきます。
Fusion 360を初めて触るというne22coさんだが、甲斐氏のサポートを受け、すぐに自由に操作できるようになっていた
ne22coさんが描いた花のイラストをFusion 360に取り込み、「スプライン」機能からその輪郭を使ってなぞっていく
レーザーカッターを使ってアクリル板を切り抜く
輪郭のデータができたら、レーザーカッターでアクリル板を切り抜きます。今回はアクリル板を2枚用意し、2色で花を作ることにしました。レーザーカッターに素材のアクリル板をセットして、PCにデータを読み込ませて、カットを開始します。これくらいの大きさなら、わずか数分でカットが終了します。あとは花のパーツを外して、パーツの穴に別のパーツをはめ込んでいくだけです。
素材となるアクリル板。Makers’ Baseにはさまざまな色、柄のアクリル板が用意されている
レーザーカッター「Trotec Speedy 400」に素材のアクリル板をセット
レーザーカッターを制御するPCにデータを読み込ませ、設定を行う
切り抜きが完了したところ。2色のアクリル板を使って花を作る
切り抜いたアクリル板に別のアクリル板を切り抜いたものをはめ込んでいく
猫のイラストを元に鼻や耳の3Dデータを作る
次は、木材を使って立体的なフォトプロップス作りに挑戦します。こちらも、まずは下絵となるイラストをFusion 360に読み込ませて、輪郭をなぞっていきます。ne22coさんも大分慣れてきたようで、かなりのスピードで作業を行っていました。輪郭をなぞったら、Fusion 360の「押し出し」という機能を使って、輪郭を持ち上げて立体化します。次に、立体化された鼻のエッジを「フィレット」機能を使って丸くします。
猫の下絵を元に鼻の部分の輪郭をなぞっていく
押し出し機能を使って、輪郭を持ち上げて立体化する
「フィレット」機能を使って、エッジに丸みを出していく
完成したモデリングデータ
CNC切削機を使って木材を削り出す
3Dデータができたら、CNC切削機を使って、木材を削り出します。今回は、ローランドの「MDX-40A」というCNC切削機を使いました。CNC切削機での削り出しにはかなりの時間がかかります。削り出しが完了したら、不要部分をバンドソーでカットし、ベルトサンダーを使って表面を磨き、形を整えます。さらに、サンドペーパーで磨いたのち、ボール盤を使って棒を差し込むための穴をあけます。最後に色を塗って、棒を差し込んだら完成です。
CNC切削機を制御するPCに3Dデータを読み込ませる
CNC切削機で木材を削り出しているところ
削り出しが完了したところ。今回は猫耳のほかに猫鼻も作成
バンドソーを使って、木材の不要部分を切り落としているところ
ベルトサンダーを使って、表面を磨き、形を整えているところ
さらにサンドペーパーを使って磨いていく
ボール盤を使って棒を差し込むための穴をあける
色を塗って棒を差し込んだら完成!
最後に色を塗り、アクリル棒を差し込んだら完成です。ne22coさんからは、「Fusion 360を触るのは初めてでしたが、とても楽しかったです。細かな調整はありますが、作業自体はそんなに難しくありませんでした。甲斐さんの教え方が上手で、操作もわかりやすかったです」という感想をいただきました。
このように、2Dでイラストを描ける人なら、そのイラストを元にFusion 360で立体化することはそれほど難しくはありません。是非、立体作品作りにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
鼻の頭はピンク色に
完成したフォトプロップス。左の3つがCNC切削機で木材を削り出したもので、右の2つがレーザーカッターでアクリル板を切り抜いたもの
最後はne22coさんとMakers’ Baseのみなさん、編集スタッフと記念写真。この日のために、ne22coさんオリジナルのメッセージ猫型ポップ「SMILE」と「HAPPY」を作ってきていただきました!
デザイン協力 ne22coさん
猫などの動物をモチーフにしたイラストを制作するフリーランスのイラストレーター。神秘的な色使いが特徴。作品展「猫は恋の動物」「いろのせんたく」などで展示・販売するほか、WEBショップにてオーダー制作なども手がけている。
Official Site:https://www.ne22co.com/
技術協力 甲斐 貴大さん
1993年宮崎県生まれ。2013年東京藝術大学美術学部建築科入学。木材を主材とした作品を制作しながら、在学中の2016年、設計から制作、施工までを一貫して管理する工房としてstudio archē設立。アクセサリーから家具、什器、インスタレーションに至るまで、領域とスケールを横断した制作を行う。