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3Dプリンター世界No.1シェアを誇るストラタシス・ジャパンが語る「3Dプリンターの進化」

ストラタシスは、世界No.1シェアを誇る3Dプリンターメーカーです。世界初のFDM方式3Dプリンターを開発し、その後も市場を牽引してきました。そこで今回は、株式会社ストラタシス・ジャパン 営業開発部 / プリセールス&アプリケーション エンジニアの小山丈博氏に、3Dプリンターの進化についてお伺いしました。

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ストラタシス・ジャパンの小山丈博氏

FDM方式の3Dプリンターを世界で初めて開発

-:まず、ストラタシスの概要や事業内容について教えて下さい。

小山:ストラタシスは、樹脂を熱で溶かして積層をしていくFDM方式を世界で初めて開発した会社です。創業者が1988年にその特許を取得して、翌年に創業しました。主に産業向けビジネスでしたが、2013年に、プロシューマー向け3Dプリンター大手のメーカーボットを買収して、現在は、幅広いラインナップを持った3Dプリンターメーカーとして事業を展開しております。

-:特に注目してほしい事例はありますか?

小山:注目してほしいのは2つあって、1つはPolyJet方式の事例です。PolyJet方式では、複数の素材を同時にヘッドから吐出させることが可能なので、フルカラーはもちろん、クリアの中に不透明で色のついた部分を作ることができます。そうすると、精巧な人体模型や複雑な機構を持った機械の内部構造を可視化するモデルができます。もう1つはFDM方式です。主に航空宇宙向けに開発されたULTEM(ウルテム)という材料がありまして、こちらは耐熱性と強度が高く、飛行機の内部パーツなどにも採用されています。

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PolyJet方式で作られたサンプル

-:競合他社と比べたストラタシスの3Dプリンターの利点は何でしょうか?

小山:FDM方式では、様々な実製品と同じ熱可塑性材料を使えることですね。ポリカーボネートやナイロン系の材料、こうした材料をFDMで積層できるシステムは弊社だけです。

今後は3Dプリントしたものが最終製品となる

-: 3Dプリンターが普及したことによって、ものづくりがどう変わってきたか、また今後どう変わっていくとお考えでしょうか。

小山:これまでストラタシスでは、ラピットプロトタイピング向け製品を多く販売していて、ものづくりの上流工程であるデザイン部門での試作検証の分野で活用されてきました。今後は試作にとどまらず、冶具や最終製品など生産にまつわるソリューションとして3Dプリントされたものが使われていくようになると思います。

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プロフェッショナル向けFDM方式の最新型3Dプリンター「ストタラシスF370」と小山氏


エンジニアのコミュニティ支援やコラボレーション環境にも注力

-:開発者支援や情報コミュニティ支援なども行われていますが、具体的な活動についてお聞かせください。

小山:2013年に、Thingiverse(シンギバース)というデータの共有コミュニティを買収しました。3Dデータを扱えない人もThingiverseからデータをダウンロードすることができるので、どなたでも、ものを作れる環境作りを実現しつつあります。2014年には、GrabCADというCADエンジニアのコミュニティをもつソフトウェアベンダーを買収しました。GrabCADには、世界で300万人以上のエンジニアが登録していて、彼らが作った3Dデータをクラウド上で共有することができます。他にも、GrabCAD Workbenchというチーム向けコラボレーション環境も運営しています。ここに登録している全世界のエンジニアの発想力と開発力は注目すべきものであり、同サイトが運営するGrabCAD ChallengeにはGEをはじめとする大手メーカーも参画し画期的な製品開発において大きな実績をあげています。

次世代3Dプリンターのプロトモデルを開発

-:今後のストラタシスの3Dプリンター開発の方向性について教えて下さい。

小山: 2016年9月に、「Infinite-Build 3D Demonstrator」というコンセプトモデルを発表しました。FDM方式ですが、長さを無限に積層できます。通常のFDM方式では、上から積層していきますが、横から積み上げていく形です。スペースさえあれば、いくらでも積み上げていくことができ、より大きなものをより速く作ることができます。

もう1つ、「Robotic Composite 3D Demonstrator」というコンセプトモデルも発表しています。これは、ロボットアームの機構を搭載して、ヘッドが5軸で動き、下の積層プラットフォームも3軸で動く8軸の3Dプリンターです。8軸でコントロールすることで、サポート材が不要で、かつ最適な強度を保つ方向での積層ができるようになります。

今までの大量生産から多品種少量生産に向かっていくにあたり、従来金型で作っていたものの一部を、そういった3Dプリントに置き換えていくという動きが必ず出てきますので、その未来を見据えて今回のコンセプトモデルを開発しました。

また、先日発表したばかりのコンセプトモデルが、「Continuous Build 3D Demonstrator」です。小型3Dプリンターがモジュール式のユニットで構成されており、生産の需要に応じて拡張することができます。また、連続的かつ自動化された3Dプリンティングを実現しており、今までは一つ作るごとに、手で取りだして次の造形に入りますが、こちらは造形が完了すると自動的に剥がされて出てきて、次の造形も自動でスタートする。それを数カ所のスロットで、並列で作っていくことができます。今までは、ストラタシスの3Dプリンターでは、100~200個というのが現実的な数字でしたが、それが1000個という単位で生産できるようになるわけです。

-:Fusion 360についてはどのような感想をお持ちでしょうか?

小山:クラウドベースのFusion 360ならどこでもものづくりができます。Fusion 360と我々のGrabCADを組み合わせて使っていただくと、打ち合わせ中にFusion 360を使って設計変更をし、「では、これをすぐ出力しますね」と言って、自社の3Dプリンターにそのままデータを送って出力することもできます。Fusion 360とはいいコラボレーションができると思います。

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