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人のカラダにピッタリ寄り添う、医療×3Dプリンターの進化

エンドユーザーが製作者となる「メイカーズ・ムーブメント」の火付け役となった3Dプリンターは、既存の企業業務にも変革をもたらしました。従来であれば実現困難だったデザインが実現できるようになり、またオーダーメイドなプロダクトの迅速かつ安価な製造も可能となりました。この変革は「モノ作り」とはあまり関係のなさそうな世界でも実力を発揮しているのです。この記事では、3Dプリンターが起こした企業業務のイノベーションのなかから、医療分野の事例を紹介します。

金属部分を無くした義足。SHC Design「3Dプリンティング義足」

38_1.jpg引用元 https://www.shc-design.com/solution/

現在使われている義足の多くは、金属部分を含んでいるため、使用者が不便だと感じる時が多くあります。例えば、義足が空港の保安検査場の金属センサーに反応するせいで、義足使用者は係員による触手検査をしなければならず、それが精神的苦痛となって旅行を敬遠する人もいます。

SHC Designは、3Dプリンターで義足を製造することで、従来の義足が抱えていた問題を解消しました。同社の義足作りは、義足使用者の断端(切断部)を3Dスキャンして形状をデータ化した後、そのデータに合わせて義足を3Dモデリングします。こうして使用者にぴったりな義足が製造できるのです。また、3Dプリンターで出力するため、悩みの種であった金属部分もなくなりました。 さらにデザイン性を追求できる3Dプリンターの特性を生かして、ハイヒールや下駄を履ける義足も産み出しました。

患部にぴったりな形を実現。NEXT 21「カスタムメイド人工骨」

38_2.jpg引用元 http://www.next21.info/lab/ctbone/index02.html

現在、骨を移植する方法には様々な方法があります。しかし、共通した問題として骨移植手術の際に患部に合わせて骨の形状を加工するのに時間がかかるため、手術時間が長くなり、患者の負担が大きくなってしまうことがあります。

NEXT 21が開発したカスタムメイド人工骨は、この問題を3Dプリンティング技術で解決しました。同社では患部に合わせた人工骨を作るために、まず骨を移植する患部のX線CT画像にもとづいて、人工骨の形状を3Dモデリングします。そして、そのモデリングした人工骨を、生体に安全な骨材料を使って3Dプリンティングしていくのです。こうして、骨移植手術前に患部にぴったりな人工骨が用意できるようになりました。

拒絶反応が出ない人工心臓弁。IGUAZU「3Dプリンティング心臓弁」

38_3.jpg引用元 http://www.iguazu-3d.jp/case_study/medical/jyunkanki/

国立循環器病研究センターでは、拒絶反応の少ない人工心臓弁の研究を進めています。その研究アプローチとして、人工心臓弁をコラーゲンで覆う動物実験を試みています。この実験では、動物の体内に心臓弁の形状をしたひな形を埋め込むと、異物であるひな形がコラーゲンで覆われる生体反応を利用して作っていました。この方法でいちばん難しいのは、ひな形の成形です。心臓弁はかたちが複雑なので、成形に非常に時間がかかっていました。

大手3Dプリンターメーカーの3D SYSTEMSの代理店を務めているIGUAZUは、ひな形成形の手段として3Dプリンターを提案しました。そして、3Dプリンターを導入した結果、1年に1台しか成形できなかったひな形が、1ヶ月で5台も成形できるようになりました。

以上に見てきたように、実のところ、医療分野は3Dプリンティング技術の応用に積極的なのです。最近では、細胞組織を使って人体の一部を出力する「3Dバイオプリンター」の研究も進んでいます。再生医療の発展も加味すると、もしかしたら今世紀末には、老化した身体組織を定期的に交換することで不老を実現しているかも知れませんね。

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