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Fusion 360でDIY!おしゃれスツール作りで、素材選びから、3Dモデリング、木材の削り出し、組み立てまでを体験!

Fusion 360を使って、自分のアイディアを形にするこの企画。今回はFusion 360でスツール作りに挑戦します。制作にご協力いただくのは、ファッション業界で活躍するアッシュ・ペー・フランス株式会社のプロモーション事業部『PR01.』に所属する古瀬伸一郎さんです。

まずはデザイン案をもとに打ち合わせ

古瀬さんは、ファッションブランドのイベント企画やCM制作などのプロモーションをてがけるクリエイティブディレクターです。近年では、音楽バンド・サカナクションの山口一朗氏がプロデュースした「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のパリコレクションでも、中継ディレクターを務めました。過去にも、ファッションブランドの代表を務めるなど、クリエイティブな業界で活躍されています。

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アッシュ・ペー・フランス株式会社のプロモーション事業部『PR01.』に所属する古瀬伸一郎さん。

今回、古瀬さんがデザインしたスツールは、4本の脚がそれぞれ異なる形状をしています。

「ウィンザー様式、バロック様式、ルイ16世様式といった時代の異なる様式美を一つのスツールで表現できればと考えてデザインしました」

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3種の座面と4種の脚をデザイン。

各パーツの大きさは、座面が直径300mm×厚さ30mm、脚が長さ370mm×幅50mm×奥50mm、組み上げると全体で、高さ400mm×幅300mm×奥300mmほどになります。

今回の制作でポイントになるのは、

・ Fusion 360で、デザインをどこまで再現できるか
・ 工作機械で、デザインしたデータをどこまで削り出せるか
・ 座面に対して、脚に10度ほど角度をつけているが、上から力がかかったら耐えられるか

になります。

そのためには、ある程度の加工のしやすさと強度のある木材を選ばなければなりません。まずは、素材選びに向かいます。

素材選びで、お目当てのウォールナットをゲット!

木材は、ネットでも注文することはできますが、人気の素材は売り切れていることが多く、また、届いたものに節があって素材としてあまり適さないといったこともあるため、実際に手にとって素材を探すことにしました。

今回、素材選びに訪れたのは、JR新木場駅から徒歩5分の位置にある「WOOD SHOPもくもく」です。さまざまな種類の木材が揃っています。

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WOOD SHOPもくもく。

探しているのは、ウォールナットという種類の木材です。建築や家具だけでなく、楽器にも使用されるもので、木肌がなめらかで耐久性に優れ、加工しやすい特徴を持っています。仕上げもオイルを塗るだけでキレイな色味が出すことができ人気の素材です。

工作機械で削り出す際は、一回で正確に出力されるとは限りません。素材の強度や設置する位置などで変形してしまう場合があります。そのため、テスト出力をして調整することが基本となり、予備の木材を購入する必要があります。

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一重にウォールナットといっても素材ごとに木目が異なるため、お気に入りのものを探す。

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なるべく一つの角材から無駄なく木材を確保できるように長さや太さを測りながら選別する。

平板1枚と長めの角材2本を切り出し、座面用の幅40mm×奥40mm×厚さ30mmの平板を2枚、 脚用の幅60mm×奥60mm×高さ400mmの角材を8本ほど購入できました。

次に3Dデータの準備に移ります。

微細なデザインもFusion 360で再現

今回のFusion 360を使用してデザインを3Dにおこす作業をFAB MASTERの加藤未央氏にお手伝いいただきました。加藤氏は、2013年にオランダのアムステルダムのファブラボで、日本人ではじめてFAB ACADEMYを修了。現在は、ファブラボ鎌倉を拠点に国内外での次世代型人材育成促進事業、及びIoTクリエイター養成プログラムを研究開発している、ものづくりのプロです。

ファブラボ鎌倉にお邪魔して、モデリングデータを見つつ、デザインの細部の確認や修正作業を行います。

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蔵をリノベーションして工房としているファブラボ鎌倉。JR鎌倉駅から徒歩5分のところに位置する。

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今回ご協力いただくFAB MASTERの加藤未央氏。

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加藤氏のサポートのもと、デザインをFusion 360でおこしてもらいレンダリングしたもの。

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Fusion 360の画面を見ながら、実際のデザインデータと細部の仕上がりを確認。

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一緒に3Dデータを修正していく。

Fusion 360のレンダリング機能と直感的なモデリング機能で、コミュニケーションが円滑に行われ、効率よく確認作業を進めていきます。3Dでおこした際に上からの荷重に耐えられるか、という点を考えて、脚に角度をつけず直立にしましたが、改めてレンダリングの画面で確認して、脚の角度を5度つけることにしました。

また、座面を削り出す際に使用する工作機械の特徴として、上からドリルを落として削り出していくため側面の凹凸が再現しづらいことから、レンダリング画像の中央にある座面をもとに凹凸部をなくしたもので本番は削り出すことにしました。

TechShop Tokyoでいよいよ削り出し!

今回、削り出しでご協力いただくのが、東京メトロ南北線の六本木一丁目駅から徒歩1分のTechShop Tokyoです。広さは1,200平方メートルと国内最大級のワークスペースをもち、工作機械は金属加工、溶接、木工、3Dプリンターなどの樹脂加工だけでなく、電気工作やテキスタイルなどの多数の機材を完備。また、パソコンを数十台完備したセミナールームもあり、ワークショップなどのイベントを開くことができます。こちらの木工スペースで削り出しをおこないます。

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TechShop Tokyoのワークスペース。室内の高さは最大8メートル、ガラス張りの空間は開放感にあふれる。

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作業に使用した木工スペース。木工に使用されるあらゆる機械が常備されている。

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作業をサポートしていただいたTechShop Tokyoの藤島研伍氏(右端)と田中健氏(左端)。

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今回準備した木材。これらを削り出していく。

まずは、脚の削り出し作業です。使用する工作機械は、日本で数少ない、角材を旋盤型の刃で立体的に削り出すことができる木工用CNCターニングマシンです。工業機械として用いられるもので、TechShop Tokyoでは一般ユーザーが使用することができます。

Fusion 360でモデリングしSTL形式に書き換えたデータをマシンに読み込ませ、木材を設置して削り出していきます。

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日本に数台しかない木工用CNCターニングマシン。

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これまで制作できなかった複雑な形状を立体的に削り出すことができる。

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木材を設置するためにかんなで形状を整える。

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工作機械に木材をがっちり固定する。

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STL化したデータをUSBにコピーし、工作機械に読み込ませてスタート!

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スタート直後は緊急停止できるように、停止ボタンを持ちながら正常に削り出しが始まっているか確認する。

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旋盤が回転して削り出される様子を見る古瀬さん。

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角材の右端から削り出されていることが確認できたため完了するまで待つ。

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1時間~1時間30分で削り出しが完了する。

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取り出して仕上がりを確認。表面はかなり滑らかに削り出されていて、「こんなに綺麗に出てくるんですね」と驚く古瀬さん

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余分な部分を糸鋸(いとのこ)で切り落とす。

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切り落とした部分をヤスリで削って形状を整えて完成です。

次に座面の制作に移ります。座面の削り出しに使用する工作機械は、ShopBotです。幅1300mm×奥1200mm×厚さ30mmの大型の平板状の木材に上からドリルを落として精巧に削り出すことができる人気の機種です。Fusion 360のモデリングデータをもとに、2次元のパスデータに書き換えて、入力し、削り出していきます。

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大型の木材を削り出せるShopBot。

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まずは、木材の四隅に穴をあけ、その穴に上からネジを打ち込んで固定する。

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データを入力し、ドリルの刃を設置して削り出す。

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削り出される様子を見る古瀬さん。

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スピーディーに木材が削り出されていく。

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木材の設置やデータの入力などの事前準備に30分ほどかかったが、実際の削り出しは20~30分ほどで完了した。

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側面と角をヤスリで削って整えていく。

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出来上がったものがこちら。いずれも表面はかなり滑らかになっており、紙やすりで表面を整えなくてもいいほどの出来だ。

ここまでで約8時間の作業となります。当初はすべてのパーツを削り出す予定でしたが、入力などの事前準備から削り出し、仕上げまでをおこなうと想定以上の時間が必要となることがわかりました。そのため、後日、残りの脚を削り出し、組み立てることになりました。

ついにスツールが完成!

削り出しが完了したため、場所を移して組み立て作業に移ります。

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削り出した全てのパーツ。

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脚と差し込む穴を差し替えていき、最適な場所を探していく。

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ひっくり返し、座面の方から力をかけてしっかり足を入れ込んでいく。

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こちらが完成品。どの脚も根本までしっかりはまっており、その脚も均等に地面に接している。

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脚の微細なデザインも精巧に表現されている。

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完成したスツールに腰掛ける古瀬さん。

今回の制作を振り返り、「企画スタートから完成まで25日間とタイトなスケジュールだったので、自分が作ったデザインからどこまでできるかわからなかったですが、ここまで再現できてよかったです。工作機械の仕様等でいくつか諦めたディティールがありますが、もっと時間をかければこれらも実現できそうでした。今まで家具はインテリアの店で買う以外なかったですが、今後は自分でデザインして出力するという選択肢が加わるのかもしれませんね。」と古瀬さん。スツールの出来に大満足の様子でした。

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33_プロフ_古瀬.jpg体験者 古瀬 伸一郎 クリエティブディレクター

早稲田大学在学中より、東京コレクションブランド”TOKYO RIPPER”の立上げに携わり、ブランドディレクションを担当。CM制作会社TYOにてCM・PVの制作を経て、現在はアタッシェ・ドゥ・プレス”PR01.”に所属。ファッション関連の映像・イベント制作、パリコレクションや東京コレクションのライブ配信など、ファッションに特化したクリエイティブディレクションを手掛ける。

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