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光と音のスマートフットウェア「Orphe」。開発を支えたFusion 360の機能を開発者に聞いてみた

Fusion 360の活用事例を紹介するこちらのコーナー。第2回目は、株式会社no new folk studioです。2014年10月に設立されたスタートアップで、フルカラーLEDと9軸モーションセンサーを搭載したスマートフットウェア「Orphe」を開発、クラウドファンディングによる資金調達に成功し、一般販売を開始したことで話題を集めています。

誰も見たことがないような楽器を作るプロジェクトが元になって設立

no new folk studioは、首都大学東京の大学院でメディアアートを研究していたメンバーが主体となって設立されたスタートアップです。CEOの菊川裕也氏は、以前フォークソングを主体とした音楽活動を行っていました。その後、首都大学東京の大学院で、新しい音楽や表現のための新しい楽器を作る研究プロジェクトに取り組んでいました。そのプロジェクトが元になって、no new folk studioが設立されました。no new folk studioという会社名には、「自分たちにとってのフォークミュージックは、常にテクノロジーと融合された表現であるべきだ。そして常にテクノロジーは刷新されていくので、新しいフォークを考えるが、常にそれを刷新していく」という意味が込められているそうです。

表現にかかわるデジタルコンテンツと身体性をマッピングできる「Orphe」

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株式会社no new folk studioでCTOを務める金井隆晴氏

最初のプロダクトが、両足合計で約100個ものフルカラーLEDを内蔵したスマートフットウェア「Orphe」です。これまでにも、主に夜間の安全性を高めることを目的としたLED内蔵シューズは多数発売されていますが、OrpheはそうしたLED内蔵シューズとは一線を画す製品です。Orpheはもともと、入出力の機能を身体にまとわせるためには、どうしたらよいかという発想から誕生しました。目立たせたいから光らせるというよりは、情報の入出力という意味でLEDと9軸モーションセンサーを内蔵させています。

「Orpheは靴の形をしている楽器なんです。生活の延長線上で使うことができて、さまざまな表現が可能になります」(金井氏)。

Orpheには、BLE機能が搭載されていますので、スマートフォンやタブレットなどと通信を行うことができます。iOSやAndroidに対応したアプリケーションが提供されていて、スマートフォンからOrpheの発光パターンの変更が可能です。また、内蔵のモーションセンサーにより、動きを感知し、その動きにあわせて発光パターンを変えることや、動きに応じてスマートフォンやタブレットから音を出すこともできます。つまり、光や音といった表現にかかわるデジタルコンテンツと、身体性をマッピングできる製品なのです。

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スマートフットウェア「Orphe」。フルカラーLEDが多数内蔵されており、美しく光る。9軸モーションセンサーも搭載しており、身体の動きに合わせて発光させることもできる

そういった意味で、no new folk studioが、最初にOrpheのユーザーとしてフォーカスしているのは、ダンサーやミュージシャンといった表現者になります。

「最初にフォーカスしているのはダンサーですね。最初はフットワークという、足の動きの激しいダンサーの動きがすごく美しく見える靴、というところからスタートしています。また、新体操の人に履いてもらうと、身体がすごくやわらかいので面白い軌跡が取れたりします。いろんなダンスジャンルの身体表現を可視化したりとか記録したりとかすることができて、パフォーマンスを特徴づけるものになればいいと思います」(金井氏)。

また、Orpheは、開発プラットフォームが公開されているため、エンジニアにとっても魅力的なデバイスです。

「エンジニアのコミュティを強化していって、SDKや情報を積極的に公開していきたいと思っています」(金井氏)。

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バッテリーはベロの部分に内蔵されており、microUSB経由で充電できる

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ポップハウスユニット「水曜日のカンパネラ」ボーカルのコムアイさんが「Orphe」を履いてライブを行っている。これは、コムアイさんサイン入りのOrphe

Fusion 360の履歴機能と断面解析機能には助けられています

Orpheは、2015年3月にアメリカのクラウドファンディング「Indiegogo」で資金調達をスタート。30,000ドルの目標に対して募集期間の2ヶ月間で200%の達成率なる60,000ドルを記録。さらに、期間終了後にも数字を伸ばし、最終的に110,717ドルを集めることに成功しました。2016年6月から、伊勢丹オンラインストアや三越伊勢丹新宿本店での予約販売を開始するなど、国内に展開しつつあります。Orpheの開発にあたって、大きな助けとなったのがFusion 360です。金井氏は、Fusion 360について次のように語りました。

「最初はライノセラスを使ってデザインしていたのですが、厳密な寸法で設計するには向いていませんでした。例えば、バッテリーモジュールなどは、数値入力で厳密に設計する必要があります。それで、3D CADを探していたのですが、使ってみたいと思ったのがFusion 360です。この価格で、履歴機能が使えるのは非常に嬉しかったです。バッテリーモジュールは電池の大きさギリギリにしないと靴に入らないため、何回もやり直していたので、Fusion 360の履歴機能には助けられました。また、断面解析が1ステップでできるのも重宝しています。LEDの断面がぱっと見られたりするのがありがたいですね」

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「Orphe」のソールは、Fusion 360を使ってリデザインされている

今後、国内ではOrpheが展示されている金沢21世紀美術館のミュージアムショップ(石川)、伊勢丹新宿店・二子玉川蔦屋家電(東京)、そごう神戸店(兵庫)、GG-store(香川)で販売を開始。Web上では、各店舗のネットストアやDMM.make STOREで購入できます。将来的にフランスやマレーシアなど海外の店舗展開を視野にいれ、販路を拡大していく予定です。詳細はコチラをご覧ください。

no new folk studioの軸にあるのは「表現にかかわるマスプロダクトを作る」。将来は「誰でも、どこでも、普通のルートで買える」ような、もっと普段使いできるスマートフットウェアも考えていきたいとのことです。

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